召喚された中二病
今、雨宮 優は陰鬱な気分だった。
「はーあ・・・」
その手には、いましがた三者面談を終えて手渡された二学期のテストがある。すでに親と先生にこっぴどく
絞りつくされた後だ。っていうか日本の三者面談ってマジいらないと思う。俺が総理になったら、即刻廃止だ、廃止。
とにもかくにも、この進路が決まってくる時期にこの点数はマズイ。非常にマズイ。
勿論、雨宮も理解はしているのだ。
「どー考えてもラノベの読みすぎだよな、これ。」
そう、雨宮は自他ともに認める重症中二病患者である。いまだって
「呪文詠唱しろって言われたら、十個やニ十個ぐらいかんたんにやってみせるぜ!」
あたりまえだが、呪文を詠唱していいことなんて一つも起こるはずがない。ましてやテストの点数が伸びたりするわけがないのだ。
そうして、落ち込んで下ばかり見ていた雨宮は、気が付けなかった。普段通っているトンネル、そこに光り輝く、魔方陣のようなナニカに。
「これってやばいやつな・・・」
語尾を言い切る前に、雨宮が消えていく。
もしもここで雨宮がそれの存在に気づけたなら。総理大臣になって三者面談の廃止・・・は無理でも、
平凡で、普通で、退屈な人生を送れたかもしれない。
しかし、雨宮の人生の歯車は、ここで大きく狂いだす。
雨宮 優、異世界への召喚、完了。