プロローグ
不定期、転位物です
閃光が闇を斬り裂いた。
断末魔のくぐもった息が、微かに漏れた。
………また一人、
命を失った白人の男は、骸を晒し冷たくなっていった。
━━━港の埠頭。夜の闇。
いかにもな素行が悪そうな、白人の男たちが、眼下に集まるのが見えていた。
「あれか………、ふう~、公安が来る前に。残りを始末するか」
まだ若い男の声は、海風に消えていた。
後に残る。血香をも、洗い流していった。
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《異世界・アースガルド》
月を見上げたレンは、膨大に高まった魔力の高まりを感じていた。
《双子の月》
中立の姉女神【ラクア】
中立の妹女神【ダレア】
この世界を司る77柱の中でも公平と均衡の月を見上げる。間もなく時が来る。
一人、ただその時を静かに待っていた。
この世界はほんの100年前まで、
神々の遊戯世界であった。
いや遊戯等と甘い言葉では済まない。悪意、殺意、憎悪に満ちた。常に神々の欲望に人間やそれ以外の知的人種を蝕み、ただ破滅させること、それだけを神々は望んだ。
この世界が生まれて一億年、
主神と呼ばれていた二柱の神と五柱の上級神達によって。他の世界から隔離された箱庭世界であった。
《上級神》
悪神・火之神ボールケイダス
悪神・水之女神アクアゼーレス
悪神・木精霊神アーチレンボス
悪神・金属神クラローフィ
悪神・大地の呪い神ターナフ
《主神》
悪神・太陽神ガーナタシア
悪神・月を司る女神カーレブ
青年レンは人間でありながら、神々に比肩する程の力を持って産まれた。
破壊神、悪神、強欲神、邪精霊達をも、神々を唯一封じる力を持っていた。創造神が造りしカードにを手に。
たった一人で封じた。
あれから100年の歳月が流れていた。
今や、人間の神と。呼ばれ。
たった三柱の善神の使徒であると。弱っていた中立神含む、五柱の神々にて、強引に認められたレンは、神格を与えられた。
その為、人でありながら、不老不死となり青年のままその姿が固定されてしまう。
やがて従属神、亜神として認められてしまった。
そもそもこの世界は、77柱の神々によって運営されていた。
それを封じたらどうなるか……。
レンは人間でありながら、創造のカードの契約者にして、神の一柱に数えられてしまった人間である。
「………僕にも休日は必要だと思うんだ。………神々の堕落には参ったね」
しみじみ呟くレンの背中は。哀愁漂う中年管理職のような、俗にサラリーマンの月末のような感じだった。
「僕が居なくなった方が、この世界の神々も、少しは真面目にやるかもしれない………」
あくまでも希望的観測である。内心無理だろうな………、そう思いながら、
やってくれるといいな~
位には、半分諦めていた。
「1000年位遊ばなきゃやってられないよ」
レンは決意を決めた瞬間に、膨大な魔力が時空魔法を発動させていた。
この日、従属神でありながら、主神よりも力を持っていた亜神レンは、
【アースガルド】の世界から消え失せていた。
善の主神ゼハーレス
善の女神マルカーリア
善の大地の女神ファナン
「「「………レンが消えたぞ、やばくね」」」
穏やかな世界、命溢れる優しい世界となった。その世界から、
世界の管理者たる。
人間の従属神レンは消え失せてさまった。
これにより善神の三柱と中立神の女神姉妹は、多忙を極めたのは言うまでもない。
善の主神ゼハーレス
「レ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ン、かんば━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━っく」
叫んだとか、叫ばれたとか、レンが知る事はない。
従属神になってから初めて、普通の人間として、ワクワクした顔をして、楽しそうに笑っていたのだから。