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強制ニコイチ  作者: 咲乃いろは
第九章 世界の繋がり
114/209

再会

泣き声が聞こえる。



誰かが、泣いている。



聞いたことのない声。



だけど多分知っている声。




何故泣いているのだろう。



何故そこにいるのだろう。



その泣き声は、誰に聞かせたいのだろう。






何を訴えているのか、分からない。































三時間ほどしたら、ノアと見張りを替わってもらう予定だった。だが緋彩も夜更かしにそんなに慣れている方でもなく、次第にウトウトとし始め、現実と夢との狭間を行ったり来たりしていた。カクン、と首が折れてははっと気が付いて目を擦り、火の中に頭を突っ込みそうになってはすんでのところで意識を取り戻し、延々とその繰り返しだった。虫の音も聞こえない、ただ風の吹く音だけが虚しく響く虚空の夜は、静かすぎて転寝してしまうものだと思うのだ。

もしかしてロイがまた魘されたり苦しんだりするかもしれないとも思ったが、そちらの方も静かだった。時々様子を見に天幕を覗いてみても、規則正しく寝息を立てているようだった。


完全に目が覚めるようなきっかけも掴み切れず、もう何度こうして右に左に前に後ろに首をグルングルンと振り回しているか分からない。ノアとの交代の時間まではあと三十分ほどあるが、それまで意識を保ってられるか自信がなかった。

どうにか目をかっ開いてみたり、頬を抓ったりして緋彩は後三十分を起きていようと奮闘する。







そんな最中だった。




地響きのような、いや、地面が割れたような耳を劈く轟音がする。







「っ!!」







さすがの緋彩もこれには眠気を吹っ飛ばした。

次いで、ノアとローウェンも目を覚まして身を起こす。


「何事!?」

「ヒイロ、火を消せ!」

「いえっさー!」


ノアとローウェンは半ば反射のように剣を手に取り、緋彩はノアの指示通りに急いで火を消す。乾燥した空気ではなかなか消えなくて焦ったが、消えたら消えたで心許なしさを感じて焦る。火が消えた途端、急激に気温が下がった気がしたが、すかさず三つ分の夜具が緋彩の頭の上から降ってくる。


「うわっ!」

「持ってろ!というか片付けておけ!」

「承知!」


轟音は規則正しく、だが確実に激しく大きくなってくる。近づいてきていると言ってもいい。

真っ直ぐ立っているのも難しくなり、緋彩はよろよろと夜具を抱えて天幕の方へ寄っていく。この音の正体が何なのかは分からないが、嫌な予感しかしない。


ロイを、守らねばならない。


責任感のような、母性のような、本能的な何かが緋彩をそう掻き立てた。





「ロイくん!」


天幕をガバリと開くと、ロイはこの轟音と激しい揺れの中でも眠っていた。相当深い眠り、もしくは覚醒出来ないほど体力が弱っているのだろう。

守ると言ったって、何をどうすればいいのかは分からない。とりあえず抱えてきた夜具をロイに巻き付け、何か衝撃が来てもクッションとなってくれるようにと施した。他に何かないかと周りを見渡したが、役に立ちそうなものはない。

音は大きくなるし、何をしていいか分からないし、緋彩はそわそわと立ったり座ったりを繰り返すが、ひとまず現状把握をしなければならないと、天幕から顔だけ出して外の様子を窺った。

日が昇る様子はまだない。辛うじて剣を構えるノアとローウェンが見えるくらいで、それより先に何があるかは分からない。



その時、あれだけ轟いていた音がピタリと止む。






「……?」






同時に地震も止まり、辺りは突然の静寂に呑まれる。見えないと分かっていても遠くに目を凝らしてみたり、いろんな方向に視線を彷徨わせたが、何もないように思われた。




地を揺らしていたのに、まさか()()が空からやってくるとは思わなかったから。




「…っ、ノア、あれは…!」




ローウェンがくすんだ夜空の遠く向こうを指さした。視力が良い者でないと、ただ紐状のゴミが漂っているようにしか見えなかっただろう。

だがそれはゴミなどではなく、自ら光を放っているようにも見える。長く、細く、ゆらゆらと空を揺蕩い、確実に存在し、こちらへ近づいてくる。闇に沈んでしまったこの世界を一新してしまうかのような空気の揺れ。その何かを中心に、空間に歪みが生じているかのような圧倒的な存在感。




()()が何なのか理解した瞬間、




ぞわりと鳥肌が立った。













「────…龍…?」













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