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前作、「一よさく華」幕開け編のその後。から次へつなぐ、「渡り」の部分の物語。

 空の色が薄まり、空気は随分冷えた。都もすっかり冬である。


 都の北、城を囲む天明山と日之出峰、その二山と、都の東を守る七輪山の尾根が交わるところには、目印として小さな祠がある。そのすぐ近く、日之出峰の方へ、わずか数十歩進んだところ。そこに、白い息を吐きながら一人、青年が登ってきた。


 決して短身ではないが、夜の闇では女と見間違うほどの華奢な身。ザンバラ髪のような無造作な短髪が、冷たい風に揺れている。


 柚月一華(ゆづきいちげ)。彼がそこを訪れたのは、約一月ぶり。先の戦で楠木と対峙した場所、そして、楠木がその生涯を終えた場所である。


 市中でも寒い。標高は高くはないとはいえ、山の上はさらに空気が冷えている。だが、柚月は少しも気にならない。

 柚月の意識は、あの日、ここで楠木と会った、あの時に戻っている。


 静かにかがみこみ、その地に、楠木に、話しかけるようにじっと地面を見つめると、そっと地に手を付けた。


「ありがとうございました」


 一礼して、下山した。


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