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ギガンティック・スカル 

シュン達が、ブックで位置を確認しつつ、メッセージで送られた情報地へ向かっていると―

 「レイさん」

 二人の耳に、声が届いた。

 「メグさん! 良かった!」

 「着てくれたんですね」

 「勿論だよ。助っ人も一緒」 

 「彼が…?」

 「はい。ボス戦でもたまに来てくれてる…シュンです」

 「貴方がシュンさんね。噂は聞いています。優しくて、強い人って」

 「そんなことより、他にメンバーは居ないんですか?」

 「私が囮になって逃がしました。とはいえ…失態です。暫定チームとはいえ、20名中残ったのは私を含め3名…」

 「生存者がいるだけでもマシですよ」

 「前線を行く者の内、異名持ちとしては当然ですから」

 そう言いながら、蒼色に包まれた弓に触れた。

 「流石、<蒼穹>のメグミさん、ですね」

 「注意をひきつけたまでは良かったんですけど…ね」

 メグミの足首が酷く腫れている。激しく挫いた為に、捻挫したのかもしれない。

 それでも完治までに2分から3分だろうが、戦場でその時間は命取りでしかない。

 「ご覧の通りで」

 「無茶するんだから…」

 と言って、レイは液体型回復薬、ポーションを手渡す。

 口をつけたメグミは、痛みに耐えるように顔を顰めていると、足首が黄緑色の光色に包まれ、じょじょに回復していった。

 「ありがとう。とりあえず、脱出しましょう」

 「そうですね。それが得策」

 「で、ボスってのは?」

 「…あそこに」

 巨大な骸骨が、巨大な骸馬に乗り、大きすぎる巨大な剣を持って立ちすくんでいた。

 端末を翳しデータを確認すると、ギガンティックスカルという名前の横に古城主と表示されている。

 今までのボスに比べても桁違いだ。右手に持つ剣はクレイモアよりも数倍は大きいだろう。獲物を探すように体を揺らす。心臓部位あたりに、青白く光る物質がある。もしかしたら、弱点とか、そういうものなのかもしれないが、あまりの大きさに届くはずもない。

 (さて、どうするか…)

 シュンが思案している横に、2人の男女が現れた。

 大柄で、見るからに筋肉質な短髪な男性と、小柄で小動物のような、肩口で髪をそろえた女性。

 「メグミさん…」

 泣きそうになりながら、レイピアを持った女性が答える。

 この世の終わりを見たような、そんな表情を浮かべながら。

 「どうしたんですか?」

 「…ダメなんです。トラップみたい…出られないんです…」

 「他にも出口を探してみたが…見あたらねぇ」

 酷い話だ。脱出しようにも出口がない。辛うじてマシなのは、逃げ回るには十分に広い城内。それくらい。

 「増援を呼びます。それまで時間を稼いで」

 端末を取り出し、ヘルプメッセージを送り続けるメグミを他所に、シュンは立ち上がって一歩踏み先制しようとした。

 幸い、まだ気づかれてはいない。

 辺りを見回す巨大な骸は、獲物を探すように頭蓋を左右に振る。

 「なんて…こと」

 「どうしたんですか?」

 「人数制限トラップだったのね…つまり、増援は…」

 来ない―

 それを理解した瞬間、シュンは迷わなかった。

 迷う余裕すらも、なくなった。

 「俺が囮になるから、仕掛けてくれ」

 「シュン?」

 「倒すしかないなら、犠牲は0でいこう」

 1人そう呟き、走り出そうとした時にシュンの腕を、誰かが掴む―

 「私も行く」

 振り返ると、戦乙女にも違わぬ神々しさを秘めた眼差しが、シュンを捕らえていた。

 「分かった…行こう、レイ」

 「えぇ!」

 シュンに、不思議と不安は無かった。

 心強いものが傍に居るからかもしれないし、明確に、やることが分かっているからなのかもしれない。

 (このボスを倒すだけだ)

