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名無しのカセットテープ ~隠し通した愛のカタチ~

作者: あやねこ

小説家になろうラジオ大賞3の応募作品です。

「キーワード:カセットテープ」

『さぁハナ一緒に見たかった景色見に行くぞ』


そう空に囁いた。


遡ること3年前。    

僕は幼い頃から視力が無く、心を閉ざしていた。そんな時、出会ったハナこそが、僕の心の鍵を外してくれた存在だった。


色の無い世界にも、この子が居れば、何色にも変えられる、そう思えることが嬉しくて仕方がなかった。



「君の今の夢って何??」



ある日ハナに不意に聞かれた。

『色んな景色をこの目で見てみたい…。その…ハナといっs…』


ハナは、照れながら言っている言葉に被せるように

「その夢、きっと叶うよ!」と言った。


なぜか続きを言わせてはくれなかった。




数日後、

「私引越しすることになったんだ、だからもう会えない…けどずっとあなたのこと見守ってるから、強く生きて…ね?」

突然の告白に、静かに涙を流す僕の目に光は映らなかったが、代わりに抱きしめられたことによる温もりが伝わってきた。


┈┈┈┈┈┈┈┈


数週間後、

僕は突然病院に呼び出され、移植手術を受けることになった。

輪郭のはっきりした景色が見れた歓喜より、何よりも、「ハナに会いたい」その一心で必死に探した。


有力情報が得られぬまま季節が1つ変わった頃、1つの差出人不明のカセットテープが届いた。


「じゃ~ん!ハナだよ!驚いたかな?驚いてるよね…。これを聞いているということは手術上手くいったのかな? 突然のこんな形の再会許してね。君のことだからたくさん探してくれたよね…? ありがとう。」


なぜ手術のことを知っているのか、頭が真っ白になった。


「実は私、幼い頃から病気で永くないって言われてて、そんな時、似た感情を抱く君に出会ったの、君との時間だけが私が本当の私でいられる時間だった」


その声は微かに震え泣いていた。



どうして気づいてあげられなかったのか。

会える頻度が減っていたこと。

引越しの報告の日に抱きしめてくれた腕が少し細くなっていたこと。

夢は叶うと言ってくれた声が悲しげだったこと。




ハナの居ない世界なんて、昔の自分と同じだ…




そう思い命を絶とうと考えた時、カセットテープから間を開けてまた言葉が聞こえてきた。


「私ね、まだまだ見たかった景色がたくさんあるの。飛行機…乗れなかったから…。私の代わりに私の目であなたに綺麗な景色を見てきて欲しい。それなら一緒に見れたことになるでしょ?」


君が僕の夢を叶えるべく託してくれた思い、絶対に無駄になんてしてはダメだ。


パスポートを持ち、彼女の生きた証と共に空港へ向かった。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。小説家になろうは、作品を読んだり、ラジオを聴く専門でしたが、様々な作品に出会い、文章力の高さや表現力の豊かさに心動かされ、私もなろうラジオ大賞をきっかけに執筆してみたいという思いで、初挑戦させて頂きました。

拙い文章ですが暖かい目で、見ていただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後まで読んでから、読み返してみると、夢を聞いたあとの言動がとてもせつなかったです。
[良い点] ハナちゃんの強さと優しさが伝わってきました。 読み終わったあと、冒頭に戻ると、ハナちゃんと一緒に見てるであろう空が晴れやかに広がっていて、一緒に景色を見せてもらっているようでした。これから…
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