01話 誰にも気づかれない俺が、叫びと共に異世界へと転送される
俺の名前は【佐藤 蓮】普通の高校二年生だ。
学校でいつも空気のような存在で、友達もいない。
小・中学校の頃は、バカみたいに笑って、毎日ゲームの話とかしてさ。
放課後に公園で集まって、暗くなるまで遊んだりしてた。
でも、高校に入ってから、何かが変わった。
……誰とも話さない。俺がいても、誰も気づかない。
教室にいるのに、まるで無人島。
俺……このまま、透明人間みたいに三年間過ごすのか……?
まぁ……どうでもいいんだけどな。どうせ俺なんか、変われっこないし。…………でももし、もう一度高校生活を一からやり直せるとしたらなにか変わっていたのだろうか……?
………ありえないか………そんなこと…………………でも…!!
「ああああああぁぁーーーッ!!やり直したい~~~~!!!」
俺が叫んだその時――。
《転送します。》
俺に、誰かが呼びかけてきた。
「え? なんて言っ――」
言葉を言いかけたその瞬間、
辺りが、突如としてまぶしい青い光に包まれた。
「うっ……!!?? な……何だ!?」
目を閉じても焼きつくような光。
思わず目を覆った俺の耳元で、またあの機械のような声が響く。
《確認しました。佐藤 蓮………転送条件――"高校生活の強い再構築欲求"、確認》
《転送適格》
「は、はいっ!? なに言って――」
全身を押し潰すような圧力。
内臓が逆流するような感覚に襲われ、意識がグラグラと揺れ始めた。
《転送を開始します。》
「てん……送? な、何の話だよっ! 俺はただ――!」
……そう叫んだつもりだったが、
声はもう、空気に吸い込まれていた。
そして次の瞬間、
俺の足元が、崩れ落ちた。
――落ちる。
どこまでも、落ちていく。
まるで夢の中のような、果てしない暗闇。
(……やり直したいって、言っただけなのに……)
目の前に、真っ白な光の点が浮かんだ。
その光はどんどん広がって――
俺の体ごと、呑み込んでいった。
ん……あれ…………俺は…………
「あ……??」
目を開けると、そこには――何もない空間が、ただ永遠に広がっていた。
白。
全方向、真っ白な空間。
上も下も、奥行きも境界もない。まるで世界の端っこに取り残されたような感覚。
(夢……か? いや、これは……)
何もない――と思った、そのとき。
視界の端に、イス。
そして、そのイスに座っている……人間らしき影。
「人!!??」
思わず声を上げた俺に、その人物がゆっくりと顔を向ける。
それは――黒いローブを身にまとった、金髪の男だった。
目元はよく見えない。けれど、何か……ただならぬ雰囲気をまとっている。
「ようこそ、選ばれし者よ」
「は……?」
「ここは“空間の狭間”。お前の世界と、新たな世界を繋ぐ、橋のような場所だ」
(な、何言ってんだこの人……?)
「………佐藤 蓮。お前は、自ら望んだな?」
「え……?」
「――“やり直したい”と」
ドクン、と心臓が高鳴る。
(……聞かれてた? まさか、あの叫び……?)
「選択肢は一つ。お前には、新たな役目を与える」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! そもそもここってどこだよ!? なんなんだよアンタはっ!!」
「俺の名は【林川 準】だ…」
「そ、そんなの聞いてない!俺はただ、高校生活をやり直したいって叫んだだけで……」
だが、林川の表情は変わらず冷静だった。
「その願いは叶った。だが、それと引き換えに“役目”を背負うことになる」
「役目……?」
「そうだ。お前の世界は今、危機に瀕している。異界からの侵略者“影獣”が迫っているのだ」
影獣――聞いたこともない言葉に、身体が震えた。
「お前の使命は、この世界を救うために“戦うこと”だ」
「俺が……?」
「お前には、特別な力が与えられる。スキルを覚醒させ、影獣と戦う戦士になるのだ」
白い空間の中で、林川が手をかざすと、俺の手に眩い光が降り注いだ。
熱く、しかし心地よい感覚が全身を駆け巡る。
「これが……スキル?」
「その通りだ。さあ、進むのだ。新たな世界が待っている」
そう言って林川は片手を差し出した。
俺は震える手を差し出し、彼と固く握手を交わした。
「よし……やるしかねぇ!」
……こうして、俺の新たな異世界での戦いが始まった。
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