 シュンは思考のスイッチを入れ替える。

 ここから先は、文字通りの死闘。

 生きるか死ぬかの戦い。

 やらなければやられる。

 それだけの二者択一。殺される前に、殺すしかない。

 瓦礫の山から抜け出し疾走する最中、ギガンティックスカル・デュラハンはこちらに頭蓋を向いた。眼球にあたる部位にある、鈍く光る赤い閃光がシュン達を捕らえると、両の拳を握り締め天に吼える。 

 それは死神の雄叫びか、或いはこれから始まる戦闘に心身を彷彿させる為なのか知る由は無い。

 ただ疾走するシュン達を眼に入れたまま開幕の合図といわんばかりに、巨大な骸骨が、その手に持つ刃を振り上げた。

 「ディファレクトっ!」

 シュンは振り落とされる刃を視野に入れ、とっさに叫んだスキルによってその剣線を本当に、数センチ、いや、数ミリばかり逸れ服を掠める。

 咄嗟に「レイ!」と叫んだ時にはもう彼女が動いていた。

 両手に剣を携え化物へ特攻。あまりにも巨大なその骸骨は剣を振ったまま前のめりになっており、その懐に入り込んで彼女は叫んだ。

 「フラッシュ!」

 片手剣スキルの名称であるそれは、彼女の精神に感化されてか恐ろしく早い3連撃を放つ。クリーンヒットしたはずが、僅かに傷をつけるばかりで微塵も怯みはしない。

 小賢しいと言わんばかりに腕が降られようとした時、レイは前傾姿勢となって足先をすり抜け背後へ回り込む最中「シャープシューティング」という掛け声とともに骸骨の頭部に矢が突き刺さった。

 メグミによる後方からの支援攻撃だろう。

 好機と見たシュンは、駆け抜けて振り向き様に一閃。

 膝の裏側にありったけの力を込めて叩き込む。

 (まずは、足を潰さなくてはいけない)

 身長さがありすぎて、奴が前のめりにならなければ胴体にすら届かない故の思考。それは吉と出るか、凶と出るかは、誰も知る由ではないのだがー

 「足を潰す!」

 それに走りながらコクンと頷いたレイが剣を構え、

 「霞」

 シュンの刀突撃型スキルと

 「ストライク」

 レイの片手剣斬突スキルが骸骨の足を軸に交差。ダメージは有るのだろうが、破損には至らない。

 「「ツインスパイク」」

 二人の声が重なった。

 ダークナイトの装甲すらも貫いたシンクロスキルですら、ギガンティックスカルに致命傷を与える事はできない。 

 勢いそのままに駆け抜け横目でレイを視界に居れると、向かうもこちらへと眼を宛がい視線が交わる。

 シュンは人差し指を立て横に振った。

 「横に回りこんでくれ!」

 「分かった…来るよ!」

 「っ…何とかする!」

 シュンは一瞬、苦瓜を噛むような苦悶の表情を表したが、そんなことに気をかけている余裕はなかった。横凪の剣がすぐ傍に来ている。

 スキルの多様はできない。やむ無しにそれを刀で受け止めると、シュンの体を大きな衝撃が襲う。

 缶ジュースのように空中に軽々しく上げられたまま飛ばされ、その勢いで壁に衝突。

 意識が持っていかれそうになるのを歯を食いしばって堪えるが、背中に激痛が走って思うように体が動かない。

 ヒット&ウェイを主体にしているため、否応なくも軽装な装備となる。

 それが―裏目に出た。

 胃袋が脈動し逆流する。

 口先から出たのは、赤い血。吐血。

 内臓を痛めたのかもしれない。ポーションを取り出して一気に飲み込んだ。ぼんやりと眺めている余裕など1秒もないのだ。

 体が焼けるように熱くなってくると同時に、痛みが体中を駆け巡る。急速な回復とは、言ってみれば人間の体にとって毒でしかない。必死に歯を食いしばってその痛みに耐え、

 「はっ…すーーー…」

 無理やり息を吐いて気息を整える。

 (まだ、戦える)

