17.黄色い帽子、黄色い傘
黄色い帽子と黄色い傘を持っていました。みんな、そうでした。ランドセルの色は違くても帽子と傘は同じ色でした。でも、だんだんみんな好きな色ができて、大人になって、黄色い帽子と黄色い傘はどこかに忘れてきてしまうのです。近かったのに遠くなる。
それは誰かと出会って恋に落ちた時も同じで。近づいて近づいて少しずつ、くっついたと思ったら、同じだと思ったら、いつのまにか遠のいて遠のいて少しずつ。距離感を忘れてきてしまうのです。
いらないわけじゃないのに、忘れたわけではないのに。
幼き日
かぶった黄色い帽子
おそろいの黄色い傘
今はどこにしまってあるんだっけ
あの時は
雨の日さえ
なんだか
楽しかったような気もするし
あの時から
雨の日は
なんだか
胸が苦しかったような気もする
遠からずそれでも近くはない
大人になって
黄色い帽子も忘れて
黄色い傘も置き忘れてきた
今は埃をかぶって錆ついてるだろう
君と出会った
いつからだろう近づいて
いつからだろう遠のいた
今は30cmものさしで測れるくらいだろうか
君との距離
指で触れたら近づいたのに
それを絡めたら遠のいた
今は嘘っぽくなって我慢大会みたいで
遠からずそれでも近くはない
幸せの意味を見いだせない
なんて
あの日の僕はそんなことを
考えるとも思わなかったな
おやつがあると嬉しかった
昼休みが好きだった
カラスが鳴くまではしゃいでた
それだけで幸せだったのに
黄色い帽子は飛んでいく
ゴムはのびきって
黄色い傘は飛んでいく
こうもり傘になって