異世界のチンピラ、裏社会
「待ちな、綺麗な顔のお兄さんよ♪」
やたらと見た目だけゴツい男達とは違う。ねばついた視線を感じながら、手にナイフを持ったのが二人、武器に鉄の棒を持った者が二人、後ろに見張りと鉄の馬車があった。視線の持ち主も馬車の中のようだ。
全部で6人だ。一人を襲うに過剰だが………、
片瀬さんの話を聞く限り、そうとも言えないか。
「なんで~すか~?」
暴力に慣れた空気を醸し出してる。が、武には疎いようだ。ただのこけおどしだろう。ただ一人、馬車の中にいる者は、冷たい殺気を内包していた。何人か殺したことがあるようだ。
「お兄さんよ。俺たち見てたんだぜ、金持ってんだろ、だせよ」
にやにやした男の歯は黄ばみ、よく見れば目は濁っていた。薬でもやってたのだろうか?、やや興奮気味に息が荒く、自分の行為に高揚して充血していた。
他の四人も同じであろうは、想像しやすい。
「金?、てなんで~すか?」
キョトンとした顔をした僕に。ピキリ青筋を立てた。
「金は金だ?」
「????、わた~しは鍛冶屋ではないので、金属の持ちあわ~せあ~りませんが」
首を傾げた僕に。話が噛み合ってないことに思い至る。
「………テメーなめてんのか、あぁ」
「テメーなめ?、どんな意味があ~りますか?」
「………おっおい、思ったんだが、こいつマジもんの外国人だろ、日本語あんまり分からないんじゃ………」
「「「あ~」」」
ガタイのいい男も、やや困惑めいた顔をしながら、ナイフ持った男の言葉に納得する。
「それに金って、あの外国人金物って訳したんじゃね」
「「「あぁ………」」」
ようやく噛み合ってない理由に思い至る。
「おい………、さっさと凹して身ぐるみ剥げや」
ドスの効いた声音で、馬車に乗っていた、殺気を持った男が降りてきた。
「………金、あぁなるほどね貨幣を寄越せ、追い剥ぎでしたか」
一人ようやり理解出来たレンだ。
「よお~、大人しく身ぐるみ置いてけ、命だけは助けてやる」
懐に手をやり、何やら金属の塊のような武器をちらつかせる。
「お断り致します」
「……………テメー、なめてんのか、あぁ、これを見ても同じこと言えんのか」
気が短いようだ。短絡的で場当たり的な男だ、
『何やら、金属を加工した精緻な武器だ』
恐らく、弓を小型にして殺傷能力を増した加工がされてるものだろうか、ただあの小さな筒を見るかぎり、直線にしか飛ばない武器のようだ。
「お断り致しま~す」
「テメー………、殺す。舐めたこと抜かしやがったな!?、おい袋、用意しとけや」
「わっ、分かりました」
一人が、馬車に走る。
殺気が、左胸に向かい、何かを引こうと指が動く。
『なるほどカラクリ武器の一種ですか』
恐らく、小さな矢があの中に入ってるのだろう、
レンは素早く、創造のカードに触れ。
悪神・月を司る主女神【カーレブ】
ギフト【影と幻影魔法・極】
を使った。その力は、レンの影と幻影を使った魔法である。
まるで本人にしか見えない影の幻影を残して、本人は悠然と移動する。
序でに気配を消しいた俺は、誰に気付かれることなく。包囲を抜けて、男に迫り、その武器を奪う、
悪神・詐称と強奪の神【ゴーデヒ】から奪った【収納】ギフトだったが、7つ目のスキルになった物を使って、素早く仕舞う、
【トカレフ】
『中国製、粗悪品』
悪神・鑑定と偽証の神【バーナフ】の【鑑定】のギフトで見てみた。
かなりいい加減に作られた武器である事が解った。
「粗悪品のトカレフで~す」
「なっ、なっ」
目を白黒させる男達を他所に。
レンは何処からともなく作業台を出した。
「なっ、なんだ、何も無いところから机が現れた………」
訳が分からないと困惑する男達。
その間にも。
悪神・鍛冶や鉄の加工を司る【フンニバル】の【金属加工・加治】ギフトを使って、
トカレフを分解してしまう。
「おっ、俺のトカレフが………」
「………そこの貴方、使ったらレストアしてましたか?」
「………なっ、何を訳の分からねえ」
「ちょっ見なさい」
「お、おい、何しやがる離せ。ばっ、なんてバカ力してやがる」
男達は乾いた目をして、二度見していた。自分達のグループのリーダーは、暴力の象徴として名が通っていた。
それが優男の外国人に、片手で引きずられてくではないか。
「………なあ、もしかして俺ら、ヤバイ人に手を出したかな………」
「「「ああ~」」」
チンピラ達は、力なく乾いた笑みを浮かべた。
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レンに引きずられた男は戸惑っていた、男の力はかなりの物だと自負していた。この優男の外国人を見付けたのも不用意に。金貨とかを公共の場で出してたからだ。
外国人のボンボンだと踏んで、追い剥ぎすることに決めた。
しかし優男は、自分達の切り札。トカレフをあっさり奪っただけじゃなく。慣れた手つきでばらしていた。
(こいつはヤベエな………、マフィアのボンボンだったか………)
背に冷や汗流しながら、何処からともなく現れた机の前に連れてかれた。
「このトカレフ安物でしたね。これを見なさ~い」
にこやかに優男が言うから。渋々優男の指した所を見た。
「亀裂…………」
「その通り、ほら他の部品も見てくださ~い、かなり劣化してますね~」
優男に言われてよくよく見れば、部品の幾つかが錆びていた。
「あのまま撃ってたら。貴方、指が吹き飛んでたか、爆発して、最悪失明してましたね」
「…………マジカ」
思わず天を仰いだ。俺は体が頑丈なのが取り柄だ。もしも失明なんてしたなら………、
もっと冷たい冷や汗が流れた。
「これは廃棄しなさ~い。死にたくないのなら」
「あっ、ああ……、そのなんだ。ありがとう?」
変な感じだ。追い剥ぎしようとした相手に命が救われるなんて。
なんだかバカらしくなった。
「どういたしまして~、御礼では無いですが情報が欲しいのですが」
見たこともないフードの奥に見える目は、強かで、強者の者だった。
(こいつ、そうとうな修羅場潜り抜けてやがる。滅茶苦茶ヤバイ奴だったか…………)
深々と。ため息を吐いていた。
この小説はフィクションです。