 シュンは、自分にそう言い聞かせる。

 (諦めてなどやるものか)

 傷付いた刀をブックに仕舞い込み、<黒刀>を取り出して、スキルを微調整。

 両足を踏ん張って、前傾姿勢のまま化物へ向かい駆ける。

 振り落とされた足を右に飛ぶように避け、僅かに傷の付いた膝裏を目標にスキルを発動。

 「燕返し」

 高速で動く体が刀を振り回し、右上段からの袈裟斬り、逆袈裟へと繋がり、横一文字の最後の一振りが打ち込まれた。刀高速3連斬スキル。

 その発生後に僅かな硬直時間。タイムロスが発生するのは覚悟の上だった。

 シュンの真横を光輝く1本の矢が通り過ぎる。その矢が突き刺さったと同時にレイが傍らから剣を交差させ膝に叩きつけると、自身に向く刃を地面と水直にした。そこに矢が命中し、微かな、本当に微かなヒビを生む。

 高度な連携。最前線をともに駆けてきた者達のチームワークが真価を発揮した。

 以心伝心しているのかと思うほど呼吸が揃っている。

 何処から出ているのか「グゥウゥッゥゥゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」と骸骨が叫びを上げ、腕を振り落とそうとした時にはもうシュンが駆けていた。

 刀を右手に左手でレイの腰を抱えて右に飛ぶ。耳元で大きな音響が駆け巡り、キーンという不快ままならないものが頭に響く中で眼にしたのは、もと居た場所が大きな穴となっている様子。

 しかし、そんなことで止まってなど居られない。足に力を込めて駆け抜けようとした―時だった。

 「加勢します!」

 女性が疾走し横を通り過ぎた。

 細剣一点集中型突撃スキル、スタブロールだろう。異常なほどの加速で膝裏を貫き、骸骨の後方へ回り込む。

 それに加算したのがもう1人の男だった。

 「フォォォォォルドォォォォォ!」

 という豪快な叫びと共に、骸骨の拳に斧がたたきつけられる。

 バックステップで俺達に合流した大柄な男が言い放った。

 「アンタ等見てたら、負けてらんねぇってな!」

 「生きて帰るぞ!」

 「あたぼうよ! 仲間の敵は討たせてもらう!!」

 「来るぞ」

 ギガンティックスカルが、横凪に剣を一振り。

 それを大柄の男が斧スキルで上空へと叩き出し、その空間へ入り込んだ俺とレイが再び攻撃を開始する。レイピアの女性も加わり、右足を軸に三角形で囲み、数秒差のタイミングで剣戟が叩き込まれる。

