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ep13:ナターシャ領主代行、領地に永遠の繁栄が約束されて微笑む

 書斎にて緊急会議というか。

 まずは猫霊気が溢れ出る気場とやらの名前付けが始まった。

 でもその前に。


「先に聞いときたいんだけどさ、猫霊気って何?」

「あ、それはお母さんも知りたいわ」

『アーミラル様、説明出来ますか?』

「出来るけど……ものすごくふわっとした説明しか出来ないよ? りずっちはどう?」

『私も同様の状況です。ただ『霊気』だけならば『タキオン粒子』や『霊子』などの用語で説明できます』

「あ、私もそれ。『猫』属性がなんで付与されてるのか全然わかんないんだよね」


 なるほど?

 どうやら『霊気』については説明が可能らしい。


「じゃあ、その『霊気』について説明してくれる?」

『分かりました。説明します』


 リズールが簡潔に教えてくれた。

 まず『霊気』とは、天使や神の持つ【神核】・精霊の持つ【精霊核】・地上の生命体に宿る【魂】の材料となる物質らしい。

 厳密に言えば『魔力の根源』にあたる『神気』や『霊子』、現世には存在しないとされる『タキオン粒子』と同等の物で、既に消滅した旧最高神――邪神レノスが仕組んだ『人類種以外の生命に異能の力を発現させる』ためのエネルギーなのだそうだ。


「なるほど。超簡単に言えば『古代の魔力』ってやつなんだね」

『端的に言えばそういう事になりますね』

「だいたいそれで合ってる」

「面白いお話ねー」


 私も母もしっかりと理解できた。

 しかし天使ちゃんは困った顔で言葉を漏らす。

 

「ただね? あふれ出てる『古代の魔力』の全てに『猫』の属性が付与されてるの。これが原因不明で天使ちゃんにもお手上げ」

『私にも解析不能でした』

「ふーん……?」


 天界と地上の知識人二名にすら分からないとは。

 個人的には『猫脈だから猫の属性を帯びてるだけじゃないの?』と思ってるけど、それは浅はかな考えなのかもしれない。

 とりあえず……目の前にバリバリ影響を受けてる天使ちゃんが居るし、くわしく尋ねてみよう。


「そう言えばさ、天使ちゃんは猫脈からパワーを貰えてるよね?」

「うん、すっごいモリモリしてる」

「なにか変な影響はある?」

「私は天使、いわゆる高次元の存在だからまったく無いよ。完全に分解できてる」

「そっかー」


 変な影響が出てなくて何よりだ。

 天使ちゃんは『ただし』と付け加えて次のように話す。


「もし影響を受けるとすれば……【精霊種】・【亜人種】に属する生命体と【人類種】の一部――『適合者』と呼ばれる人々、他には植物くらいかな?」

「具体的に何が起こるの?」

「【精霊種】・【亜人種】と『適合者』には異能――というか固有スキルが発現したりするし、植物は成長速度とか変質とか……いやもっと分かりやすく言うと、湧き出す『神気』の影響で穀物や野菜の成長速度と生産量が爆増します」

「なるほど」


 基本的に良いことづくめらしい。

 天使ちゃんは続けてこう言う。


「でも、固有スキルを得るにはユリスタシア領にしばらく滞在しないと行けないし、領地の小麦も収穫直前だから多少の豊作が約束されるくらいで、いきなり影響が出るわけじゃないよ?」

