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「俺を相棒にしてくれ」

夜が明け、日が登り始めた頃。ローリーはその教会へと足を運んでいた。

「なるほどな…」

教会内は血でベッタリ染まり、当の神父は既に吸血鬼に殺され、吸血鬼化していた。

見習いの神父の血と肉を食らっていたその神父はローリーの存在に気付き、頭をその方へ振り向ける。

己の目の前に見える神父は凶悪な唸り声を上げている。

まるで獲物に飢えた野獣の様であった。

神父は遺体の前から離れると、瞬時にローリーに襲いかかる。

「悪く思うなよ。神父さん…」

ローリーは鞘から剣を抜き出し、神父の胸部に突き刺す。

心臓を刺された神父は悲鳴を上げる。

胸部から剣を突き刺すと同時に神父は顔面から倒れ、そのまま二度と動くことはなかった。

ローリーはしゃがんて神父の遺体を仰向けにさせる。

神父に首には銀で作られたロザリオがかけられており、

「このロザリオをいただいていくぜ。神父さん」

一言断ってから神父の首からそれをいただいて自分の首にかける。

まるで何だか盗賊行為っぽいが、別に強奪した訳ではない。

それにこのロザリオは自分の身を守ってくれるような気がした。

踵を返して教会内から出ようとした時であった。

ガタンとどこかの部屋のドアが開く音がして、ローリーは足を止めて頭をその方へ振り向ける。

どこからか一人の男性が出てきた。

小太り気味な体格で、右目に痣があり、八重歯が出ていた。見たところ吸血鬼の生き残りではなさそうだ。

「誰だあいつは?」

彼は殺された神父を目にする否や、その方へ歩み寄りしゃがんで涙を流す。

この神父に世話になっていたらしい。

ローリーは無言で彼の方へ歩み寄る。

男性はローリーの気配に気付き、頭をその方へ振り向ける。

「…おめえが神父様を殺したのかズラ?」

男性は怒りがこもった声で尋ねる。

「そうだが」

神父を殺したのは確かにローリーだ。だが、ローリーが殺したのはあくまでも吸血鬼化した神父であった。

「何だと?」

「勘違いするなよ。俺が殺したのはあくまでも吸血鬼だ。正真正銘の人間じゃねえ」

ローリーは男性に言い聞かせた。

「ところでお前は何者だ。見習いの神父か?」

男性は首を横に振る。

「俺は見習いの神父じゃねえズラ。ここの雑用係りズラ?」

男性はこの教会に住み神父達の食事作りや掃除などを行っていた雑用係りであった。

「雑用係り? じゃあ何か、お前はこの教会ただ働をさせられていたのか。ひっでぇことする神父様だな」

「違うズラ。俺は神父の器がないから雑用係りになったズラ」

「なるほど。で、お前、名前は?」

ローリーは男性に名前を尋ねる。

「俺はブリューワというズラ」

男性は己の名を言う。

「ブリューワか。俺はローリー。ただのゴロツキ女さ」

ローリーはブリューワに自分の名前を言う。

十秒ほどしてからブリューワはニヤリと笑った。

「気に入ったズラ。俺はオメエが気に入ったズラ」

突拍子のない言葉であった。

「何だって。おい、待てよ。俺とお前は出会って何分も経ってねえだろ。それにもかかわらず俺のことが気に入っただ? 一体、何を考えている?」

こいつとは出会って未だ何秒も経っていないんだぞ。にもかかわず俺のことが気に入っただと。

ローリーはブリューワの言葉にこいつは何を言っているんだ、と思ってた。

「何にも考えてはいねえズラ。だが、俺はおめえが気に入ったズラ」

実に単純な答えだった。

「ふん、そうかよ。それよりお前、これからどうするんだ?」

ローリーは素っ気なく尋ねる。

「ヤボなこと聞くなズラ。俺はお前に付いていくズラ」

ブリューワはあっさりと答える。

「俺に付いていくだと? やめな。命をみすみす投げ出すようなことするな」

ローリーは相棒を必要としていなかった。

ずっと一人で吸血鬼退治をしてきたのだから無理に相棒を作らなくともよかったのだ。

「さっきから何度も言っているように俺はおめえが気に入っているズラ。頼む、俺をおめえの相棒にしてくれズラ」

ブリューワは頭を下げて頼む。

ここまで頼まれたら断る訳にもいなかいだろう。

それにブリューワには行くところがない。

「好きにしな。だが、死んだって責任は取らないからな!」

今までは単独で行動をしていたローリーであるが、今になってブリューワという相棒を得た。

ローリーとブリューワは足を歩ませ、教会内から出ると、町を後にした。

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