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弐剣の創造者  作者: 菊池伊久真
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第一話 プロローグ

 5年前この世界は絶望の渦の中にあった。


 それは、太古の遺跡から発掘された【黒箱ブラック・ボックス】と呼ばれている、世界で最も強力な封印術式が組み込まれた魔道書に眠っていた、この世を破滅へと導く漆黒龍が封印を解き復活を成し遂げたためであった。


 【黒箱ブラック・ボックス】は太古の遺跡から発掘された直後、危険度最大のレベル八の禁書であると認定され、世界魔術師協会が保有する保管庫の中で最も厳重な所で保管されていた。


 しかし、あろうことか、その保管庫に一人の魔導士が現れ【黒箱ブラック・ボックス】を持ち出しその封印を解いたのだ。


 それにより漆黒竜は長い封印から解き放たれ世界は混沌と化した。


 漆黒の龍は鉤爪を軽く振るうだけでどれほど巨大な山でも一瞬で消し、漆黒の雷撃を放てば国そのものを簡単に焦がし尽くすことがでるだけの魔力を所持しており、わずか一週間で一つの大陸と五つの国が滅びた。


 だが、人類もただ滅ぼされるわけにはいかなかった。


世界魔術協会は強大な力を持った魔術師や聖騎士を集め漆黒龍を再び封印するために各国家の最大戦力を結集し最強のパーティーを組織した。


 その中には、【剣聖】や【雷王】などの二つ名を持つ者までいた。


そのため、これだけの強者達が集まれば漆黒の龍であろうと再び封印できると誰もが安堵していた。それが愚考であるとも知らずに。


 それから、少しの時が過ぎ、ついにパーティーの編成が完了し漆黒の龍との戦いの時がきた。


 魔術師や聖騎士達は国を滅ぼし続ける圧倒的な力を持つ漆黒の竜に立ち向かう。


 決戦の場は、世界のほぼ中心に位置する無人島。そこに、強制転移の魔法で漆黒竜をワープさせる。


漆黒竜が、転移魔法の魔法陣から姿を現した瞬間、即座に魔術師は魔法を詠唱し聖騎士は剣撃を打つ。


 開幕の速攻は、全て命中した。しかし、それらの攻撃を防御魔法も展開していない生身の状態で受けたにもかかわらずほんのかすり傷さえの与えることは出来なかった。


 それからというもの、あまり決定打を与えることのできない攻防が繰り広げられた。攻撃しては守りのサイクル。いかに、素の肉体が強靭であろうとも莫大な魔力を有していようとも、いずれは魔力切れもしくは隙が生じるはずだと信じて攻撃を続ける。


その激闘の中、ついに一瞬の隙が生じた。その一瞬の隙を剣聖の二つ名を持つ聖剣使いは見逃さなかった。


剣聖は存在する魔法の中で最も攻撃力の高い物理系魔法を聖剣にのせて放った。


「騎士王の聖剣より生まれし絶対の煌き(エクスカリバー)―――――――――――!!」


 その恍惚とした光をまとった聖剣の斬撃は漆黒の龍に直撃し、かなりの爆風が周囲を襲う。周囲の岩山はすべて砕け散り、天空を漂う雨雲は晴れ、太陽の光がその降り注ぎ一本に光の線が生まれる。


 これで戦いは決まった、あとは疲弊した漆黒の龍を封印するだけだと、その場にいる誰もが勝利を確信していた。


 しかし、あり得るはずもないことが起きてしまった。その斬撃でさえ漆黒の龍に対し致命的なダメージを与えることはできなかったのだ。


 そう、漆黒の龍と人類にはそれだけの絶対に越えることの出来ない力の差があったのだ。


 それから漆黒の龍は即座に傷を再生し、反撃とばかりに漆黒の電撃を放つために魔力を一点に溜め始め、それが溜まると高威力の漆黒の雷撃を放った。


 その場にいる誰もがもう駄目だと思った。なぜなら、ここにいるのは、世界でも屈指の強者のみ。その者達一人一人の全力を掛け合わせたとしても到底かなう相手ではなかった。そんな化物を誰が倒せるだろうか。


 だから、ここにいる自分達が負ければこの世界に漆黒の龍を封印できる者はいない。


そのため誰もが世界はもう終わりだと思っていた。人類の敗北だと。


 そう誰もが思った刹那、たった一人の少年がその漆黒の雷撃を二本の白銀の剣で斬り裂いた。


「「「「!」」」」


 その場にいる誰もが唖然とした。国一つを簡単に焦がしつくすことが出来る攻撃をその少年は平然とした顔で切り裂いたのだ。


 それから、少年は、次は自分から仕掛けんと両手に握られた白銀の剣を強く握りしめる。


 その少年に一人の聖騎士が声をかける。


「無駄だ、やめておけ。さっきの雷撃を斬り裂いたことには正直驚いているが、これだけの強者達が集まっても倒せなかったあの漆黒の龍をお前みたいな子供がたった一人で倒せる可能性なんか無い」