 「皆さん、下がって」

 その声に各々が後退し、入り込んだのはレイピアを片手にした女性。

 目標位置まで到達すると

 「スプラッシュ」

 と叫んだ。的確に、間接を痛めつけるよう4連もの突きが繰り広げられ

る。速い。一瞬で繰り広げられた攻撃は正に疾風。

 後退した女性が「あたしも何かできるはず…」という一言を漏らした。

 「十分ですよ。ただ、気は抜かないで」

 レイの言葉に「はい!」と元気に返事をした彼女は、鋭い目線を向け敵意をむき出しにした。

 ギガンティックスカルは大きく、両手で剣を握り締めると剣が発光。

 「ゴォォォォッォォオォオォォォオォォオォオォオオオオオオオ!!」

 大きな咆哮を上げ剣を振り落とす。

 「ガンズ・インパクトだ! 下がれ!!」

 斧を持つ大柄な男が言うか否か、既にシュン達は後退していた。

 しかし、その剣が振り落とされると強大な衝撃が巻き起こり、瓦礫の山が弾丸となって押し寄せる。それに抗うかのように―

 「セブンノース!」

 と声が上がった。レイピアの女性が前に出て恐ろしく速い7連突きが発動し、迫り来る礫を破壊して行く―しかし、全てを壊しきれたわけではない。

 一際大きな礫が飛んできたときによりによってスキルが止まり、

 「あっ―」

 という声の前に動いていたレイが咄嗟に庇う。直撃は免れたようだが、微かに顔が顰めている。かすったのかもしれない。

 「やーりやがったなぁー!!!」

 斧使いが右から攻め始めた。

 「二人共、後退して休んでくれ」

 「分かりました!」

 一目散に向かうと、巨大な腕によって吹き飛ばされてきた斧使いが目前に迫り、それをなんとか受け止める。

 衝撃で僅かに後ずさるが、辛うじて防御したのだろう。致命傷ではないが、左腕が『くの字』に曲がっている。骨折だ。

 「無茶すんなよ」

 「大丈夫だ! ポーション飲めばまだまだいける!」

 「それを無茶っつーんだ。回復するまで休んどけ」

 「おい、お前!」

 「なんだよ?」

 「死ぬんじゃねーぞ? 生きて一回、おめーとやりあってみてーんだ」

 「なら、尚更死ぬんじゃねーよ」

 ギガンティックスカルに向け走り始めた。後方から矢が留まることを知らず打ち付けられ、その雨の中を疾走。中距離で攻撃を避け、チャンス。を伺う。

 堂々と一対一の勝負。

 「来いよ、化物」

 その一言に答えるかのように、骸骨が巨大な拳を作り迫ってきた。後方に飛んでその攻撃を避け、着地と同時に前に駆ける。振り落とされた拳がそのまま右に振り払われるのを見て、姿勢を低く…地面と左手を接触させ倒れるように回避してやり過ごし再びの疾走。駆けながら膝の部位へ刃を叩きつけて後方へ回り込み、弧を描くように走り抜け膝裏へ水平の一撃。

 素早く刀を鞘に戻しそのまま「閃」を発動して斬り付け、後方に飛ぶと体を捻らせ、向き直った化物と向かい合う。

 「すぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁぁ」

 大きく深呼吸して、呼吸を整える。

 刹那―

 骸骨の化物は再び両の手で高らかと剣を振り掲げた。

 先ほどと同様、<ガンズ・インパクト>を放つつもりなのだろう。

 シュンは、垂直に振り落とされる剣に後退ではなく、前進を選択し駆け抜けた。

 加速した俺の体が駆け抜けると同時に振り落とされる剣が届こうとするところで、ディファレクトを発動。

 剣先が僅かに掠めるのを感じながら更に「霞」と呼称し膝の皿に斬撃を加える。

 体を捻りその裏へ目標を定めた一撃もクリーンヒットし、ヒビが僅かに広くなった。

 (いける)

 そう感じた直後、怒りに飢えた骸は後方へ飛び退き地面を揺らす。剣が赤く発光しているのを視界に入れ、瞬時に理解する。

 スキルが来る―

 横凪に振るわれる一撃。しゃがみ込んでそれを回避すると、その追撃として縦からの一閃が襲ってきた。大剣スキル<エアリアルシフト>だ。右に飛んで回避し、転がりながら立ち上がって体勢を持ち直す。

 刀を鞘に戻しながら円を書くように後ろから回り込み、左腕のなぎ払いを潜り抜けて距離を詰める。足にまで達すると同時に再び<閃>を発動。頚骨を叩きつけると同時にバックステップをして追撃に出ようとしたとき、不意に足が上がり始めた。踏み潰す気なのかもしれない。

