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ep8:ナターシャ領主代行、亜人国家ハイブリシアとの交易を決める

 ――で。

 ニャトさんに店舗経営のオファーを引き受けてもらった。

 しかし、交換条件として『亜人国家ハイブリシアの交易品も扱わせて欲しい』と依頼された。

 もちろんながら承諾した。

 クレフォリアちゃんはこう反応を示す。


「亜人さんの交易品……どういった物を取り扱うのですか?」

「食料品が主ですニャ。新鮮な海鮮魚とオーク米、エルフが食べる豆類の発酵食品などを主軸にして、出来れば甘味類なども取り扱いたいですニャ」

「甘味……」


 ごくりと息を呑むクレフォリア。

 緊張した声音で問いかけた。


「そ、それは美味しいのですか?」

「とっても美味しいですニャ~」

「く、詳しく聞かせて下さい……!」


 彼女はどうやら甘いものに目がないようで、『お団子、あんみつ、大福』など聞いたことの無いお菓子の話を聞き、想像を膨らませていた。

 ニャトさんは『生菓子ニャから試供品を用意できないのが残念だニャ』と言った。

 生菓子と聞いた彼女はなおさら喜んでいたけど。

 すると今度はママンが口を開く。


「ニャトさん。ちょっと良いかしら?」

「何ですかニャ?」

「亜人さんのご飯が食べられるのは嬉しいけれど、もっと亜人さんらしい商品が欲しいわ。出来れば贈呈品になるような」

「それならオーク米で造った純米酒がオススメですニャ。チーズと意外に合うニャ」

「あら、面白そうね。ワインが苦手な方に出してみようかしら」


 ママンも満足したようだ。

 当然のごとく天使ちゃんも出張ってくる。


「良いなぁ純米酒。天使ちゃん、試飲したいなぁ」


 チラッ、チラッとニャトを見ていた。

 ニャトさんは口元を袖で隠しながら答える。


「ニャハハハ、そんな都合よく『はいどうぞ』と出せるなんてこと、あると思うかニャ?」

「だよねぇ……お店が立つまで我慢……」

「ま、あるんだけどニャー」


 背中のカバンからゴトン、と小さな酒樽を取り出すニャトさん。

 木製の酒樽には白い紙が貼られていて『鬼鳴』や『純米』などと異世界語で書いてある。


「しゃおらぁぁ――――!!!!!!!!」


 天使ちゃんは思わず叫んだ。

 次の瞬間には樽を抱き寄せて問う。


「飲んでいいですか!!!!!?」

「良いニャけど――」

「あざっす!」


 その次の瞬間には樽を抱えてキッチンに去っていった。

 相変わらずお酒が絡むと手が早い。


「――ふニャぁ、ナターシャさん?」

「はい?」

「酒樽一つで四リットルニャから、ノーブランドワインと同価格の銀貨四枚、もしくは金貨一枚になりますニャー」

「へあ!?」


 尚、しっかり代金を請求されたのは言うまでもない。

 なぁ天使ちゃん、人の金で飲む酒はうまいか?


『やっぱ純米最高!!!!!!』


 うまいらしい。

 キレそう。


「天使ちゃんそれ有料だって」

『マジ!? なっちゃん後で良いものあげるからね!!!!!!』


 ならば許そう。


「はいどうぞ」

「まいどあり~♪ そう言えば気になったんだけどニャ」

「どうしたの?」


 金貨を受け取ったニャトは、根本的な疑問を投げかけた。


「店舗を建てる土地を事前に借りるのは可能ですかニャ?」

「お母さんどうする?」

「そうねぇ……」


 ママンは少しだけ考えたが許可を出した。

 ニャシシシ、と嬉しそうに笑ったニャトは良い判断だと褒めた。

 続けて『この地にはきっと、素晴らしい幸福が舞い降りるでしょうニャ』とも言う。


「あ、その言葉……」

「ん?」

「エリーナ様、何か知っていますの?」

「あっ、な、何でもない……」


 ナターシャやクレフォリアに問いかけられるも、エリオリーナは秘密にした。

 先程の言葉には何か意味があるらしい。

 ニャトも何かを企んでいるように笑う。


「ニャフフフ、お楽しみに。じゃあニャトは赤レンガ通りを見に行ってくるニャー」

「うん分かった」


 会議を抜けるようだ。

 席をたって玄関へと向かった。

 しかし、ふと振り向いてこう尋ねる。


「良かったら、どなたか案内役をして頂けないニャ?」

「あっ……!」


 待っていたかのように立ち上がるエリーナ。

 しかし皆の視線を集めて戸惑ったのか、そのまま座ってしまった。

 クレフォリアちゃんがフォローを入れる。


「なら、私たちが案内しますっ! ねっ?」

「えっ!? う、うん……!」

「助かりますニャ~」


 クレフォリアとエリオリーナは案内役としてニャトに続いた。

 三人が廊下に消える。


「斬鬼丸」

「御意」


 念のために斬鬼丸も護衛に付ける。

 玄関から出る音がした。


「よし、赤レンガ通りの開発会議は一旦休止かな?」

『そうですね』


 ここで、食器洗いを終えたリズールがようやく席に座った。


『具体的な話はじっくりと進めましょう』

「そうだね」

「そうねー」


 ママンも同意する。


「本当は麦の収穫を終えてから決めるつもりだったものね」

『しかしニャトさんは猫妖精(ケットシー)。平和と幸福を司る精霊。そして恩には恩で報いる種族ですので、あの場で優遇を決めたのは素晴らしい判断だったと思います』

「うふふ、リズールさんありがとう」


 リズールに笑顔を返すママン。

 ナターシャは次の話題について話す。


「じゃあさ、次はなんの話をする?」

「あ、そうだわ。お母さんはおまけで貰った南部の農耕地について話したいのよ」

『では、書斎に行きましょうか』

「はーい」


 三人は書斎へと移動した。

 リズールが物質創造で生み出したテーブルと丸椅子に座り、領地経営会議を再開する。

 そこで判明したのが――


「……え? 南部の農耕地がユリスタシア領の三倍の大きさ?」

「そうなのよー。議会はどうも、ユリスタシア領をエンシア首都と同レベルに成長させたいみたいでね……」


 どうやら、ユリスタシア家の領地経営は一筋縄ではいかないようだ。

次話は5月30日、午後11時~0時です。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こちらも読ませて頂きました~。  面白いですが、前作をまず読んだ方が良さそうですね。  こちらと平行して、前作を少しずつ読ませて頂きます<(_ _*)> [一言]  あ、前作のコメント…
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