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<十八>リベンジい!?

<十八>リベンジい!?


 朝になって華子は内線電話で昨日の少し英語のできるフロントマンを呼びつけた。

「どうかした?」

「あのですね。昨日浴室のドアノブが取れてしまったのよ。心棒だけ残ってにっちもさっちもいかなくなったのよ」

「そうですか。それは大変でした」

「大変でした? あのね。ノブが取れてどうやって内側から開けるのよ。ずっとあなたが来るまで待ってなきゃならなかったのよ!」

「でも大丈夫だった。だからあなた今部屋に居る」

「冗談じゃないわよ! 嘘だと言うのね。ちっとも大袈裟になんか言ってないのよ! ノブの所見てみなさいよ。ほら!」

 フロントマンはへらへらしながら浴室を覗いた。


――今だ!


 華子はフロントマンの背中を勢いよく押して浴室の中に入れ、バタンとドアを閉じた。

「何する!? 乱暴ダメ!」

 華子はベッドに腰掛けて暫く様子を伺った。その内浴室の中からフロントマンの悲鳴に近い声がしてきた。ドアを内側からドンドンと激しく叩いている。

「ひいいい! 助けて! 助けて! 開かない。無理。わかった。早く、ひいいい!」

 華子は意地悪をして物音を潜めた。

「どこ行った!? 置いて行くな! あなたまだ勘定してない。去るのダメ! 私出られない。早く、早く、ひいいい!」

 かちゃっ。

 華子は部屋から浴室のドアを少しだけ開けて覗き込んだ。フロントマンは必死でドアの隙間に手を挟んできた。

 華子の方が当然力は弱いが、押し合い引き合いになるとドアノブのある方が、力が集中してドアに伝わり圧倒的に有利だ。

「どうお? 気分は。嘘じゃないでしょう? これでもまだ『大丈夫』って言う?」

「わかった! わかった! 早く出して!」

 華子は本当に意地悪である。フロントマンの手をつねって指を引っ込めた隙に、再びドアを閉めて言った。

「何がわかったのぅ? 大丈夫じゃない、あなたは正しい、私が悪い、って言いなさいよ」

「ひいいい。大丈夫ない、大丈夫ない、あなた正しい、私悪い!」

「ついでにねぇ。あなたは美しい、も言えるかしら」

「ひいいい。あなたうつきしい、あなたうつきしい!」

「うつきしいじゃない! 美しいよ! あとねホテル代半分にして欲しいのよね」

「わかった、わかった、あなたうつくしい、ホテル代半分、半分」

 華子はホテルマンをようやく開放した。

 ホテルマンは、はあはあと息をつきながら言った。

「はあ、はあ。でもあなた。どうして出られた? 不思議ね」

 華子はそう言われて改めて不思議に思った。


――あの時、部屋からノブを回してくれた人は一体誰? 蘭の『花の精』だったりしてね……。

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