<九>結果は?
<九>結果は?
指定の二十四時間内にマンションを出入りした人は、『出』と『入』を各々一人ずつ数えても延べ五十六人だった。女性はその内、約半数の二十七人だ。住戸数が六十程度のマンションで丸一日の出入り数としてはかなり少ない方だ。居住用のマンションには違いないが、ワンルームのセカンドハウスとしての利用者・所有者が殆どなのかもしれない。
華子は女性の出入りする場面を全て静止画にして指定されたメールのアドレスへ添付し送信した。その中には髪型や背格好が相談者の捜している女性に似通っている人も何名か含まれていたが、実物を知っている華子にとって、いずれも捜している女性とは別人であるということは容易に判別出来た。
――よしこさん。あなたが男の人から金を騙し取るなんて、一体どうしちゃったの? あんなに健気に働いていたあなたが……。一体何があなたをそうさせてしまったの? 私は、あなたが弱々しくも頑張る姿を見て、時に気持ちの折れそうな自分に鞭打ってきたのよ。それが、一体……。
華子の頬に一筋の涙が伝った。施設に居た時には、よしこさんと殆ど会話らしい会話をしたことはない。友人でもなければ知り合いにも当たらない。だから、その涙は悲しみとは違う。しかし華子は何か大切なものを失いかけて、心にぽっかりと大きな穴があいてしまった様な想いに駆られた。よしこさんという女性に寄せる想いが何であるのか、華子は自分の心にふと疑問を投げかけてみた。それはよしこさん自身の問題なのか、はたまた華子自身の問題なのか……。考えれば考える程、疑問は拡がっていった。