エレキの跡
俺はバンドをやっていた。
でもそれも、3年前に解散してしまった。いいバンドで、俺も続けたかったのだが、7年もやってヒットはしなかった。まあコア層には人気があったんだが、もうそろそろ区切りをつけよう、って意味での解散だった。 それと同時に持っていたギターをすべて売ったり、あげたりしてもうこの家にはない。 でも、先日普段あまり使わない部屋に売りさばいたはずのエレキギターがあったのだ。これはこのバンドを始める前から使っているものだった。ただ、たしかにバンドをやめた時、「これがあっては前には進めない」という意味で売りさばいたんだ。 しょっちゅうライブに来てくれていた男に売ったのだった。 そこで不思議に思った俺は、そのエレキギターが本当に売られたのか、記憶違いじゃないのかを確かめるために、売ったときに契約しているはずの紙を探した。すると、たしかに古い財布の中にあったのだ。でもそこには、不可解な記述があった。
---------契約書--------
2023年 10月7日
このエレキギターを2万円で買うことを約束する。
※しかし、契約から3年経った頃に主の元へ必ず返されます。
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俺にはこんな記述をした覚えがない。それに俺は返品を望んだことなんて一度もない。 証拠に、他の契約書には金額と日付だけしか記載されていない。当時のことだから記憶が多少曖昧だが、3年前になにが起こったのかは不明だ。 そういえば、今日は2026年の10月7日だった。 一週間後、不思議に思った俺は当時の取引をした高橋との連絡を3年ぶりにしてみることにした。すると、音信不通で、俺は携帯電話を変えたんだなと思い、バンドを一緒に組んでいた原口と山崎にそのことを話した。この二人とはまだ連絡が頻繁につながっていたのだ。 そこで電話してみると、山崎がこんなことを言う。
山崎:「ああ、高橋ねえ。去年の夏に交通事故で亡くなったんだってよ。」
俺は本当かどうか、原口にも確かめると、
原口:「知らなかったの?気の毒だよな。あのバンドも解散ライブを来年1月にやるんだってよ。伸び盛りだったのにな。できれば久しぶりに一緒に行かないか?」
俺は行くことにした。 そして2027年の1月22日、俺はライブへ行った。久しぶりに2人に会って、思い出話を中心にした。
でも、なぜか最大の謎、エレキギターの件はスッポリ忘れてしまった。
そして家に帰って怖くてしまっておいたエレキギターを探すと、そのエレキギターは消えていた。 恐れをなして山崎と原口に聞いてみる。
「おい山崎。俺が一番最初に触ったエレキギター、売り払っただろう?解散の時。でも、売り払ったときのエレキがまだ家に....」
山崎:「おい!しっかりしろよ。酔っぱらったんじゃないのか?お前。あのエレキは忘れられないっていって、お前がずっと持ってたろ。」
「いやっ...」
電話が切れる。 同様に原口にも聞いたが、
原口:「お前はあのエレキを手放せないっていって、欲しがってた高橋の申し出を断ったんだろ。覚えてないのか?」 と言われた。
証拠に、と契約書を探す。でも、一向に見つからない。まさか処分にとも思ったが、今日の朝、この机に置いたはずだ。ギターと一緒に。でも、そこにはもうない。 他の関係者に聞いても取引したという話は一切出てこなかった。




