飛び立つ翼は誰のもの?
背中に衝撃が走った。
どうやら家の中に倒れこんだようだ。
「レイ、大丈夫か?」
「うん、なんとか・・・」
レイと共に起き上がり、いまだに砂ぼこりが舞う外へと向かった。
「女の子・・・?」
キラキラと輝く金髪、レースがあしらわれた胸元、白く輝くブローチ、鮮やかな赤いワンピース。
あまり見ない外の人間に俺たちは目を奪われた。
「とりあえず、部屋に運ぶぞ。」
「うん、そうだね」
俺は少女を抱えるとベットに寝かした。
いつしか夕方になった。窓には綺麗な夕日が見えている。
「この子、大丈夫かな?」
「・・・・・」
目を覚ます気配はなかった。
彼女の膨らんだ胸元を見て目をそらす。そういったものは苦手だった。
ドンドンドン
「あ、はーい」
突然の来客にレイが扉を開ける。わざわざ町からやってきたのだろうか。
「治安維持部隊の者だが、本日この地域に落下物があったという報告を受けている。何か変わったことはないか?」
「それなら女の子が・・・・」
押しかけてきた男二人が無遠慮に部屋の中に入ってくる。
俺は顔を顰めた。
「ほぅ・・・・。これは・・・」
ハッ
その瞬間、少女が目を見開く。
「人間・・・・!?」
ファァァァ
少女は凄い勢いでベットの上に立ち上がり、透明できらめく羽を出すと窓の外から飛び立った。
一瞬の出来事だった。
「えっ、え???」
「おおおおお、絶滅した妖精族だぞ!すぐに捕らえろ!」
「はい!」
「レイ!」
「あ、うん!」
治安維持部隊の男たちと共に外に出る。
少女は無我夢中で飛んでいた。
『どうして人間が・・・・。お父様、お母様・・・・』
あふれた涙をぬぐうと眼下に川が見えた。
川沿いを低く飛ぶ。
「あら?こんばんは、カワイイ妖精さん。」
川のほとりの小さな泉から声を掛けられた。
つい立ち止まると、羽が粒子となって消える。
視界が揺らいだ。