53.それも私、目をそむけていただけで
という夢を見ました苦笑
起きた時は汗だくでしたけど
いつからかさ
四角くて固い部屋に
閉じ込められたみたい
「だって、安全で安心でしょう」
私はその意味もわからなくて
だけど
隣にいた君が笑うなら
私も嬉しくて
まぁいいかと笑った
それからしばらく経って
私はとても息が苦しくなった
埋もれてく追われてる
黒い陰
振り返れば足を捕まれる
「安心だって言ったじゃない。安全だって言ったじゃない。」
大人は耳を塞ぐ
私は君に言う
今から逃げよう、一緒に
君は首をふって笑ってた
どうして?
どうして?
一緒じゃなきゃ意味がないのよ
それでも
君は首をふって笑ってた
私の背中をぐいぐい押して
扉の前まで連れて行く
手を振る君と私
仕方ない、と
言い聞かせて
疑問を左の
恐怖を右のポケットにいれて
勇気と思い出を
リュックにいれて背負って
飛び出す
飛び出す
幸せって何
愛してるって何
大人になるって何
希望って何
生きるって何
答えがわかったら
君に教えてあげよう
手をふった優しい君に
君が笑えるように
私も笑えるように
そして
できたら
母と父も笑えるように
両手いっぱいに
大切なものを
抱きしめられるように
私は最後に振り返って
四角の部屋の扉が閉まるのを見た
気がつくと
私も子供ではなくなっていて
大人になっていた
逃げたはずの
四角くて固い部屋の扉が目の前に
手は勝手に
ドアノブを回そうとする
「いやだ。いやだ。行きたくないよ。」
すると向こうから声がする
「大丈夫、何の心配もないよ。」
声はとても優しいのに
その姿は見せてくれない
「いやだ。いやだ。それならそちらから姿を見せてよ。」
扉は開いた
黒い塊
赤く腫れた瞳から
涙を流して
私に問う
「何で来てくれないの。大丈夫。みんないるよ。安心だよ、安全だよ。」
黒くのびたその手は私を掴む
冷たくて冷たくて
痛くて悲しくて
悲鳴をあげた腕
あぁ、そうか
私は笑う
そういうことか
「私は行かないよ。こちらで待ってるよ。ずっと待ってる。」
私は黒い腕から
恐らく手だと思われるところを
握って座った
手を繋ごう
大丈夫
嘘じゃないよ
ごめんね
怖いと思ってたのは私だった
私は私から逃げていて
君も私で
私が大嫌いになった私で
ずっと私のかわりに
そこにいてくれた
幼くて優しい私
私の自由のかわりに
不自由になってくれた私
ありがとう
ありがとう
黒い塊から少しずつ
黒い靄は消えて
あの日まで一緒にいた私が
そこに現れる
扉の間で
私は出会う
手を繋いで
触れて
思いだす
再会は
きっと始まり
私と私が
何かを見つけた証拠