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深夜に祈るいえすが尊すぎた
そのあと、いえすはひとりで外に出てった。
たぶん、祈りに行ったんだと思う。
おれたちは……まあ、寝てた。ごめん。
でも、目が覚めたら、いえすがまだ祈っててさ。
月明かりの下で、白い服がふわって揺れてて、
なんかもう、神々しいっていうか、尊いっていうか、
近づいちゃいけないような、でも目を逸らせないような、そんな感じだった。
いえすは、地面にひざをついて、
両手を組んで、空を見上げて、
何かを、誰かに、必死に語りかけてた。
「……できれば、こんなこと起きなきゃいいのに。でも、やるしかないんだよね」
って、ぽつりとつぶやいたその声が、
風に乗って、葉のざわめきにまぎれて、
夜の闇に、静かに溶けていった。
その背中が、あまりにも小さくて、
でも、あまりにも強くて――
おれ、何も言えなかった。




