6.脱出したい世界
リアルな世界というのは時にすごく怖くて、嫌になる。巻き戻しも、やり直しもできない世界で、上手く生きていくのはすごく難しい。だから、みんなこうやって画面上で何かを伝えたくて必死なんだ、と思う。
きっと
画面ごしに
60億人分の1人を
探している
余計なことを
言わなくてもいいことを
誰かに伝えたくて
それは恐らく
わかってほしかったことで
こぼしていく
こぼれていく
面倒くさいことは一切ないから
だって
嫌になったら電源スイッチ押せば
すんでしまうから
安心して
言葉や気持ちを
書き綴る
今日あったあんなことやこんなこと
伝える人は未だに三次元じゃ見つからなくて
画面ごしに
60億人分の1人を
探している
嬉しかったことを
悲しかったことを
誰かに伝えたくて
それは恐らく
わかってほしかったことで
情けなくも
暗闇の中
小さな箱の前で
涙流したりする
怖いんだもの
リアルというのは
人は生まれる
人は死ぬ
人は傷つき
人は悲しむ
たった一人じゃないことを
生まれたときから
あるいは
生きていると
他人からそれを知り
愛に飢え
寂しくなる
そのうち
思った
嘘でもいいと
ずっと
そばにいてくれるなら
リアルでなくてもいいと
誰も傷つけずに
誰も傷つくことを見ずにいられるなら
まやかしでもいいと
臆病者の唄だな
それも知っているよ