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始まりの日•••フラワーナイト・リリィ誕生の日③

 俺はあの日以降他人と関わらなくなった。誰かと親しくなるとその分、別れが辛くなりそれが妹の死に際と重なってしまいそうになるからだ。

 だから俺は出来るだけ人と関わらずに生きようと決めていた。

 高校入学初日に、まさか優里香と再会するとは思っても見なかった。優里香は妹とも仲が良く、妹も優里香に懐いていた。側から見れば二人はまるで仲の良い姉妹のように見えていたと思う。

 そんな優里香に妹の死を告げるのが、一番効果的に俺から離れていくきっかけになると思った。

 俺はこの時、そう思っていた。





「おはよう千晶。それと昨日はごめんなさい」


 翌日、通学途中の道端で優里香は何事もなかったかのように俺に話しかけてきた。まあ昨日の事を謝っているから何事もない訳ではないのだが…………


「………俺の話聞いていなかったのか?」


 だから、俺は突き放すようのな言い方をし、優里香を置いてそのまま歩き出す。


「聞いてたよ。だから最初に謝ったじゃん」


 優里香はそんなのどこ吹く風と言わんばかりに、俺の後をついてくる。

 正直俺は、優里香が何を考えているか分からなった。いい加減ウンザリだ。


「だったら俺の事は放っておいてくれ!俺はもうお前と関わり…………」


「だったら……何でそんな悲しそうな顔で言うの?」


 俺は振り返り優里香に怒鳴りつけると、優里香は真っ直ぐ俺の顔を見ながら真顔で言い返す。


「はぁ?俺は別に悲しくなんて…………」


 俺が言い終わるよりも先に優里香は俺を抱きしてきた。

 幸い、周りに人は居なかったが正直クラスの誰かに見られたら絶対に何か言われると思う。

 俺は恥ずかしさと戸惑いから優里香を引き剥がそうとする。


「お、おい白石!」 


「千晶、自分の気持ちに嘘はつかないで。悲しかったり苦しかったりするのを我慢すると、いつか心が壊れちゃうから」 


 そう言って、優里香は俺から離れこちらに振り返る。顔を見ると先程までの真剣な顔とは打って変わっていつもの表情だった。


「私ね……もう一度千晶と仲良くなりたい。千晶がどう思っているかは分からないけど……私、諦めないから」


 言い終わると、優里香はさっさと歩き出してしまう。


「何なんだよアイツ…………人の気も知らないで」


 俺は学校に向けて歩き出そうとする。すると、自分の目元が潤んでいる事に気付く。

 どうしようもない感情が自分の中から溢れ、俺は走り出していた。


「…………………うッ、うわぁァァァァァァァァ!」


 俺はそのまま誰もいない公園に移動し、誰にも憚る事なく泣き続けた。

 その日の授業は午後からの参加となった。






 俺が泣き腫らした日から数日が経った。

 あの日、午後から授業に参加した俺は教師にめちゃくちゃ怒られるかと思ったが、どうやら優里香が何かしらの事情を伝えてくれたのか、心配されこそすれ怒られる事はなかった。


「おはよう千晶」


 優里香はあの日以降も相変わらず俺に話しかけてくる。昔からそうだったが優里香は一度決めたら絶対に譲らない所がある。


「…………おはよう」


 取り敢えず挨拶を返す。すると優里香は嬉しそうな顔をしながらクラスメイトの女子の元へ向かって行く。何やら話しているようだが俺のいる位置からは聞こえないし、興味も無い。

 あの日以降、優里香に対する俺の態度は少し変わったと思う。別にアイツの言葉に救われたからとか、そう言うのではないけど…………


「オッス。天風」


「…………おう」


 俺が一人考えに耽っていると、クラスの男子が俺に挨拶をしてきた。優里香がやたらと話しかけてくるせいか、クラスメイトの何人かが、俺に話しかけるようになった。

 今話しかけているのはその筆頭で、ほぼ毎日俺に話しかけてくる奇特な奴だ。



「今日も相変わらずだな。これから楽しい高校生活が始まるんだから、もう少し覇気ってもんを出してもいいと思うんだけどな〜」


 だが、こう言うノリは嫌いだ。妹の死を乗り越えるにはまだ時間が必要だが、俺はクラスに馴染めてはいるのかな?正直何とも言えない。


「おい金山!あまり天風を困らせるなよ!」


 俺の反応を見兼ねてか、別の男子が止めに入る。


「すまんな天風。コイツとは同中なんだけど決して悪い奴じゃないんだ」


「いや……別に気にしていない」


 俺がそう言うと、その男子はホッとしたように胸を撫で下ろす。同中って事は友達か何かだろうか?


「ところでよ!天風って白石とはどう言う関係なんだ?カレカノとか?」


 すると先程怒られた男子…………先程の男子が言うには金山と言う名前らしい………がまた質問してきた。


「ただの幼馴染。小学生までは一緒だったけど中学は別々」


「てっことは俺らと同じってわけか」


 そう言って金山は先程注意してに来た男子を指差す。どうだろうか?正直よくわからない。男と女だからだろうか?それとも…………


「金山!」


 いい加減しつこいと感じたのか、止めに入っていた男子生徒が強めに声を上げる。


「わったよ!またな天風」


 そう言って二人は俺の前から去っていった。すると一気に俺の周りは静かになる。

 …………ホームルームまでやる事ないし寝るか。

 俺は机に突っ伏して寝の体勢に入る。


「…………それ本当かよ」


「あぁ…………最近ニュースとかで取り上げられてるからな」


「見た事の無い怪物…………都市伝説の類とかじゃないのか?」


 すると俺の耳にクラスメイトの話し声が聞こえて来た。正直どうでもいいと思い、そんなクラスの話声をバックに、俺はホームルームが始まるまで眠りにつくのだった。


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