「あら、つまり――」


 ママンが私の言葉を代弁した。


「――これからは沢山の人や精霊さんや亜人さんがこの領地を訪れるようになって、畑は毎年大豊作になるってことかしら?」

『そういうことになりますね』

「うふふ、良いことづくめね。経営が楽になるからとっても嬉しいわ」


 母の言う通りだ。

 ユリスタシア領の小麦生産力が上がれば、税収も上がって我が家のお財布が豊かになる。

 結果的に、領地経営も土地開発も楽になること間違いなしだ。

 やらかし案件かと思っていただけに安堵感がハンパない。


『ではそろそろ、猫霊気が溢れる気場の名称を決めましょう。案を募りますので、一人ずつ発言を』

「「「はーい」」」


 リズールの言葉に従って、各々のアイデアを発言した。



『――ではくじ引き結果により、ガーベリア様の【ニャンズホール】に決定します』

「「負けたー」」

「うふふっ! やったわ~!」


 ユリスタシア領に出来た猫の龍穴は『ニャンズホール』という名前に決まった。

 可愛いらしい名前だ。


『ガーベリア様、命名の決め手は?』

「猫さんの鳴き声と、猫さんが集まる踊り場(ダンスホール)と、ホールのトリプルミーニングが決め手ね! 上手く出来たと思ってたから、とっても嬉しいわっ!」


 しかもなかなか上手い。

 これはくじ引きで負けるわけだ。

 ま、切り替えていこう。


「よーし、早速だけどニャンズホールはどう利用するの?」

『用途は多岐に渡りますが、真っ先に思い浮かぶのが魔力資源としての活用です』

「やっぱりそうだよね」


 それは私も思った。

 リズールは話を続ける。


『魔力の集約を行うことで電気・ガス・水道・魔力波通信などのインフラ系列に利用し、『神気』を分離することでの天界物質・純魔力物質の生成、『霊子』を演算子に利用した巨大演算機の建設など……多分ですが、もう不可能なことはありません。思いつくことは何でも魔力で解決出来ます』


 わぁ凄い。

 チート領地になっちゃったじゃん。

 すると天使ちゃんが返答した。


「あ、りずっち。猫霊気をダンジョンに流し込めば『神気』を分離しなくても天界物質と純魔力物質を生成出来るよ。それを見越してなっちゃんに天界製のダンジョンコア渡したし」

『なっ、本当ですか!? どうやって予測されたのですか!?』


 ガタッ、と立ち上がるリズール。

 相当衝撃を受けたようで、表情がこわばっている。

 天使ちゃんはこう返した。


「ふっ……こう見えて一応、階位一位の熾天使やってますんで。事前の予測くらい余裕ですよ」

「その割にはお手々がぷるぷる震えてるね天使ちゃん。緊張してる?」

「もーそれは言わないお約束ー!」


 指摘されて頬を膨らませる天使ちゃん。

 リズールも相手が法螺を吹いたと理解したのか、スッと席に座り直した。

 落ち着いたようだ。

 私は話を戻す。


「ちなみにさ、噴き出してる猫霊気の総量はどれくらい?」

『神龍クラスの噴出量ですので、やろうと思えば神を複数体召喚出来ます』

「しかも高濃度の『神気』が混じってるから、神霊になった最高神――我らが神様も召喚できるよ」

「わぉ」


 パないねニャンズホール。


「天使ちゃんもね、天界のみんなを下界に呼ぶ予定だよ!」

「そ、そんなに気軽に呼んでいいの?」

「うん。だってここ拠点にして天界との通信インフラ整えるつもりだし」

「わぁ……」


 ものすごいお仕事的な事情だった……


「あら。ということは、ユリスタシア領は天界に一番近い場所になっちゃうってことかしら!?」

「地上に楽園が出来たようなものだからそうだね!!!」

『エルフォンス教皇国が新たな聖地として認定する日も遅くないですね』

「ま、天界としては信徒達のために、エルフォンス教皇国を最高の聖地にするべく行動を起こすけどね!!!」

「あらあら、残念だわ。でも二番目も良いかもしれないわね」


 みんなそれぞれ期待に胸を膨らませているようだ。

 楽しそうに、笑顔で議論を進めていく。

 今朝方の息が詰まるような会議が嘘のように感じる。


「ふふっ」


 私もこれからのこと――ユリスタシア領がどんどん発展していく様子を思い浮かべて。

 やさしい笑顔を浮かべながら議論に参加した。

資源チート領地完成の巻。

もう資源や人材、食料自給率や懐事情に悩まなくて良いのは楽ですね。

ナターシャの理想が本当に実現する日がいつか来そう。


次話は6月4日、午後11時~0時です。

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