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その3

―ゴロゴロゴロ


 また、強烈な音と共に先ほどより早いスピードで光が走りました。2階の窓を見ていた私には、稲妻が走ったように見えました。

「あ! 居る! 見えた!」

「もうやだ!」

 今度は2人が叫びました。

「いたよね! A君だよね?」

「私も見えた! A君じゃないよ! でも、男の子だった! Mちゃん(私です)も見えたでしょ?」

「えー? 見えないよ。誰もいないもん……」

 KちゃんとYちゃんは「ホラ!」といって同じ所を指差しますが、私には激しい雨が打ち付ける窓ガラスと、ピカピカと光る空しか見えません。

しかし、2人はしっかりとさっきYちゃんが指差した場所を見つめているのです。

「A君じゃないよ。だけど誰? っていうか何?」

「わかんないよ! もうやだ!」

 Yちゃんは「もうやだ」を繰り返し、Kちゃんは「ホラ!」と先ほどと同じ所を指差し、必死に教えてくれます。しかし、私には何も見えませんでした。

 ここにきて私はガッカリしていました。Yちゃんだけなら気のせいですが、Kちゃんもあれだけ必死となると本当のような気がします。本当に誰かが居るのであれば私にも見えますし、見えないということは“幽霊”なのでしょう。“幽霊”ということになれば、確実に私に霊感と言うものが備わっていないということになり、見ることは不可能……

 私は2人に気付かれないよう「はあ」とため息をつきました。私は結構“怖い話”というものが好きだったので、ピアノの音の時にはドキドキしていました。しかし、見えないとなると怖いも何もありません。ただただ体育館の窓を見ていても、残念に過ぎません。

「私、先生呼んでくる!」

 私が1人ため息をついていると、Kちゃんが言うが早いか、すぐに体育館の外へ駆けて行きました。Yちゃんは相変わらず「どうしよう」やら「もうやだ」やら言っていましたので、「大丈夫だよ」といって背中をさすってていました。窓を見上げれば、やはり暗い空と激しい雨しか見えませんでした。


 そこで、ふと思ったのですが、なぜみんな来ないのでしょう。私達がいくら早く来たとは言え、適当な掃除だったとはいえ、一応は掃き掃除も始めていましたし、ステージを見たりもしましたので、結構時間がたっているはずです。しかし、同じ班の男子達。同じ掃除場所の下級生、上級生達。掃除監督の先生。誰も来ません。それに、まだ電気も付きません。学校という公共の場所で停電してもそんなに電気が元に戻らないことはあるのでしょうか。すぐ外の校庭を照らす外灯は付いているのに、体育館だけ付かないなんてあるのでしょうか。それに、私達が来てからスピーカーからはピアノの音以外流れてきません。私達の学校では、掃除の時間はクラッシックの音楽がランダムで流れていたはずです。チャイムが鳴ってからの30分は掃除の時間です。私達がいくら早かったとはいえ、掃除の時間の音楽は鳴ったでしょうか……


 そう思うと急に怖くなりました。

 さっきまで残念がっていた自分が嘘のように寒気すらします。

 Kちゃんはまだ来ません。Yちゃんが泣きそうなのも納得です。



――ゴロゴロ


 また、すさまじい音と共に光が走りました。反射的に窓を見上げた私達は2人で息をのみました。

 私にも見えたのです。

 髪の短い男の子。私にはそう見えました。A君に似た知らない子。



――ガラガラ

「Mちゃん! Yちゃん!」

 いきなりの声に驚き反射的に見れば、鉄の扉を開けてKちゃんが先生を連れて戻ってきた所でした。そこには、A君を含む班の男子もいます。安堵と共に、パッと周りが明るくなりました。電気がついたのです。

 KちゃんとA君達が私達の方へ走ってきました。

「どこ? どこにいたんだよ幽霊!」

「あそこ! 通路の真ん中辺! いたの!」

 男子達にはKちゃんが伝えたようです。「そこにいた!」と言い張るKちゃんと「マジ?」「居ないじゃんか」という男子を前にYちゃんも落ち着きを取り戻し、「居た」「居ない」と言いあいのようになっていました。私はと言うと気付かないうちに緊張していたようで、手に汗をかいていました。気にかかり見上げると、そこには先ほどより落ち着いた雨が打ち付ける窓ガラスと、暗い空しか見えませんでした。


 そんな事をしていると、他の掃除の人も来ました。それでも私達3人の興奮はさめやらず、呆れた先生が「掃除の邪魔だから、マットでやすんでていいぞ」と言われてしまいました。その間の30分間、いつの間にかなっている掃除の時間の音楽を聴きながら、私達3人が体育館に着いてからの話を飽きずしていました。

「本当に見えたよね?」

「男の子だったね」

「ピアノも何だったの?」

 疑問はつきませんでしたし、正しい答えは見つかりませんでした。時計を見れば、まだまだ5時間目の授業までは時間があります。ピアノを見れば、先ほど先生が片付けてしまったので、蓋も閉まっているし、黒い布で覆われています。スピーカーを見れば、普通に音楽が流れています。窓を見上げれば、さっきの豪雨が何だったのかと思うぐらい落ち着いた普通の雨になっていました。


 その日以降も体育館掃除はしましたが、一度もそんなことは起こりませんでした。他の班や、他のクラスの子にも聞いてみましたが、そんなことは起こったことがないということでした。そもそも、私達の学校には“学校の七不思議”などの定番の怖い話はなく、幽霊騒ぎも6年間で1度きりでした。それも、目撃者は小学3年生の女の子が3人だけ。噂もそれほど広まらず、1ヶ月後には私達ですら「そんな事あったよね」と言うぐらいに、落ち着いてしまいました。


 今思えば、私が見た“男の子”は集団心理というヤツで「見えた」のではなく、「皆が見えるというから見えたと思い込んだ」に過ぎないのかもしれません。


 しかし、不思議なことは確かにありました。校舎内にいた友達に聞きましたが、停電はなかったというのです。もちろん、体育館のみが停電したとも考えられますが、そんなことが偶然あるものでしょうか。

 それに、ピアノの音。もちろん、放送としてそんな放送を全校でしているわけがなく、体育館にいた私達だけが効いた音でした。しかし、ピアノの音は3人が同時に聞きました。私達の誰かが「ピアノ」だとも何にも言っていないのに、皆でステージ上のグランドピアノだと思いました。あの音は何だったのでしょうか。

 そしてもう1つ。一番の疑問なのですが、なぜ他の人たちは誰も来なかったのでしょうか。私達はチャイムが鳴ってから掃除場所へ移動します。もちろん他の人たちも同じでしょう。いくら早く着いたとは言っても、掃除を始めればいつもなら何人かは来ます。私達がピアノを聞いたり、男の子を見たりしているのに、誰も来なかったのです。なぜ、その時だけ誰も来なかったのか……

 それに関連して思うことは、先生達が駆けつけてくれた後、時計を見上げると、私達が体育館に移動する前に聞いたチャイムから何分も立っていませんでした。まるで時間が止まっていたように……



 疑問はつきません。成人式を迎えた今となっては、ただの美化された思い出です。

 今となっては、KちゃんもYちゃんも音信不通になり、事実は歪み、都合良く書き換えられているかもしれません。


 そういえば、Kちゃんが先生を呼びに行ったときに開けて行った扉はいつしまったのでしょうか……


拙い文章に最後までお付き合いいただきありがとうございました。

わかりにくい点、イライラする点、意味が解らない点など多々あると思いますが、

次回、何かありましたら、また投稿させていただきたいと思っております。

宜しくお願いします。

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