<二十一>時刻到来
<二十一>時刻到来
約束の時間、遂に午後一時となってしまった。華子は焦りに焦ってうろうろとそこら中を歩き回った。 今、自分が持っているタヌキのぬいぐるみを時々見て目に焼き付けないと、だんだんとレッサーパンダがどれもタヌキに見えてきてしまう。その時華子は、遠目に一匹だけ感じの違うぬいぐるみを発見した。 三十歳前くらいの精悍な感じのする男性が手に持っている。
――やった! あれだ。間違いない。
華子は近くまで行き、タヌキのぬいぐるみをその男性の顔の前に上げて見せた。その男性はやや西欧風の顔立ちだ。自分の手に持っているぬいぐるみを見てそれから華子のぬいぐるみを見た。それから首を傾げて横を向いてしまった。
華子は念のため英語で話した。
「こんにちは。あなたのタヌキのぬいぐるみ。私のと同じね」
その男性はまた首を傾げてみせた。
――おかしいな。英語がわからないのかな。本人だったらたしか英語は出来る筈なんだけど……。
華子はもう一度繰り返した。
「あのう。ぬいぐるみが同じ……」
すると華子の言葉にかぶせるようにその男性は言った。
「ではありません。私の持っているこれは、アライグマですから」
――ぶうっ、やだ! 紛らわしいもの持つなって! てか、本当に居たよ。アライグマのぬいぐるみ持ってる大の男が……。
そして華子は、かえってゴンザレスがアライグマと間違えて目印をタヌキにしてしまって良かったと思った。この状況で、同じアライグマを持った男が居たら、恐らく必死で食い下がって貴重な時間を浪費してしまっていたかもしれない。




