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ノスフェラトゥとの対面

翌朝、天気は曇りで上空を漂う黒雲から大雨が降っていた。

時より雷の音すら聞こえる。

ザーザーと強く降る雨の下をトラヴィス達は走っていた。

どこか雨宿りできる場所を探していた。

「今日に限って大雨とはな…」

この日の雨は思った以上に強く、まるで台風で起こりそうな感じであった。

「天気は気まぐれだからな。いつも晴れとは限らないものだよ」

グライムズは天気なんて一定していない、と言った。

確かに天気は一定していない。今日が晴天だとしても翌日は晴天とは限らないものだ。

「確かにね。けど、今日の雨は異常よ」

その時だ。雷が怒号の如く鳴る同時にドシーンと木が倒れる音が聞こえた。

その音に一行は一瞬、足を止める。

「雷が木に直撃したんだな…」

雷の威力はどんな大木でも倒してしまう。まして人間に直撃すれば瞬時にあの世行きだ。

ジャービスはこの時ばかり吸血鬼よりも雷の方が恐ろしく思えた。

「あれ、見て」

ジュリアは雨宿りのできる場所を見つけたようだ。ジュリアが指差す方向には一軒の教会が見えた。

「助かった。あそこで雨宿りさせてもらおう」

トラヴィス達はジュリアが見つけた教会へ足を走らせた。


トラヴィスはドアをノックするものの、返事がない。神父は寝ているのだろうか。

再度ドアをノックするが、やはり返事はない。

「ここ誰も住んでないんじゃない?」

ジュリアはこの教会には誰も住んでおらず、無人の教会なのでないか、と思った。

「そうなのかな…」

そう思ったが、ドアの鍵はかかっていなかった。

勝手に足を踏み入れるのは何だか忍びないが、何度ノックしても返答がないのならば室内に入らせてもらおう。

トラヴィスはドアを開けて、中へ入るとグライムズ達も中へ入った。

室内は薄暗くシンと静まり返っていた。

やはりジュリアの言う通りここは無人の教会なのだろうか。

「まあ雨宿りができて良かったよ」

ジャービスは一息を吐く。

その時であった。ドアが自然にバタンと閉まった。

三人は同時に頭をその方へ振り向ける。

「何これ。開かないわ!」

ジュリアはドアを開けようとするも、ドアは開かない。

トラヴィス達は教会内に閉じ込められてしまったようだ。すると、

「処刑場へようこそ。愚かな猛者達よ」

どこからか声がして、トラヴィス達は声が聞こえた方へ頭を振り向ける。

前方から一人の男性が自分達の方へ歩いてくるのが見えた。

「あいつは…」

その人物は彼らの前まで足を歩ませるとピタリと足を止める。

「待っていたよ。愚かな罪人達よ…」

その人物は自分達が憎む吸血鬼達の首領であるノスフェラトゥ伯爵であった。

こんなところでノスフェラトゥと対面するなんて予想外であったが、ここで奴の首を取れば全てが終わる。

トラヴィスは鞘に納められている剣の柄に手をかける。

「私を殺す気なのかね。トラヴィス?」

ノスフェラトゥは尋ねる。

「お前の首さえ取れば全てが終わるんだからな。ここは俺達の処刑場じゃない。お前の処刑場だ」

トラヴィスの言葉にノスフェラトゥはニヤリと笑う。

「私の処刑場だと。随分と威勢がいいな。 しかし、どんなに威勢が良くても結果を果たせねば意味がないな」

ノスフェラトゥの言葉にカチンときたジュリアは鞘から剣を抜き出した。

「あんたも私と会ったのが運の尽きね。私をずっとあんたを殺してやりたかったわ。両親の敵を打たせてもらう!」

ジュリアはノスフェラトゥを睨み付ける。

「両親の敵だと。おもしろいな。ならば私を殺してみるのだな。しかし、お前ではこの私を殺すことは無理だと思うがね」

ノスフェラトゥはジュリアのことを役者不足呼ばわりした。

「何ですって?!」

「それに私はお前に用はない。用があるのはトラヴィスだ」

ノスフェラトゥを頭をトラヴィスの方へ振り向ける。

「俺に用があるだと。何の用だ?」

ノスフェラトゥは軽く笑い、

「私はお前望みを叶えてやろうと思ってな」

その用の内容を話す。ノスフェラトゥが持ちかけたその用の内容はヴァンパイア・スレイヤーから足を洗えばクレアと結ばせてやるというものであった。

「クレアは今もお前のことを思っている。故に私は、お前と傷付け合いたはくないのだよ」

「悪いが俺はもうクレアを愛してはいない。それに彼女は俺に言った。『自分の正体が吸血鬼であれば殺してほしい』とな。だから俺はクレアを殺す。彼女のためにもな」

トラヴィスの言葉にノスフェラトゥは高く笑った。

「カッコ付けるのもほどほどにしておくのだな。貴様は口ではそうは言っているものの、内心ではクレアを殺すことに迷いを感じている。できる訳がない」

ノスフェラトゥはトラヴィスの心を読んでいた。

トラヴィスは今もクレアを殺すことに迷いを感じている。実際はクレアを殺したくはないのだ。

「それにお前は今もクレアを愛しているのだろう。トラヴィスよ。己を偽る必要などないのだ。私に従うのならばクレアと結ばせてやるぞ。どうかね。悪い話ではないはずだ?」

図星であった。女々しいやも知れぬがトラヴィスは今もクレアを愛していた。

クレアはトラヴィスと結ばれ、そして共に年老いて死ぬことを望んだのならば、それはトラヴィスも同じであった。

しかし、クレアは正真正銘の人間などではない。

ならば共に結ばれたところでどうなるというのだ。

共に年老いて死ぬだと。クレアは人間ではないんだ。俺は人間だからいずれは老いて死ぬが、クレアは吸血鬼なため故に老いても若さを保ち、そう簡単には死なないのだ。

トラヴィスは鞘から剣を抜き出して、ノスフェラトゥの喉元に突き付ける。

「俺はお前に従うつもりはない。お前は俺の両親の殺した。ここでお前を殺して全てを終わらせる」

せっかく友好的に応じてやったのに、やはりこ奴が私の親切を受けとることはないか…。

ならば仕方がないな。こいつらは死んでもらおう…。











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