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魔王が嫁になりました  作者: 明日今日
第四章 反転
20/25

(7)

自分でも(6)と(7)は一つに纏めて出せよとは思います

4章の切るところを見なおせば良かったんですが──

 良平は見知らぬ少年と意識を共有していた。その少年が意識を取り戻す。

 彼が再び、意識を取り戻した時、高位魔族と思しき、少女の腕に抱えられていた。勿論、忘れる筈もない。冥府魔道に落ちても彼女には巫女であった頃の気品が残っていた。

 だが、少年は対照的に白く剥き出しになった頭蓋骨だけの状態だった。頭蓋骨が彼の魂をこの世に留めるのに必要な媒介らしいが彼は少女に探しだしてもらうまでの記憶がなかったらしい。

 恐らく、黄泉の国より呼び戻されたのだろう。

 彼が少女から聞かされた話によると、あれから、数百年経過しているらしい。彼女は人と言う衣を捨て完全に高位魔族として君臨していた。

 その姿は巫女として、人として在った姿、アルビノとしての姿のまま、彼女は魔族として生まれ変わっていた。服装も巫女の時と変化がなかったように少年には思えた。

 もっとも、彼女がそう見せていただけかも知れないが――

 だが、少女が語ったのは、ずっと会える日を待ち焦がれていたと言う思いの丈で少なくとも、自分の前では人間だった頃と何も変わりがなかった。

 早送りしたように時間が飛ぶ。少年が彼女に起こされて、数ヶ月経った月明かりのない漆黒の夜、少女と少年の前には狩衣を纏った男や鎧兜に身を固めた若者達が現れた。

 彼等は陰陽師や豪族などと名乗りを上げ、武器を構え、襲いかかってきた。そして、今、二人を社に追い詰めている。

 少女から伝えられたことを総合すると、彼女の力は月の満ち引きに左右され、満月時には全能力を発揮できるが、反面、新月時には殆ど力がだせない。

 魔族として転生した際の制約で月のない闇の中では少女は力が発揮できない。

「魔よ、覚悟を決めろ!」

 鎧姿の男が一歩前に出て、いきり立つ。

「弱ったところを襲っておきながら、随分と猛々しいことで」

 少女は少年を、正しくは少年の意識が宿る、この世に留まる為の媒介とする頭蓋骨を愛おしそうに腕に抱きながら、見る者が凍りつくような憎しみを込めた目で男達を見下す。

 少女が魔として過ごした時間、人間に対する感情がどこまで悪化したか想像に難くない。

「人の頭蓋骨を持ち歩くとは趣味が良いな。高位魔族と称されるだけのことはある」

 男の一人が怯んだ様子もなく言った。

「貴様のような痴れ者に妾の恋路が理解できるとは思えぬ。如何わしい術でも唱えておれ」

 少女の瞳に宿っていた光は凍りついた憎悪から焼けるような殺意に変質する。歪んでいたがそれは強さだった。少年に会いたい一心で手に入れた意志の強さ。

 長き孤独の中、手に入れただろう。少女の過ごした時間に少年は想いを馳せる。

 自分が突き落としてしまった為にそのか細い身に背負うことになった業の深さに。

 彼と共有する痛みに良平は己の身が削られるよう軋みを覚える。

「魔に頭蓋骨を持ち歩かれるとは不憫な男よのう」

 男達の中に加わっていた女が口を挟む。不快な金切り声。他人事だ。関わらないでくれ。

「人間に妾の男の何が分かろうか。知った風な口を聞くな。汚らわしい」

 少女は頭蓋骨を大きなショルダーバッグにしまい、戦闘体勢に移る。しかし、この状態で本来の力が発揮できないことは明白だった。

「外道の王に言われたくないわ」

「選りに選って、人間が言うとは……貴様等、人間は救いようがない。――人は変わらぬ。いつまでも手前勝手な正義を振りかざすか」

 屈服する気がないのか、般若を連想させる形相で少女が嘲笑う。

 それでも、肉体を持たない少年には助力する術がない。肉体さえあれば、苦もなく倒せた。

 自分さえ戦えれば、こんな状況に彼女を追い込むことはなかった。その程度の相手。――その事実が少年を苛立たせた。

 既にこの狩人達は獲物を狩場に追い詰めている。戦うまでもなく、結果が見えていた。

 少女の周囲には結界が張り巡らされ、動くことすらできない。

 それでも、少女は余裕だった。男達ではただ、封じ込めることしかできないとタカを括っていたのだろうか。

 少年は不安を覚える。その思い込みで自分が取り返しのつかない過ちを犯したから。

 同時に良平は己を鑑みる。彼と同じ過ちを犯していないだろうか。

「負け惜しみを! お前を封じ込めたぞ。お前は封印がある限り、この地に縛られ続ける。時間はたっぷりあるぞ。お前が行なったことをよく考えるのだな」

「貴様等が、貴様等、人間が妾に行なったことも知らずに――その口で言うか! やはり、貴様等、人間は根絶やしにする。このままで終わったと思うな。必ず復讐してやる」

 勝ち誇った男が放った矢が少女の持っていたショルダーバッグの肩紐を貫き、その衝撃で少年の頭蓋骨が空中へと投げ出される。

 少女が声にならない悲鳴が木霊する。それは魔族としてではなく、愛する者を失う痛みによる叫びだった。

 良平は思わず顔を背ける。

 少年の頭蓋骨は石畳に落ち、砕け散った。媒介を失った少年の魂はこの世に留まることはできない。

 少女は封じ込められていく最中、涙を零しながら、少年に視線を移す。その顔は魔族の表情ではなく、少年が愛した少女の表情だった。

『あなた、御免なさい。必ず、復活させるから、待ってて。絶対に待ってて。例え、あなたが別のあなたになってたとしても、絶対に迎えに行くから』

 薄れていく意識の中で少年が聞いた少女の最後の言葉だった。

 同時に「望」と言う少女の言葉を思い出すが、少年の意識は闇に解けた。同時に良平もこの場に留まることができなくなった。

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