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強制ニコイチ  作者: 咲乃いろは
第十二章 呼び合う音
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クラウスの行く先

結局、クラウスは何処から逃げてきたのか明確に示すようなことは言わなかった。ノアやローウェンも質問した割にそこを掘り下げることはしなかったので、緋彩はクラウスが話し疲れて眠ってしまった後でずっと首を捻っていた。


「クラウスは一体どこの国の子なんでしょうね?そんな過酷な環境の国なんて…」

「エリク国だろ」

「そう、エリク────…はい?」


ううむ、と百面相している緋彩の横で、ノアがあっけらかんと言ってのける。そちらを見れば、分かってなかったのかという呆れた視線が返ってきた。ローウェンを見ても苦笑しているだけということは、彼もきっと分かっていたのだろう。一体いつから気付いていたというのか。


「ここから一番近い、尚且つそんな特殊な環境の国なんて一つしかねぇだろ。脳みそ入ってねぇのかお前の頭は」

「え…、え…?エリク国って、私たちが今向かってる…?」

「アクア族が住んでいたと言われる国。永久凍土の地獄と言われたエリク国は、史実上はアクア族のような魔法力が高い人種しか住めないと聞いていたが…」


ノアの目が、すやすやと気持ちよさそうに眠るクラウスに向けられる。勿論その愛らしさに絆されているわけではない。ノアは最初からずっと、得体の知れないクラウスという存在に警戒しか抱いていないのだ。


「こいつが言うことが本当なら、今のエリク国には多少アクア族以外の人間も住んでいるということになる。何故生きるのに不便な土地を選んで住んでいるのかは不明だがな」

「クラウスが言う感じだと、結構前から人が住んでいるような言いぶりだったね。もしくはクラウス達がアクア族か…」


ノアの後を続けたローウェンに、緋彩は違うと思うときっぱりと首を振った。


「もしクラウスがアクア族なら、私何か感じてると思うんです。今思えばロイくんの時もそうでしたけど、私アクア族に近づくとなんかこう、もやもやっとするんです」


クラウスにはそれを感じなかったと、緋彩は自信ありげに胸を張る。『もやもや』の感覚はうまく伝えきれないが、法玉が鳴っている時のような、ルイエオ国に行った時のような感覚が、緋彩はアクア族が近くにいる時だと言った。

緋彩がアクア族であるという説が挙がっている今、もしかしたらアクア族同士は互いが分かる検知機能がついているのかもしれない。勿論緋彩にその確証など何もなかったけれど、ノアもローウェンも緋彩の意見を流したりなどしなかった。


「…だとしたら、この子どもが本当にアクア族程の魔法力を持ち、今エリク国に住んでいる人間も相当な魔法の使い手だということだ」

「何がきっかけでエリク国に住み始めたかは分からないけど、何にせよ僕らは行かなければならない場所だ。ヒイロちゃんを気に入ってしまっているクラウスがこのままついてくるとしたら、彼は逃げてきた場所に戻ることになるけど…」

「ちょっと待て。何でこいつを連れて行くことになってんだ。俺は反対だぞ」

「でもこんな子どもをこのまま放っておくわけにも…」


ノアは論外だと絶対にクラウスを受け入れようとはしない。だが、ローウェンの言う通り彼をこのまま一人にさせておくのは忍びないし、どこかへ送り届けようにも、逃亡者たちの集落はもう遠く離れている。どちらかと言えばエリク国の方が近いまであるのだ。

緋彩としてもクラウスを一人にしておけないというローウェンの意見に賛成ではあったけれど、決死の思いで逃げてきた場所に戻すこともしたくない。ノアとローウェンの話が平行線を辿る中、緋彩は彼らの真ん中でハイ、と手を挙げた。




「じゃ、じゃあクラウスに決めてもらいましょう。私たちと一緒に行くならエリク国に戻ることを伝え、それでもいいなら連れて行きましょう。ただその代わり、ここから先結界が必要な場面に出くわしたら力を貸してもらう約束で。それが嫌だったらここでお別れです。心配ですけどここまで逃げてこれた彼ならあの集落まで辿り着くでしょう」




近づいているとは言え、まだ遠く離れているこの場所でもエリク国の天候の影響が及んでいる。きっとこれからもっと過酷な状況になるかもしれないのだ。一応ローウェンは結界を張れるけれど、それがどこまで持つかは分からないし、クラウスのような魔法力がある人材がいてくれた方が心強いのは確かだ。

緋彩の提案にローウェンは賛同し、ノアは眉を顰めたけれど、背に腹は代えられぬのか最終的には勝手にしろと納得してくれた。











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