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いばらの冠と、歩くいえすの背中がまぶしすぎた
いえすは、兵士たちに囲まれて、
頭にトゲトゲの冠をかぶせられてた。
乾いた枝でできたそれは、ただの飾りじゃなくて、
皮膚を突き刺して、血がにじんでた。
それでも、いえすは黙ってた。
痛みをこらえてるっていうより、
痛みすら、受け入れてるような顔だった。
そして、でっかい木の十字架を背負わされた。
見てるだけで重そうだった。
肩に食い込んで、足元はふらついてた。
でも、背筋はまっすぐだった。
誰かに支えられてるわけでもないのに、
まるで、何かを守るように、何かを背負うように、
一歩一歩、前に進んでた。
道の両側には、たくさんの人がいた。
誰も助けなかった。
誰も声をかけなかった。
おれも、できなかった。
ただ、見てることしかできなかった。
声を出すことも、手を伸ばすこともできなかった。
その背中が、遠ざかっていくたびに、
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられるようだった。




