契約の時まで遡ろう。この時まで、俺は最強最悪の悪魔として振る舞い、悪魔らしく無垢な娘を騙し、その魂を奪えると思っていた。そう、思っていたんだ。がしかし、蓋を開ければ如何だ?
悪魔の力を欲する奴だなんて大概が『金が欲しい』・『誰かを亡き者にしたい』・『永遠の命を』・『チートが欲しい』・『沢山の異性から好意を抱かれたい』という願いを求める。
良いカモだ。悪魔にとってはな。
そういうヤツは大概が思慮が浅くて、単純な罠にアッサリ引っ掛かる。
自分の望むものを得られずにそのまま俺らに騙されて魂を盗られる。
それを考えるとこの時の…この娘は異常も良い所だった。
自分の魂を対価に他の奴等の命を、たった数十年の命を守る為に差し出した。
異常の極みだ。
時間を遡る。
この娘の故郷で略奪事件が起きた。故郷は火の海に包まれて滅亡しようとしていた。
それに抗おうとこの娘が俺を呼んだ。
自身の魂を対価に村を救おうとしたのだ。
俺はそれを騙して、『魂の対価に娘を手伝う契約書』と偽った『魂だけ貰う契約書』にサインさせた。
が、血判を押させた所、その時の血が契約書の一部を消し、『俺が聖女の願いを叶えた後、一生を終えた所で魂を貰う契約』が成立した。
俺は聖女の世界平和の手伝いをさせられることになった。
悪魔の言語で書かれた契約書を見せて、適当に嘘を言って、でっち上げの契約内容を飲ませてサインや血判を押させる。
そうすると相手は俺らに都合の良い契約を騙されて飲まされて魂を奪われる。
こんなまどろっこしい方法を何故使うかというと、俺達悪魔は契約を重んじる。
重んじる。という言葉では軽いな。
『自己の証明として守らざるを得ない。』が正しい。
何故なら俺達は契約を守るから悪魔足り得る。
契約を破る奴は存在そのものが消える。
故に、そんな方法をとる。
それがいけなかった!




