<二十四>空港再び
<二十四>空港再び
華子はその後、ビンさんとゴンザレスにボディガードされるように囲まれて空港まで送ってもらった。 相変わらず三人はその体格や顔つきなどから空港では目立った存在になってしまっていたが、その日の出発ロビーは特に人々でごった返していてそれを薄めてくれていた。売店で販売されている新聞の夕刊の第一面には、華子が見合いを偽装したホテルの外観の写真が載っているのが見えた。恐らくそこでの射撃沙汰が伝えられているのだろう。華子は新聞を買おうと一瞬思ったが、考えを撤回して手を引っ込めた。 今回のことは早く忘れてしまいたいし、だいいちベトナム語は華子にはさっぱりわからない。
華子は売店の奥に鉢植えの白い花を見つけた。華子が泊まったホテルの窓辺に置いてあったものと同じ花だ。『Phalaenopsis』と書いてあって、その下に懐かしい文字を見つけた。
『【コチョウラン】)』。
――胡蝶蘭だったんだ。
華子はこれを一つ買って二人に丁寧にお辞儀をした。ゴンザレスとビンさんが華子に近づいて、彼女の顔の両サイドから小さめの声で親しみを込めて言った。
「So long!」(またな!)
「元気出しなはれ! ドアホ!」
「Thanks,sir!」(ありがとう)