 それを右にステップし、距離を置くと瓦礫と粉塵を撒き散らして怒号が舞う。その中を裂くように突き進むのは数本の矢。

 「シュン、一端下がって」

 レイがそう叫ぶなり、メグミが天井へ向かい弓を引いた。

 シュンがバックステップを数回。大きく距離を取っていくと

 「レインフォール!」

 その掛け声と共に、幾つもの矢が雨となって骸へと降り注ぐ。

 夥しい矢の数が降り注ぎ骸骨の体を埋め尽くすが、ダメージは通っていても大きなダメージには至らないだろう。恐らく、狙っていたのは別。

 チラ―と、俺達の方向へ目を向けたメグミさんがニコーと微笑を作り、再び天井へ弓を引く。

 「レイ・ボウ」

 いつの間にか仕組んでいたのだろう。数本の矢が天井に突き刺さり、それに追い討ちをかけるかのごとく、高速によって熱を帯びた矢が天井を突き抜け穴を作り、堪えきれなくなった天井の一部が落下。真下に居た骸骨は強大な瓦礫に打ちつけられる。

 「皆さん、呼吸を整えて。すぐに来る。来なきゃおかしいですから」

 「そうだろうね」

 「足はもうちょっとで崩せる。斧使いのーえっと」

 「リュウだ。こいつはハルカ」

 「リュウ、腕は平気か?」

 「いけるぜ。破壊特化のスキルぶっかましてやる」

 「頼む。レイとハルカは少し休んでくれ。顔にも出てる。ST切れ起きたら、取り返しがつかないから…」

 端末を確認したレイが―

 「そうだね」

 と呟く。その傍らで

 「でも、あたし―」

 まだいけるとでも言おうとしたところをリュウが先に

 「バカヤロウ。死んだら元も子もねぇ」

 そう言って促した。それは最善の判断なのかもしれない。

 「その通りだ。休んで、回復してから参戦してくれ」

 「うん、無茶はしないで」

 「はい…」

 「メグミさん、アイツの弱点ってやっぱり…」

 「そうね、多分、こことー」

 まず、胸、恐らく心臓の部位と

 「ここ」

 頭部を指差しながら、言う。

 「根拠は?」

 「胸部の結晶…多分コアね。それを狙って撃った時、手で防いだの。それと、瓦礫が堕ちてきた時に頭を庇ったから、十分に考えられます」

 「確かに…それなら十分に考えてもいいかも」

 「問題もあるわ。私の矢じゃ、コアを壊すには至らない」

 「何れにせよ、地に膝着かせることが先決か」

 「任せとけ、ぶっ壊してやる」

 「無理に攻め込まないで、無理だと思ったらすぐに引いて回復」

 シュンはコクン―と頷き

 「了解」

 とレイが声を上げた。

 化物もまた、瓦礫の中から姿を表し始めている。

 「さぁ、仕切りなおし。行くよ」

 骸骨が強大な瓦礫を持ち上げ、投げつけてきた。

 シュンは刀を仕舞い込み、走りながら―

 「観月」

 とスキルを発動。下段から抜き放たれる一閃で切断し、その間を駆け抜ける白い閃光。後方から矢が放たれ、化物を牽制する。

 (心強い)

 シュンを、心底から湧き上がってくる核心めいた思いが活力となって体を湧かせていた。

 レイの後を追うように駆け、投げつけられてくる瓦礫を切り落とし、矢がはじき返して道を切り開き前へ前へと進む。

 振りかざされ、振り落とされた刃をレイが「ディファレクト」と叫び剣先をずらすのを垣間見て一気に攻める。

 ヒビに向け右足を踏み出しながら横凪の一閃。それに加え勢いのまま回転しもう一撃。追撃とレイがそれに剣を重ね、鈍い音があたりへ響く。衝撃が伝わりきったところでレイはバックステップ。俺は横へ移動し、化物の腕を回避。怒りのままか拳を作り再び落とされた腕。レイはその拳を跳躍で交わし、足場にして、

 「はぁぁぁぁぁあぁぁっ!」 

 という掛け声と共に上へと駆け抜ける。

 (化物が意識しているのはレイだ。このチャンスを無駄にはできない)

 そう考えたシュンは、「すぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁ」と深呼吸しながら、刀を再びしまいこむ。

