死物狂いの逃走劇
その“ヤバい奴”は、一見眠っているように思えた。
アトロシス・レオ。別名“眠れる森の獅子王”。
普段は眠っているが、一回起きればその動きは俊敏にして苛烈。
その身に蓄えた筋肉を無駄なく使い、相手を瞬時に追い詰めていく。
また、魔獣にしてはかなり珍しく魔法も使える。
しかも余程恵まれないとだが、六属性を宿していることもあるという。火と光はデフォルト、そこから様々な属性が開花しえるんだそうだ。
そのスペックの高いステータスと使いこなす知能を危険視し、ギルドはA-ランクにしている。
…とは、姫からの情報だ。
何故こんなに立ち止まっているのかというと、訳がある。
相手の耳は物凄く良く、下手に逃げるとバレて一発KOの可能性もある。
それゆえに立ち止まっていた…のだが。
ガルルルルッ!
「なぁ、あれ、絶対起きてるよな…?」
「ど、どうやらそのようだな…」
「避けろっ!」
直ぐに叫べたのは、何の事はない。“ヤバい”と本能が直感したからだ。
本能に従って真横に全力でジャンプした直後、雷が落ちて来る。
「おいおいおいおい、マジかよ…」
さっきまで立っていた地面が軽く抉られていた。
恐ろしい点は二つ。
一つ目、遠距離に攻撃を飛ばす事が出来る事。相手に超威力の遠距離技があるのはそれだけで戦略を180°変えないといけないレベルなのだ。
二つ目、俺にはその攻撃が全く視認出来なかった事。
つまり、今の我々の命運は完全に自分の直感にかかっているのだ。
今、こいつと戦うのは、明らかに力が足りなすぎる。
故に
「撤退!」
逃げる事にしました。
左に回転回避する。その後ろを豪腕が破砕する。
チュドオオオンッ!
「いやいやいやいや、あれ拳が起こす音じゃないだろ!?どう考えても大砲の一種だろ、あれ!」
反撃どころか回避するので精一杯だ。
どうみても戦況は最悪だ。
「マスター、私を背負え!強化魔法と足止め魔法を掛ける移動砲台になる!」
辺りは樹木の根だらけ。とても走るのに適しているとは言えないが…
「承知した!」
迷ってる暇はない。背負い、走るのみだ。
「自己強化!足止めの泥弾!二重攻撃!」
一つめに掛けたのは光属性の強化魔法、ブーストだ。
初級に相応しく、三割増し程度だがそれでも雲泥の差だ。
お陰で回避が滅法楽になった。
二つ目に打ったのは足止め用の混合魔法、マッドストッパーだ。
闇属性で相手の能力を落とし、土属性で物理的に足止めする混合魔法だ。
お陰で大分余裕が出来ている。…少なくとも転がらずに済む程度には。
三つ目は少し特殊な無属性魔法だ。その内容は、直前の術式を
コピーする事。普通詠唱呪文の場合は間に合わないそうだが、姫は頭の中で使えるらしい。
敵の範囲魔法攻撃が来る。属性は火と光だ。そんな魔法に関する情報を、なぜか雨宮は理解できた。
ゆえに、敵がどれだけ頑張ろうが、魔法は当たらない。手に入れた情報から範囲を割り出して、攻撃魔法のギリギリ外へ。いくら炎が荒れ狂おうが、いくらすさまじい熱を持った光が降り注ごうが、当たらない。
逃げ回っているだけのように見えて、実は、一つだけ手を考えていた。
『鋼の絆』の皆さんに頼る事だ。Cランクだが、連携のお陰でランク以上の能力を発揮出来るとみた。
そして。
「見えた!」
確かに鋼の絆の皆さんがそこにいた。
「誰かと思えば、さっきのサモナーか。そんなに急いでどうしたんだ?」
「アトロシス・レオが来る!臨戦態勢をとって下さい!」
と同時に、姫がいつの間にか仕掛けたトラップを突破した獅子が来た。
「街に被害を出さねぇためにも、やるぞ!」
と言うと同時に、ジルが前線にでる。
しかし、拳の一発で吹きとばされる。
「想像以上に強い!」
弓使いのイル、魔法使いのカイン、そしてヒーラーのセレンが総攻撃しているが、なかなかダメージが入らない。
イルが放った矢は悉く跳ね返される。
カインが放った魔法は、その頑丈な甲殻に阻まれて効果が薄い。
セレンは…甲殻のない胸に殴りこんでいるので、一番ダメージを与えている。あんたヒーラーだろ。
挙句の果てに、相手が放った小規模魔法でも直でくらったらかなり危ない状態だ。
「なかなか想定以上の相手だな、これは。」
「ああ、やばいぜ。これ以上くらったらマジで危ない。」
兄弟が話し合ってる隙に、敵が動いた。
自分の両足を振り下ろしてくる。仕方がないので盾でジルが防いだ。
それでも何とか前衛二人が凌ぐが、その危うい均衡は一瞬で崩れるものだ。
敵の範囲魔法の前兆が、来る。
戦況は、最悪を迎えていた。
余りに内容が杜撰だったため、編集いたしました。
ご理解いただけると幸いです。




