魔法少女(欠)
次回、やっとこさ最終回
「やぁ」
帰り道だった。
まさにソレを終えた帰り道だった。
声をかけられて振り返るとそこにあったのは闇だった。
闇が服を着て立っているようなモノだった。
そうとしか説明しようのない、得体の知れないモノ。それが立っていた。
「恐れることはない。私は、紙芝居屋だ」
「紙芝居屋?」
「そうだよ、紙芝居屋さ!」
そういうとそれはポケットから僕が右手に着けているものと同じブレスレットを取り出した。
「これ、使ったんだ?」
紙芝居屋の顔がにやり、と笑った気がした。実際には紙芝居屋に顔なんて無かった。そこには黒い、黒い、穴のような闇が広がっているだけだった。
「使った」
それはそれに対する返事というよりは自分への確認だった。
「じゃあ、魔法の対価をもらわないとね」
そういってそれは僕に近づいてきた。
「ひいっ」
僕は逃げ出そうとしたけど、不思議な力にがんじがらめに縛られて動けなかった。
「えいっ」
紙芝居屋の頭が、僕の頭をすっぽりと覆った。すると僕の頭はぽろっと抜け落ちて、今まで闇だったものが僕になっていた。
「じゃあね、紙芝居屋さん。今日から私が風癒」
そういって闇だった風癒は僕の家に帰って行った。
そうなると当然僕は闇だったものの家に帰る必要があった。
それがここだよ。
ここには闇の商売道具がたくさん置いてあった。ブレスレットも、紙芝居舞台も、お面も、みんなここにあった。だから僕も、早いところ誰かになりたくて仕方ないんだ。
――――学園鬼譚。 鬼が障って天が欠ける。鬼障天欠の物語。