 意識を集中しなければならない。このようなチャンスがもう1度訪れるかどうかも分からないのだ。決めなくてはならない。

 「居合い―」

 腰を落とし、右足を踏み込む。大きな一歩で踏み出された一撃が膝裏へと打ち込まれ、それでも破壊できないと理解した上で次の一手を繋げる。

 「乱れ桜花」

 勢いまま右足を軸に回転しつつ、ベルトから引き抜いた鞘へ再び刀がしまわれ、目前に狙いが見えた瞬間刃が抜き放たれ一閃。それだけでは終わらない。鞘での追撃が後を見舞い、体が悲鳴を上げながら衝撃を押し殺して両刃での袈裟切りがヒットする。

 「どぉぉけぇぇぇぇぇ!!」

 その声にバックステップ。紙一重のところを斧が振るわれる。

 「バウンディークロー!!」

 激しい音を散らしながら骨が折れ、両膝を地面立てながら前のめりに化物が倒れ始める。両腕を前に突っ伏した状態、四つん這いの背中からレイが地面に着地、胸のコア目掛けて駆けようとした。

 「待って、レイさん! 様子が変…下がって下さい!」

 叫んだのはハルカだ。指示に従って距離を置いた所で、 

 「グォォォォオオオォォォォォッォオオオオッォォ!!!!」

 一際甲高い雄たけびが、天に向かって吼えられた。

 それは仲間を呼ぶ為のものだったのか、瓦礫に埋もれた城内の到る所からスカルウォーリアーと、スカルナイトが湧き上がってくる。ここで取り巻きの登場らしい。スカルウォーリアーは雑魚だが、スカルナイトは少々厄介な敵となってしまう。鎧と盾で弱点を防いでくる為だ。

 しかし数が多い。消耗した状態からどれほど捌ききれるか…いや、迷うことなんかない。地道に道を作りダメージを与え、コアを狙うしかない。

 が、一先ずは安全な空間を作り出すのが先決だ。後退し、全員が合流したところで骸骨の群れが俺達を囲うように迫り来る。

 万事休すか? いや、そんなことは無いだろう。

 「雑魚はこっちで捌く。行って来い!」

 リュウは斧を肩で担ぎ、轟々たる様子で骸骨の群れに睨みつけ、

 「心配しないで下さい」

 ハルカは目を爛々と輝かせる。

 「彼らもここまで着た仲間ですから…信じてくださいね」

 メグミは優しく語る。

 「けど…」

 「信じよう、シュン」

 「…わかった」

 矢を数本引き抜き、弓を引いたメグミが「こんな時に不謹慎なんですけど」と、真面目な顔をして話始めた。

 「なんです? メグさん?」

 そう答えたのはレイだ。

 「レイちゃんが、ちょっと羨ましい…」

 そういって一瞬だけ微笑みを作る。

 「さて、いきますよ…レインフォール!」

 矢の雨が前方広範囲に降り注ぎスケルトンが成す術もなく崩れ落ちていく。スカルナイトはそれを盾で防ぐが、「レイ・ボウ」とスキルを発動したメグミの矢が光となってそれを貫き、文字通り道を作り上げた。

 蒼穹の二つ名は、本当に伊達ではないらしい。 

 左右ではリュウとハルカが交戦を応戦。リュウは獅子奮迅の勢いで骸骨どもを一蹴し、ハルカも丁寧に数対と渡り合う。体力的にも皆ギリギリのはずだ…それを理解している上で、雑魚を引き受けると言った。

 その思いを無駄にはできない。

 「絶対に持ち応えてくれ」

 「あぁ。こんなところで死ぬつもりは毛頭ねーよ」

 とリュウが大声を張り上げた。

 「行くよ、シュン!」

 「あぁ!」

 ギガンティック・スカルに向かい走りだす。

 邪魔をするかのように立ちはだかるスカルナイトのロングソードが斬り付けるのを刀を使って上段へ弾き返し、レイが走りながら斬りつけ踏み台にして跳躍する。目前に、矢を逃れたスケルトンが曲刀を振り上げる中すれ違い様に首と胴を切断し、レイの一振りで胴が縦に真っ二つとなる。

