表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

0.

 筆の軌跡が文字を刻み。


 文字の羅列がことばを奏で。


 ことばの纏まりが物語を描く。


 




 ――コトッ。


 最後の句点を付けた僕はシャーペンから手を離し、ノートを閉じた。


 一区切りが付くまでと思っていたが、気がつくと時計の針は四分の一周していて、もうすぐで次の日になりそうだった。


「うぅーん、身体いてぇー」

 椅子の背もたれに身体を預けながら、同じ体勢を長時間続けて凝り固まった身体をほぐした。


 ………この趣味。

 と言うより既にいつもの日課となった、一つのオリジナル小説を書き始めて、はや五年になる。


 ジャンルは『ファンタジー』。


 題名はその場その場で変わるのでコロコロ変わるので、まだこれといったモノは無し。

 

 パソコンはそれなりに扱えるが、ちょっとしたこだわりから昔ながらの紙とペンで。


 書いた量はA4サイズのノート二十三冊分。


 細かい設定やメモを書いてノートを合わせたら三十一冊。


 数えたことはないし、此れからも数えることはないだろうが、文字数にしたら数百万を軽く記録するだろう。


 それだけの時間をかけ、それだけの量を書いた自分の小説だが、別に誰かに見せようとして書いているわけではない。


 友達に見せようとは思わない。

 ネットで公開しようとも思わない。

 ましてや、小説の賞に投稿しようとも思わない。


 ひどい言い方をすれば、只の独りよがりの自己満足だ。


(――まあ、自分が面白いと思うモノを書いているだけだもんで、それはひどい表現とかじゃなく、正当で適切な表現だろうけどな)


 等と自嘲気味たことを思ってみた、しかし誇れるものとは思っていないが、別にこの趣味について恥ずかしがる気持ちはないし、卑下する気もない。


 自己満足で思いつくままに書いているせいか、五年たった今でも、全く終わりが見えてこない。


 しっかりと最後まで書いて、良い思い出になるのかもしれない。


 未完のまま飽きて、途中で投げ出すのかもしれない。


 もしかしたら、それっぽい終わりを付けて、無理やり終わりエンディングを迎えせさせるのかもしれない。


(まあ、そんなことを考えても意味なんかないけどな)


「――おっと! やばいな」

 そんな事を考えていたら、時計の針は次の日への秒読みを始めていた。


「明日学校だし、寝ないとな」

 ギリギリ明日のことを考え、全国の学生の殆んどが総じてなる、憂鬱な気持ちになりながら、ベットに飛び込んだ。


 元々かなり眠気があったのだろう。


 ベッドの感触を肌で味わうことなく、僕は直ぐに夢の中に落ちていった。


 

 だから、気付けなかったのだ。



 小説を書いたノートが全て暗闇の中でぼんやりと光り、ものすごい速さで独りでにページが捲られていたことに―――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