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スクラップ・スピリット(聖霊屑)  作者: ランプライト
第1話「時を超える聖霊」
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エピソード001「始まりの過ち」

俺の名前は倉持恭二(仮名)、36歳、一寸は名の知れた会社に勤める一介の課長補佐だ。


その日の夜も、俺は一人会社で深夜残業していた。

くだらない上司の叱責と、くだらないやり直しの仕事と、くだらない意地ばかりが、ムカムカと胃の周りにこびり付いて離れない。


溜息:「あーあー、」


25時を過ぎて、真っ暗なオフィスには、既に俺以外誰も居ない様だった。

ポツンと、俺の机のパソコンの液晶画面だけが、闇の中に散らばった書類の山を照らし出している。


俺はすっかり冷めたコーヒーを啜り、くるっと椅子を回転させて、

しょぼくれた眼を擦ると、斜め後ろの職場のマドンナ青山優梨愛の机が目に付いた。


ふと魔が差して、職場のマドンナの机の上のマグカップを、舐めてみる。

暫くして何も起こらない事を確認してから、徐にカップの中に唾を垂らして、飲み口に塗りたくってみる。

更に魔が差して、椅子の座布団に、顔を埋めてみる、彼女の尻の残り香を求めて、深呼吸してみる。

何を思ったのか、机の下の足元に並べられたオフィス履き用のパンプスを手に取って、甘酸っぱい匂いを嗅いでみる。

とうとう気がふれて、パンプスに染みついた女の足の裏の匂いに恍惚としながら、自分の一物を取り出して、…


警備員:「ちょっと大丈夫ですか?…って、あんた! 一体何やってんだ?」


行き成り、人生のシャッターが閉じる音がして、肋間神経痛の様な衝撃が背筋をビリビリと凍らせる!

俺はそのまま、誰の呼びかけにも耳を貸さず、一言もしゃべらず、何も見ないで、一目散に会社を飛び出して、


気が付いたら、暗い自分のアパートの部屋に居た。


心臓が苦しい、痛い、

何で、こんな事になっちゃったんだろうか?


誰かの所為に違いない、何かの所為に違いないのだ、

メタ的には、社会と政治と教育がいけないのに決まっている、


倉持:「きっと、俺は、そういう所まで、知らず知らずの内に追い込まれていたんだよ、」

倉持:「俺は、被害者なんだ、」


でも、そんな辛い境遇を皆に憐れんでもらう為には、


男:「もう、死ぬしかないかな。」


気が付いたら、何故だか彼女のパンプスを片方、持って帰ってきてしまっていた。

どうせこれで全部終わりにするんだから、良いよな、…そんな言い訳をしながら、3回自分で慰めた。





当然の事だが、夜が明けても、俺は生きていた、

結構ぐっすり眠って、時計はいつの間にか朝の8時を回っていたが、当然会社に行ける気はしなかった。

まとまらない頭で、ぐるぐると自分を正当化する言い訳を考え続ける。


何で、あんな事をしてしまったんだ? 俺は何度も同じループで反芻する。

恐らく、あの警備員には俺の名前も、社員番号も、真夜中のオフィスで一物を取り出して愛撫していた事もばれている。

と言う事は、あの嫌味な上司の耳に入るのは時間の問題で、

彼女が出社して来てパンプスが片方盗まれた事に気づくのは時間の問題だった。



呼び鈴:「ピンポーン!」


闇に、閉じ籠りたかった。

会社の連中が駆けつけてきたのだろうか? それともまさか警察か?


呼び鈴:「ピンポーン!」


恐る恐る、小さな除き穴から、外の様子を伺ってみる。

其処に映って居たのは、…朝っぱらだと言うのに色っぽい、一人きりの女だった。


まさか、私服警官?

しかし、会社が、こんな些細な事を直ちに公にするとも、思えない。

意図せずに盗んだのは、女物のパンプスの片方だけなのだ。


それからインターフォン越しに、艶かしい囁き声が聞こえてきた。


女:「倉持さん、ドアの反対側から覗いているのは分かっています。私は貴方の過ちについて知っていますが、貴方を罰したり責めたりするつもりはこれっぽっちもありません。私は貴方を苦しみから救う為に此処に来ました。」


そう言えば、二三日前にアパートの掲示板に注意書きが貼ってあった。

最近、妙な新興宗教の勧誘が増えているから注意する様にとか、…そうだ、新興宗教に入信して、神様の所為にすれば、昨晩の悪夢を全て上手く説明できるかも知れない!


後先順序が逆になってしまった気もするが、俺は妙な新興宗教にハマって、それで、あんな破廉恥な事を仕出かす程に壊れてしまったのだ、そうに違いない。


俺は、シリンダー錠とチェーンの補助錠も外して、その色っぽい女を迎え入れた。


倉持:「アンタ、宗教の人だろ。アンタの神様は、俺を助けてくれるのか?」


その色っぽい女は、少しきょとん顔をして、それからにっこりと微笑んで、ずかずかと玄関に入り込んできた。


女:「ちょっと違いますが、まあ、似た様なモノかも知れません。」

女:「倉持さんに「とても良いお話」を持ってまいりました。」

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