 向かい来る雑魚を一掃しながら目標へ辿り着くと、ギガンティック・スカルはその巨大な剣を振り落とす。

 飛びながら空中で「ディファレクト」と叫び、向かい来る刃を左側へ逸らす中「イヤァァァァァ!」と気合を上げながら胸部へと向かい飛んだ。

 「スラッシュ!」

 片手剣斬型スキル。1本であれば2連続の斬り攻撃だが、短剣も合わせる為だろう、右2回、左2回の渾身を込めた4連斬りが炸裂する。

 胸部の骨の隙間を見事すり抜け、直撃を受けたコアは粉々になって砕け散り砂となって消えていく。だが、ギガンティック・スカルの動作は止まらない。2つのコアを破壊しなければならないのだろう。残るは頭部。 

 弱点の1つを破損した為だろうか、後方へと仰け反り始めた動作をレイは見逃さない。骨盤あたりの骨を踏み仕切り、肋骨に足を鎖骨を足場に、頭部の上へと駆け巡った。刹那「フラッシュ」が見舞われる。

 スラッシュの系統の一段階向上スキルだ。右3回、左3回の斬り攻撃が炸裂―レイは、1度ではダメだと判断したのか、2度目の「フラッシュ」が打ち込ち込んでいた際、腕が拳を作ってレイを襲う。

 ダメージが少しは通っているのか、その勢いは遅い。

 身を翻しその腕を交わしたのだろうが、片腕を痛めたのかもしれない。致命傷には到らなかったが、苦悶の表情を浮かべたまま飛び退き腰を狙って剣を叩き込む。

 「レイ、下がれ!」

 それに合わせるよう股下を掻い潜り、レイと共にギガンティック・スカルとの距離を作った。

 「ちょっと、ドジった」

 笑おうとしているのだろうが、笑えるような状況でもない。膝を動かしこちらへ向き始めた骸骨を見て、シュンは刀を構えなおす。

 大きな剣が振りかぶられ、今にも振り落とされんばかりだ。

 その時―

 光る矢が、ギガンティック・スカルの腰骨を抉る。

 1本ではない。2本・3本の矢が続けざまに打ち付けられ、腰に蓄積したダメージで骸骨が腰を折る。しかし、骸骨の動作は止まらない。

 「グォォォォォォォォオオオォォォオオオォォオオオオォォォ!」

 憤怒の叫びを漏らしながら、重力を伴って垂直に振り落とされる剣。

 その剣に対し、レイは「ディファレクト」と叫びスキルを発動させようとして…膝を落とし動かなくなった。スキルを乱発した為に体力が一気に消耗したのかもしれない。よりにもよってこんな時に…

 そんなことは微塵も構わず、レイ目掛けて剣が走る。

 (レイが死ぬ…? 笑えないな、そりゃあ笑えない冗談だ!)

 「間に合えぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!」

 この立ち位置からでは、ディファレクトの効果が薄い―

 ディファレクトは剣戟の軌道を逸らすスキルであって、受け止めることは不可能だ。そして、シュンの攻撃ではあの剣の軌道を逸らすことも難しい…

 (間に合わない―ならっ!)

 シュンは、左手で勢いよくレイを突き飛ばすと、その位置に残っていたシュンの腕が肘から刃に蝕まれ千切れ飛ぶ。

 痛い―

 冗談じゃないくらいの痛みが迸る。

 背筋を凍らせるような痛み。だが、同時にチャンスでもあった。

 (ここで、アレを使えば、間違いなく勝算はあるだろ)

 シュンは、失った左腕の痛みに耐えながら、歯を食いしばりながら―感じ取っていた。

 (もう、ヒトを殺すのも、見殺しにするのも、嫌だ―) 

 だからこそ、シュンは決意する。


 アビリティを発動させることを―

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