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悪夢ノ繰リ返シ

 朝になり俺は機械的に手足を動かし着替え、簡単に身なりを整えて玄関を出た。外に出た事で蝉の声が1段と大きく感じる。

 アパートに張り付くかのようについている外階段が、俺の重みで軋んだ嫌な音を立てる。

 朝だというのに陽射しが悪意があるかのように痛い。


 ザッ ザッ ザッ


 アパートの前でそんな音が響く。二〇一号室の婆さんが箒で周辺を掃除している音である。俺の姿に気が付いたのか、その音が止む。

 この婆さん当番とかではなく、いつも朝はアパートの周辺を掃除している。

 年寄りだから朝が早いのと、おそらく何もする事がないからだろう。

 暇を持て余しているだけに婆さんはやたらと人に声をかけてくる。

 正直面倒くさいが、性格的にそれを無碍にも出来ず俺は作り笑いを浮かべそれに応える。

「おはよう。今日も暑いわね。

 そうそう昨日はまた大変だったわよね。

 いつもは夜に起きる事ないんだけど、昨日は流石に飛び起きちゃったわよ。

 どうやら放火にあったの大通りの反対側にある【前田コープ】なそうよ!

 夜中だっただけに、気がつくの遅くて学生さん結構亡くなったそうよ。可哀想よね。若者がそんな形で亡くなってしまうなんて。

 本当に不審火が続いていて物騒――」

 コチラが挨拶返す暇もなく、話しを続けてくる。

「怖いですね。早く犯人が捕まるといいのですが」

「そうね。でもなんとかなるわよ! 日本の警察は優秀だから。

 自警団も組まれて夜の見回りもされているそうだし。大丈夫よ! すぐ捕まるわよ――」

 田舎でもそうだったが年寄りは空気が読めず、話が無駄に長く面倒くさい。案の定ダラダラと会話を続けようとしてくるので俺は申し訳なさそうな顔をつくり微笑む。

「ゴメンなさい、授業の時間があるので、そろそろ……」

「あら、頑張ってね。行ってらっしゃい」

 当たり前だが、この婆さんと話をしたところでなんの問題が解決するわけもなく、ただ無駄な時間を使うだけ。

 会話を切り上げさっさと別れ路地を抜け大通りへと向かう。

 予備校に行き冷房の効いた場所に行くと少しだけホッとする。しかしここで涼しさを楽しみノンビリしている時間なんてない。

 直ぐに気持ちを切替えて勉強をすることにする。自習室が閉室になり、疲れてぼんやりした思考のまま帰路につく。

 遅くまでやっている立ち食い蕎麦屋で本日初めての食事を食べて部屋で倒れるように寝る。しかし暑さで起こされて布団でそのまま、のたうちながら暑さと闘い一晩を過ごす。

 そんな毎日を過ごしている間にも、週に一度という頻度で不審火の騒ぎが起こり俺の神経をすり減らせていく。

 悪夢のようなルーティンを繰り返しているうちに七月は終わり八月となり、夏のうねりはますます凶悪なものとなっていった。


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