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弐剣の創造者  作者: 菊池伊久真
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第五話 少女との再会



 「ええっと、君が理事長先生の言っていたオルリア学園創立以来、初の推薦入学者のレオ・アスターク君であってる?」


 金髪、碧眼で背はかなり高め、きめ細かく漂白とした皮膚は古来よりこの地に住む貴族字階級の種族である白人種の純血であることを証明している。


 つまり、この青年はこの国の上流階級に住む人間。そして、俺が最も忌み嫌う貴族という人種だ。


 「はい。学園に来たら一度、生徒会を尋ねてみてくとサファリアに言われていたので」


 「そうそう。僕もつい最近、理事長先生から、自分の弟子が来るから相手してやってくれと言われていてね。というか、君は理事長のことファーストネームで呼ぶんだね。もし、僕がそう呼んだら一瞬で首が落ちるよ」


 相手をしてやってくれか。はあぁ、まったくあのお人よしの師匠は何を企んでいるのやら。さっぱりわからん。


 「いや、ただ付き合いが長いだけですよ」


 「そうかな。僕にはもっと深い何かでつながっているように思うのだが」


 俺は瞬間的に表情を硬くする。これは意識的にやっているのではなく完全な無意識によるものだ。


誰もが自分に対する詮索行為を少しは不快に感じることがあるだろうがレオのそれはかなり逸脱していた。そのことにオネストも気が付いたようだ。


 「ごめん、ごめん。そんな顔しなくても、大丈夫だよ。別に君の事を詮索したいわけじゃないんだよ。ただ、君に興味があるだけさ」


 悠然と本心かどうか分からない口調で言った。


 「わかりました。ところで、その相手をしてくれというのは一体どういった意味なんでしょうか?」


 口ではそう言ってはいるが全ての警戒を解いたわけではない。人間の本性というのは簡単に見ることは出来ない。


 そのため、自分にとってどのような立場の人であろうとの本心を知ることは基本的には不可能なのだ。


 だから、俺はどんなに人に対しても表にはださないにせよ警戒を怠るというような愚行は犯さない。


 それともう一つ最初に疑問に思ったことを聞いてみる。


 「ああ、それは簡単な話さ、僕と模擬戦をやるっていうただそれだけ。正しい評価問いのは実際に一戦交えてみないとわからないからね」


 なるほど。つまり、全力の出せない俺に対する、現生徒会副会長との模擬戦というなんとも横暴すぎるまでの、むちゃぶりというわけか。


 しかし、まあ、やれるだけのことはやってみるか。俺の嫌いな行いの一つに、やってもいないのに最初から諦める行為がある。


 なので、とりあえずやってみる。そして、できなかった点や、改善すべき所を模索することによって、自分の力の少しでも糧になればいい。


 「そうですか。じゃあ、早めにやりましょう」


 俺の返事に対してオネストは、一瞬だけ眉間にしわを寄せる。


 「そ、そうこなくちゃね。じゃあ、僕は、一時間後に、第一模擬戦場で待っているよ。もし場所が分からないようなら、メシルに教えてもらって」


 そう言い残して、オネストは腰かけていたソファーからたちあがり、用事を思い出したと言って、生徒会室から出ていってしまった。


 冷たく冷えたコーヒーを飲み干しレオも生徒会室を後にしたのだった。



 一時間という時間は、悪魔みたいなもので、永遠みたいに感じる時もあれば、一瞬のように感じられる時もある。


 レオは、摸擬戦開始までの一時間をどう過ごそうかと考えていたが、これといって思い浮かばなかったので、とりあえず第一模擬戦場に早めに行って、オネストが来るまで本でも読んでおこうと思った。


 「そういえば、第一模擬戦場ってどこだっけ」


 この無駄に広い学園の中だと、どこに何があるのか分からなくなる。仕方がないのでまた、近くにいた女子生徒に聞いてみることにした。


「あの、第一模擬戦場までってどうやって行けばいいんですか?」


 すると、その女子生徒がこちらに振り向いた。


「「あ」」


両方ともほぼ同時に、間抜け声が出ていた。なぜなら、昨日出会った少女だったからだ。


「あなたって、もしかして、昨日私を助けてくれたレオ君じゃない?」


「ええっと、まあ、一応そうだけど…   ごめん!怪我してた君をほったらかしにして帰えってしまって」


 俺は、誠心誠意込めて頭を下げた。どんな罵声を浴びせられようとも覚悟をできていた。しかし、現実は予測と大きくかけ離れたものだった。


 「ああ、そんなの、全然気にしなくていいよ。ピンチを助けてもらっただけで、ものすごく助かったんだから」


 内心、ほっとした。よかった、どうやら嫌われていないようようだ。俺の中で人に嫌われるのはものすごく嫌な事なので、何がんでも阻止しなければならない。


 「あ、そうだ。助けてもらったお礼に何かしてあげたいんだけど何かして欲しいことある?」


 アヤカは自分で言った約束を必ず守るタイプの人間だった。どんな些細なことでも自分が言った言葉には責任をもつしっかり者なのだろう。


 して欲しいこと、か。


 今、一番して欲しい事と言えば一つしかない。


 「じゃあ、第一模擬戦場の場所で案内して欲しいんだけどお願いできるかな?」


 「そんなのでいいの?」


 「うん。今一番して欲しいことだからね」


 「わかった。じゃあ、私についてきて」


 それから、レオはアヤカの後ろについていき無事に第一模擬戦場に到着することが出来た。


 「ありがとう。これで、時間に遅れずにすんだよ」


 「一つ質問してもいいかな?」


 アヤカが何か知りたそうな目をこちらに向けてきてそう聞いてきた。


 「うん。いいよ」


 俺には、別にことわる理由なんてないので承諾する。


 「この、模擬戦場で誰と戦うの?」


 えっと。この質問には、正しく答えていいのかあいまいに答えていいのか分からなかったがまあ、大丈夫だろう。


 「この学園の生徒会副会長だよ」


 俺が、そう言った瞬間アヤカの顔色が曇った。


 「それって、本気なの?オルリア学園の生徒会副会長って言ったら、【光の使途】っていう二つ名まで持ってて、光属性魔法の最終階梯魔法まで扱える超上級の魔術師よ!」


 なるほど。対戦前にこのような情報が聞けたのはラッキーだった。戦いに勝つには相手の情報は有るに越したことはない。


 「それほど、までの人だったのか。あの人」


 俺は、ちょっと実力を見余っていたのかもしれないと思った。


 「というか、そもそも、どうしてそんな模擬戦が行われることになってるのよ?」


 それまでの経緯を事細かに説明した。


 「大体の事は分かったわ。いろいろと質問したいところだけど、まずは、その模擬戦が終わらないとね」


 そうだ。この模擬戦が終わらないことには何も始まらない。その模擬戦でのこの学園の実力が大体わかるのだ。戦い次第では、これからの学園での立ち位置にも関わってくるかもしれないからな。


 「そうだね」


 「私、その模擬戦見ててもいいかな?学園初の推薦入学者で同級生の実力がどれくらいのものか知りたいし、それに終わったら、ちょっとゆっくり話とかしたいし」


 ん?最後の方、ちょぴりだけ声が小さかったようだが、まあどうでもいいことか。


 「いいよ。その代わり俺の力をみてもあまり周りの人には言わないでもらえるかな」


 「わかった。約束するよ」


 それから、俺達は、生徒会副会長が来るまでじっと待つのだった。


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