嵐、到来す。
「事情は聴いたわ。さて、どうしたものかしら...」
ここは、ギルド会館の四階。最高機密規模の話し合いを行うために作られた場所だ。
今回のメンツは、・ギルドマスター代理、受付嬢のナタリー。
・Bランクパーティ「鋼の絆」パーティリーダー、ジル。
・Bランクパーティ「先駆の翼」パーティリーダーのエヴァンズ。
・武具屋の店主(!?)のパウエル。
・俺、雨宮 優と吸血姫、ミレイ。
「いやいや、何故おれと姫が入っている!?そしてなぜに武具屋の店主!?人選おかしいだろこれ!」
「まあまあ、落ち着きなさい。今から説明するから。
まず、「鋼の絆」と「先駆の翼」がこの街でトップのBランクパーティってことはオッケーね。あなたとそこの召喚者は第一発見者だし、頭の切れがよく口も堅いから。そして武具屋の店主は、この街一の最高戦力よ。」
...チョットナニイッテルカワカラナイノデスガ。
「パウエルは昔勇者パーティにもいた凄腕で、現役時代はA+ランクの冒険者だったのよ。間違いなくこの街最強。」
ここで皆さんに思い出してもらいたい。二話目あたりに、なんか不自然な登場人物がいなかったかどうか。
「あんたはあの時の村人A!」
「AとはなんだAとは。よく見たらお前、あの時の街の名前がわからない坊主か。久しぶりだな。げんきにしてたか?」
「ああ、もちろんさ。」
「...マスター、あの後も武具屋、行ってますからね?」
都合の悪いことは目をそらすに限るな、うん。
「さて、話を進めるわよ。現在、魔物の大群が街に向かって進行してきているわ。さっき飛空艇監視隊が観察したところ、およそ敵の規模は大小合わせて12000体ほどだということが判明した。」
飛空艇、あるのか。一つハイジャックしてみたいな。
「い、12000だって!?押しつぶされてしまうじゃないか!」と、ジル。
「とりあえず、現状把握をしましょう。まず、敵の進むルートは街道を一直線でまず間違いない。ほかの経路を経由することもないと思うわ。なぜなら東側は断崖絶壁、北側は深い森で進む意味がない。正々堂々押しつぶしてくるでしょう。早ければあしたの朝にはここについているわ。」
「質問!そもそも敵は、軍隊なのかどうか、また軍隊だとしたらどこの軍隊なのでしょうか?」
何のこと言ってるかサッパーリ理解できなかったので、質問していくスタイルでいきましょう。
「敵は魔王軍よ。ついでにここ、シュメールの街は、魔王の支配領域に最も近い町の一つよ。だから時々魔王軍が攻めてくるの。」
「了解しましたー!」
「味方の数はどうなっておる?」 これは武具屋の店主。
「引退した冒険者や兵士を総動員しても48人しかいないわ。圧倒的な人材不足が今回の一番悪いところなのよ。」
これは...思っていたよりまずそうだ。
「そしてね...魔族の姿が複数確認されたわ。」
ラノベを読みまくってきたから、いやでもわかる。この状況は、いわゆる‘詰み‘の状態であると。
「いやはや、マズイね、これは。」と、エヴァンズ。
「新人、なんかいい発想はないのか?このままだとこの街は壊滅してしまうが...」
いや、そんなもんとっさに出てくるかい、ド阿呆。と言いたい気持ちはやまやまだが、なんとか我慢する。
「そんなに出てきませんね...」
と言いつつ、なんとか再起の芽を探す。今までの会話をもう一度、洗いざらいよく思い出して...
「ん?」
何か引っかかるものを感じた。スライムの特性をかたっているあたりだ。
可能性があるかもしれない。そう思った瞬間、採れる選択肢が増えた...ように感じた。
とりあえず、全ての一手を検証していく。どれが一番確率が高いのか。
...何とか、戦える...のか?
「すみません、実践してみたいことができました。今から試してきたいと思います。」
「じゃ、新人君の一策に期待ね。ほかの人も意見あったら出してね。会議はこれでおしまい。」
「姫、実験に協力してほしい。」
「ああ、勿論。」
ルールの穴ってもんの付き方、教えてやるよ。