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38 曖昧さと明確さと

 みくると二人で夜の道を歩く。


 花火をし終えてみんなが帰った後もみくるは片づけを手伝ってくれて、気づけば時刻は十時を回ってしまっていた。

 さすがにこの時間にみくる一人を歩かせるのは危ない。

 まぁ、危険なことに巻き込まれてみくるを守れる保証はないけれど。


 いや、そこは捨て身で何とか……といったところか。


「えいちゃんどうしたの? 顔にしわなんて寄せちゃって」


「いや、俺って男のくせに弱いなって」


「そう? 私はえいちゃん強いと思うけどなぁ」


「たぶん中学生のボクサー志望とかにボコされるんだろうなぁ……」


「ずいぶんネガティブなこと考えてるね……」


 そろそろ筋トレでも始めて、せめてみくる一人は守れるくらいの強さを手に入れるべきだな。

 大げさかもしれないが、念には念を、だ。


「もう夏休みの一日、終わっちゃったね」


「まだ一日しか終わってないという考え方もできるぞ?」


「……なんでそういうところだけポジティブなの?」


「命がかかってないからな」


「中学生のボクサーと闘うのは命がけなんだ……」


 呆れたようにみくるは笑って、また軽い足取りで歩いていく。

 

 街灯の心もとない光に、太陽の光を反射して鋭く光る月。

 似ているようで似ていない二つは、それでも同じ意図で輝いていて。

 今日も俺たちを照らしてくれていた。


「今年の夏休みは、何がしたいんだ?」


「えっ?」


 みくるが聞き返す。

 だから俺は少し恥ずかしくなって、頭を掻きながらもう一度言った。


「いやさ、今年の夏は一生で忘れられないものにしたいから、みくるの願いはできる限りかなえてやりたいなと」


「そ、それは確かに私にとっては一生忘れられない思い出になると思うけど、えいちゃんにとっては……」


「一生の思い出になるよ」


 力強く言い切る。

 ただその理由は話せない。


 

 ――だって、みくると一緒なら何しても一生忘れられない思い出になるなんて、そんなこと言えないだろ?



 だから俺は、力強く言い放った。


「だから、みくるのやりたいこと、教えてくれ」


「……」


 みくるは返答せず、夜の空を眺めた。

 

 一面真っ黒の空。

 その中で輝く月はやはり目を引いて、たぶんきっとみくるも月を見ているんだと思う。


「そうだなぁ~……」


 幼い子供が欲しいものを考えるみたいに、楽しそうな表情で考え始めるみくる。

 

「映画とか、最近流行りのカフェとか、日帰りでプチ旅行とか……あと海にも行ってみたいなぁ」


「なるほどな」



「――でも、えいちゃんとずっと一緒にいたいな」



 今度は俺のことを、まるで月を見るかのように見てきた。 

 こんなの誰でも、最後のが本当で最大の願いなのだと分かってしまう。

 

 俺はみくるから視線をそらした。

 こんなの直視していられるか……。


「それくらいだったら、俺がいくらでも叶えてやるよ」


「ほんとに? やった」


 んふふ、と上機嫌に笑って、また空を見上げる。


 今日はいつもより心なしか早く、みくるの家に着いた気がした。



この物語、終わり方というか、フィナーレをどんな感じにするかは決めているのですが、正直それまで何話ぐらい書くかは全くの未定なんですよね……マジでいくらでも続けられるわ(笑)

ちなみに僕、みくる大好きです(唐突だな

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです(≧∇≦)b次回も楽しみに待ってます( =^ω^)
[一言] この二人の日常を書いていれば、ずっと続くね… 物語は終わらないw
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