 それに対し少年は


「今この場であの龍を倒さなければ世界が終わるというのに可能性が無いくらいで闘いを放棄するのか?あんたらは。それに、俺には守りたい人がいる。その人を守るためならどんな絶望的状況であったとしても剣を振るう。ただそれだれだ」


「そもそも、俺があんたらみたいなのと同程度の実力だと本気で思っているのか?小さい頃、見た目や年でその者の実力を測ってはならないと教わらなかったのか?まあいい、あんたらみたいな臆病者はそこで自身の無力さを痛感しておくことだな」


 と言い残して白銀の剣を両手に地面を思いっきり蹴り漆黒の龍に向かって尋常では無い速さで接近すると白銀の剣を振りかぶり斬りかかった。


 その攻撃に鉤爪で漆黒の龍が防御すると剣と鉤爪がぶつかり合った周囲の空間にかなりの衝撃波が発生した。先ほどの剣聖との攻防よりもより激しく周囲に傷痕を残した。


 それから一時の間少年と漆黒の龍の間で激闘が繰り広げられた。


 このままではいつまでたっても決着がつかないと思った少年は、全魔力を次の一撃に込めて放つことにした。


 少年の体が白銀色の巨大な魔力のオーラに包まれる。


誰も見たことのない魔力色。魔力の色にはその人の心と感情が反映されているといわれており、その中で白銀は清らかすぎるほどの心を持った者が放つ色だ。


 そして、そのオーラを左右の剣に集中させる。


 「これで終わりだ!」


 少年が放つその白銀のオーラをまとった斬撃の威力は、剣聖が放った超光斬撃や竜の漆黒の電撃などとは比べ物にならないくらいの常軌を逸したものだった。


 その攻撃により漆黒の龍の体力を失い今にも倒れてしまいそうな瀕死の状態だった。


しかし、漆黒の龍には超高速で自身の肉体を再生させる能力がある。


 そのため、徐々に傷が漆黒の龍の体から消えていく。


 それを見ながら少年は、

「やはり、この龍を殺すことは不可能だったか」とつぶやく。


超高速で再生できるといっても数秒の隙はできる。


その隙を少年は、見逃さなかった。雀の涙程度しかない残りの魔力を振り絞って竜の背中へ飛び乗り背中から龍の心臓を二本の白銀の剣で貫いた。


 そうすると、白銀の能力である封印の魔法が発動し漆黒龍の力と心を分断しそれぞれを二本の白銀の剣に封印した。


 二本の白銀の剣の内、漆黒竜の心を封じた方は漆黒の剣と姿を変えた。それから、漆黒龍は跡形もなく消滅し、それと同時に少年も姿を消したのだった。


 この世界の存亡をかけた闘いから5年の月日がたった今でもこの一人の少年が起こした奇跡は闘いに参加していた者達によって語り継がれている…




「はぁ、やっと着いた」


 黒髪の少年レオは地図を広げなが、世界屈指の魔術大国パルティア王国の中でも指折りの名門校オルデン・デ・カバリェリア魔術学園の正門の前に佇む。


「ここが手紙に書いてあった学園か」


 と、そう呟きながら・・・・・・





 この世界にはとても深く禍々しい闇が存在している。


 えっ!信憑性に欠けるだって?そこは大丈夫、この俺がしっかりとこの目に焼き付けてきたから。


 人間という種は争い、奪い、殺す。そうゆう生き物だった。神が創った時に間違えてしまっただと思う。


 まあ誰にだって間違いの一つや二つくらいあっても仕方ない。それがたとえ神であったとしても。でもその、間違いをほったらかしていいわけじゃない。


 だから、俺は考えた、どうすればこの現状を打破することが可能なのかを。


 「あっ」そこで一つの名案を閃いたそうか俺がこの世界に存在するすべての闇を打ち砕けばいいんじゃないか。という名案を。


 しかし、まあ、こんな考えは誰しもが考えるだろう。


 世界の闇をすべて倒し英雄になりたいと思うやつらなんていくらだっている。


 でも、俺は別に英雄になんてなりたいわけじゃない。


 ただ、平穏に暮らしたいだけだ、木造建築で暖炉の付いた一軒家を森の奥深くに建て、美味しい料理を作り、好きな音楽を聴きながら、また好きな本をゆったりと読みながら、ただ一人の最愛の人と命が尽きるまでずっと一緒に穏やかに暮らしていければそれでいい。


 ただ、それだけが俺の願いだ。


 その為には、闇はいらない。


 この世界の闇をすべて消し去るその日まで俺は戦い続けるとここに誓おう。


 これは、そんな思いを抱いた一人の少年の物語。


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