二人の過去
ジャービスとジュリアという新しい仲間を迎えたトラヴィス達はスティールの酒場を後にした。
「ジャービス殿はベネット様の指導を受けていたのですよね?」
ジャービスはトラヴィスに話しかける。
「ああ。自分でもこんなことナンだけど、俺がここまでやってこれたのもベネット様のおかげさ」
「僕はベネット様のことはあまり知らないのですが、トラヴィス殿から見て、ベネット様はどういうお方なのですか?」
ジャービスとジュリアはスティールからベネットのことは聞いているものの、鍛練に励んでいたために詳しいことは聞いていなかった。
「そうだな。俺にとってみればかけがえのない師匠さ。ベネット様を慕っているのは何も俺だけじゃない。そうだろ。グライムズ」
トラヴィスは自分の目から見てベネットがどんな存在かをジャービスに話すと、頭をグライムズの方へ振り向ける。
「ああ。ベネット様を慕っているヴァンパイア・スレイヤーは多い。もし、機会があったら会ってみたいか?」
グライムズは首を縦に振り、ジャービスの方へ振り向ける。
「はい。是非とも」
ジャービスは首を縦に振る。
「それならばあたしも会ってみたいわね」
ジュリアは話しに加わる。
「そうだな。ジュリアも機会があったらベネット様に会わせてやりたいな。君の好きなタイプだと思うよ」
「なら、今すぐにでも会ってみたいわね」
ジュリアは笑みを浮かべる。
「ところでさ。トラヴィス」
ジュリアは頭をトラヴィスの方へ振り向ける。
「ヒョンなことを聞くようだけどさ。あんたは何でヴァンパイア・スレイヤーになったの?」
ジュリアはトラヴィスにヴァンパイア・スレイヤーの道へ歩んだ訳を尋ねる。
「どうしてそんなことを?」
「聞いたら悪いかしら?」
「理由は単純さ。親父とお袋の弔いのためさ」
トラヴィスは自分がヴァンパイア・スレイヤーの道へ歩んだ訳をジュリアに話す。
その訳を聞いたジュリアは数秒ほど口を閉ざしてから、フッと笑みを浮かべる。
「あたしとあんたは似ているわ」
ジュリアは元々農場主の娘であった。が、スティールと出会う三年前に、吸血鬼達の襲撃を受けて父親と母親、その上に妹までもを失ったのだ。
幸いジュリアだけは何とか助かったものの、しかし、家族は殺されて何故、自分だけが助かったのか…。
何もかも失ったジュリアは自害しようとしたものの、その時にスティールと出会い、彼の元に拾われたのだ。
それはジャービスも同じであった。
ジャービスは元々貴族出身の人間であったが、吸血鬼の脅威に恐れをなした(ジャービス)の父親は、ノスフェラトゥと手を組み、いつしか人間に手を加えるようになった。
父親のやり方に付いていけなくなったジャービスは家を飛び出し、やがてはスティールと出会いヴァンパイア・ハンターの道へ歩んだのだ。
この二人がヴァンパイア・スレイヤーの道へ歩んだ訳は自分とグライムズに似ていた。
「二人にこれだけは忠告しておく。吸血鬼共はお前達が思っている以上に、残忍でしたたかだ。よく覚えておくんだ」
ジャービスとジュリアはグライムズの警告を肝に命じた。