2町の酒場で情報収集
歩き続けた二人は、アムルの町に到着した。
「あー、ちっちゃい町……てかほとんど村だな」
「ムート、そういうことを口にしてはダメよ」
ムートは「へいへい」なんて言いながらヒナとともに歩きだし、一つの疑問にたどり着く。
「ん? いつまでついてくるんだ?」
「いつまでかしらね」
「いつだ?」
「わからないわ」
そこでムートは手を叩く。
「そうか、じゃあココまでだな」
ムートはヒナに、「またな」と手を振る。
「ムート、情報収集なら酒場よ」
「おいおい。町に着いたんだからここからは別行動だろ?」
「こっちね」
どんどん歩いていくヒナを、ムートは辟易しながらも追いかける。
「どこ行くんだよ」
「どこって、酒場に行くのよ? 情報収集するんでしょ?」
「って、オメーには関係ないだろ?」
ヒナはどんどん進んでいく。
「ムート、借りは返さないといけないわ」
「別にいいって。大した貸しじゃないし」
と、ヒナは止まる。
「命を助けてもらったのよ? 大した借りだわ」
ムートはぶっきらぼうに頭をかく。
「……わかったよ」
再びたんぽぽのような笑顔を見せたヒナは、「ありがとう」を言った後、ムートと共に酒場のツイストドアを開いたのだった。
キイキイ鳴っているツイストドアの向こうでは、街の連中が酒を飲んでいた。
「ここで情報収集ね」
なんだか調子が出ないムートだったが、とりあえず酒場のマスターがいるカウンター席へと移動していった。
背の高いイスに座ったムートは、マスターに「よう」と挨拶する。
「子どもに出す酒はねえぞ」
「別に酒を飲みに来たんじゃねえんだ。ただ、ちょっと聞きたいことがあって」
「黒い鎧を身につけた魔剣士を知らないかしら? オーラの出てる剣を持っているのだけれど」
マスターは「うーん」と唸る。
「さあ、知らねえな。ただ、何か注文したら情報が出てくるかもな」
と、マスターが言った矢先のことだった。
「ソイツらは、俺たちに用があるんだよな」
「そうそう」
ムートが振り向くと、唐突に殴られた。ヒナも思わず口を覆ってしまうほどの本気の拳だった。
「ッてぇ……何しやがる!」
イスから転げ落ちたムートがよく見ると、それはさっきの野盗の二人だった。
「さっきはよくもやってくれたな! このクソチビが!」
「落とし前、つけてもらうぜ」
野盗は再びエモノを抜き、体勢の整っていないムートに襲いかかる!
ダガーナイフと斧を振り下ろした先に、ムートは既にいなかった。
「どこいった! チビ!」
「ぶっ殺して……」
野盗は言葉を言い切る前に、ムートに蹴り飛ばされカウンターの中へ吹っ飛んでいく。
「一人相手にムキになってんじゃねえよ」
野盗は斧をムートに投げつける。ムートはそれを片手でキャッチした。
「まだ足んねえか?」
斧の刃の部分を握りつぶしたムートを見て、野盗は流石に顔を青くした。ケンカを売ってはいけない相手と、今更ながら理解したのだ。
「速くココから立ち去れよ。でないと……」
ムートは拳を開いた手に叩きつけ、音を立てる。
「今日はこの辺にしといてやる!」
と、逃げ出そうとしてもう一人の完全にノビている野盗のことを思い出し、カウンターの向こうから連れ出した。
「覚えてろよ! 俺たち、『ワイルドバンチ』を怒らせるとどうなるか、見せてやる!」
野盗どもは馬に乗って逃げていった。
「あ、あんたら……大変なことをしてくれたな」
「ムート……」
「コレは……出ていった方がいいパターンかな?」
と、言っている間にムートは町民たちにロープでぐるぐる巻きにされて捕まり、兵士の詰所に連れて行かれた。
「酒場のマスターか。どうした?」
「コレからワイルドバンチの奴らが攻めてくる。このチビどもを引き渡せばなんとかことなきを得るかもしれない」
そして、ムートとヒナはロープでぐるぐる巻きにされたまま、兵士たちに引き渡された。
はじめての人も違う人もこんにちは作者のぴいたんです
「バーサクスプーン〜みなしご幼女と二人旅〜」
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