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<二十三>狙撃

<二十三>狙撃


 突然、季節外れのサンタクロースの格好をした男が華子の近くへ寄ってきた。眉毛まで帽子で隠しているが、その巨体を見れば華子にはゴンザレスだとすぐにわかった。


――何? またー。目立ち過ぎだっての。今、一体何月だと思ってるのよ!


 ゴンザレスはパンの入った籠を持っていた。その丸くて大きめのパンを華子に渡した。付け髭に顔が覆われていて表情まで見て取れないが、緊張している様子が伝わってきた。

 華子がパンを取ると丸いパンの周りの側面に赤いマジックの様なもので字が書いてあった。


『女性方の組織にバレた! 女性は逃げて組織に戻った。今スナイパーがホテルに入った。お前は狙撃される。すぐにこの場を離れろ。隠れてもいずれ見つかる。ともかく逃げろ!』


――ええええ!? 何ですって!


「なん? パンになんか書いてあっけんちゃ。見しぇてごらん」

(何? パンに何か書いてあるよ。見せてごらん)

 華子は慌てて側面の文字の所を回すようにしてばくばくと食べて一気に飲み込んだ。

「ちょっとトイレに行ってきます」

 華子は脱兎の如く走ってその場を立ち去った。

 ビュッ!!

 逃げる。

 逃げ出した華子の後ろ髪が銃弾の摩擦で焦げた。銃弾は薄い壁を貫通した。

「ひいっ! きゃあ!」

 ビュッ!!

 今度は鼻に一瞬、弾道の気流を感じた。

「きゃあ! きゃあ!」

 華子は柱の向こうへ飛び込み、起き上がって銃弾の発せられた辺りを伺った。そこには信じられない光景があった。ゴンザレスが一人の男の顎を蹴り上げ、それから一っ跳びするとバック宙返りでもう一人の肩に上から着地。男は仰向けに倒れ込んで頭を床に強打した。さらにもう一人、逃げる男めがけて鎖鎌くさりがまの様なものを投じて、鎌がものの見事に男の首を切った。ゴンザレスは、今の内に早く逃げろ、というように顎をしゃくって見せた。顎が裏側の通用口の方に向いていたので、華子はそこを目指しホテルを脱出することにした。


――ゴンの奴。頭、弱いけど、動きだけは〇〇七や忍者並みだわ。


 ホテルのロビーはパニック状態になった。

 華子は一度合掌して再び走り出した。通用口にはビンさんがホンダのスーパーカブに跨って待っていた。華子が後ろからビンさんの体に腕をまわすとバイクは急発進し一気に加速した。

「だから、嫌だったんだよう。二回死ぬとこだったよ。私。ゴンが居なかったらホントに今頃頭から血ぃ流してた……。怖いよう」

 華子は完全に泣き顔になっていた。

「じゃかましい! 失敗する事だってあるんや。仏様が決めるこっちゃから、しゃあないやんけ。ドアホ!」

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