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第1話 私にだけ敬語を使うタイヨウ君

 切れ長で涼し気な目。色気のある泣きぼくろ。

 あまりに顔が整えすぎて、何か考え込むと、太陽というより氷の印象を与える。……らしい。

 学校の制服であるブレザーを着て、廊下の柱に寄り掛かっているだけで、モデルの撮影場所では? と騒がれてしまうほどだ。

 

「あ、ミヅキさん」


 ただ、私にとっては、割と表情がコロコロ変わる、大切な幼馴染。

 今だって、私が駆け寄っただけで、一瞬で笑顔を浮かべてくれる。皆とちがう態度を向けてくれるのは、特別な感情を向けてくれているんだって思うと嬉しい。……嬉しいんだけど。


「さきほどイオリさんから連絡が来たのですが、今日、帰る前に卵とゴミ袋を買ってきてほしいんだそうです」

「え、何でお父さん、私じゃなくてタイヨウ君に連絡してるの?」

「いえ、ミヅキさんにも送ったとは言っていましたよ」

 

 そう言われてアプリを開くと、確かにお父さんから連絡が来ていた。たまにあるよね、謎の通知バグ。


「ごめん、通知がバグってたみたい」

「いいえ。良かったら、帰りに寄り道しませんか」


 タイヨウくんはポケットからスマホを取り出す。スマホ画面に映っていたのはチェーン店である喫茶店のクーポン。


「季節限定のクーポンが当たったので」

「え、いいの⁉」


 季節限定って言ったら、クリームたくさんのホワイトモカじゃん! ああでも、ストロベリーメリークリームケーキも捨てがたい……。クリスマスに差し掛かる12月って、なんでこんなにおいしそうなメニューが出るんだろう。

 ああどれにしようかなあ、と悩んでいた時。


「お、タイヨウ。学食行こうぜ」


 タイヨウ君のクラスメイトであるナツヒコ君が声を掛けた。

 すると、タイヨウ君は、


「ああ。今すぐ行く」


 と、答えた。

 思わず私は固まってしまう。

 

「それじゃあ、ミヅキさん。また後で」

「あ、うん……」


 小さく手を振って、二人を見送る。

 そして私は、梅干しを食べたかのごとく、口をキュッとすぼめた。

 



 そう。なぜかタイヨウ君は、私にだけ敬語なのだ。

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