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クレアの訴え

クレアはウォリックに自分が人間の世界へ足を踏み入れた時のことを全て話した。その中にはトラヴィスのことも含まれていた。

「トラヴィスだと。お前はあの忌々しいヴァンパイア・スレイヤーと付き合っていたのか?」

クレアはウォリックの質問に頭を縦に振る。

「ええ。付き合っていたわ。けど、その関係ももう終わった…」

トラヴィスとの関係はもう終わったのだ。

だが、それでウォリックがトラヴィスを無罪放免にする訳がなかった。

「お前はあの(トラヴィス)がどんな奴だか知っているのか?」

ウォリックはクレアを睨む。

「知っているわ。兄さんや父様や皆にとっては憎むべき存在だけど、私は彼を殺したくはない…」

クレアは人間から吸血鬼に戻った今でもトラヴィスへの思いは消えていなかった。

「殺したくはないだと。…何故(なにゆえ)そのようなことを言う。あ奴は我々の多くの仲間を殺した残虐な人物なのだぞ。にもかかわらず殺したくはない。一体、どういう了見だ?」

ウォリックからすればトラヴィスは厄介な存在であり、このまま生かしておけば自分達の命すら危うい。

にもかかわらずクレアはトラヴィスを殺さないでほしい、と訴えたのだ

「私は彼を殺したくないの。だからお願い。彼には手を出さないで」

「お前は何も分かっていない。あの男は我々を憎んでいる。今も言ったようにあ奴は我々の多くの仲間を殺したなのだぞ。それにかかわらず殺したくはないだなんてお前の言っていることは我々へ裏切りだ」

トラヴィスが吸血鬼が憎むべき存在であれば、ウォリックを含む吸血鬼達にとってトラヴィスは憎むべき存在であると当時に始末せねばならない存在なのだ。

「それにお前をこんな目に遇わせたのは誰だ。どうせ(トラヴィス)だろ?」

確かにトラヴィスは自分の命を狙っている。だが、自分に重傷を負わせたのはトラヴィスではなく、ローリーであった。

クレアは首を横に振る。

「違う。けど、兄さん。トラヴィスには手を出さないで。私が彼を説得するから」

その時であった。ウォリックに良い考えが浮かんだ。

「その必要はないさ」

「どういうこと?」

「安心しろ。お前の望み通りにしてやる。お前は黙って見ているがいい…」

ウォリックは腰を上げると、足をドアの方へ歩ませてドアを開けると、室内から出た。


「ジュリア。お前は先に宿へ戻っていてくれ。俺は用事ある」

グライムズとジュリアは宿へ戻る途中であった。

「用事?」

「さっき従業員が俺に一枚の紙切れを渡しただろ?」

それは酒場で酒を飲んでいる時であった。その際に従業員がグライムズに一枚の紙切れを渡した。

紙には『お前に用がある』と書かれていた。

差出人は分からないが、グライムズにはその差出人が誰なのがだいたい分かっていた。

「なに、大した用じゃない。別に今から吸血鬼退治をする訳じゃないんだ。安心しろ」

ジュリアはグライムズの言葉通り先に宿へ戻った。ジュリアの姿が見えなくなったのを確認すると、

「ここにいるのは俺だけだ。さっさと用件をすませてもらおうか」

頭を後ろに振り向ける。

すると、そこにローリーとブリューワが姿を現した。

一枚の紙切れの差出人はローリーであった。

「こんな夜遅くすまないな。なに大した用じゃないさ」

「用件はなんだ?」

グライムズは尋ねる。

「簡単なことさ。もうこれ以上クレアの件で余計な首を挟まないでほしいのさ。あんたも含めてな」

要するにクレアの首は自分のものであり、それを邪魔立てするのならば相手が誰であろうと容赦しないということであった。

「俺はそのことにかんしては何も言う気はないが、その事ならばトラヴィス本人に会って言うべきじゃないか」

ローリーは何も分かってねえな、という表情を浮かべる。

「あいつじゃ話にならねえ。今日だって俺を本気で殺そうとしたんだからな。まともな話ができるか。できる訳がない」

「では、俺にどうしろうと?」

「だからさ、今も言ったようにあんたが『あのゴロツキがこれ以上クレアの件で余計な首を挟むな』と警告していたことを伝えてほしいのさ。用件はそれだけだ」

伝えるのは簡単だ。だが、それで大人しく引き下がるトラヴィスではない。それにこの(ローリー)は、ここまでクレアの首にこだわっているのか。

「分かった。お前さんの要求は飲もう。だが、その前に一つだけ聞きたいことがある」

「何だ?」

「なぜお前は、そこまでクレアの首を取ることにこだわっている。お前はクレアと何か因縁でもあるのか?」

グライムズはその訳を尋ねる。

「理由はただ一つ。俺の親父を殺した奴だからだ」

「クレアがお前の親父さんを殺しただと?」

「そうとも。あの娘は親父を殺した挙げ句の果てに、親父を吸血鬼化させやがった…」

ローリーは自分がクレアの首を狙っている理由を話した。








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