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アプレンティス・リリィ③

 薄暗い夜の空を一匹のカラスが飛んでいる。

 だか、そのカラスは普通のカラスとは違い、羽根を休める事なく一定のスピードで、とある場所を目指していた。

 やがて目的地に到着したのか、カラスは地面に降り立つ。

 そこは古びた洋館で、カラスが降り立つと正面のドアがひとりでに開く。カラスはそのまま洋館に入ると、入ってすぐの右手のドアの前に立つ。

 すると、先程と同じようにドアがひとりでに開き、カラスはその中に入っていく。

 その部屋は何かの実験室のようで様々な器具が所狭しと並んでおりその奥には誰かが椅子に座ったまま、こちらに背を向けて何やら作業をしていた。


「ブラックリリィ様。クロウ、参りました」


 カラス……クロウはその奥の椅子に座る人物に声をかける。


「鍵の探索は順調?」


 椅子に座る人物……ブラックリリィは作業の手を止めて振り向きながら問いかける。


「申し訳ございません。遠くの方まで探索しているのですが未だ発見できず……」


「あぁ、別に怒っている訳ではないわ。ただ、最近何か気になる事とかなかった?」


 ブラックリリィは自身の使い魔(クロウ)に怒る訳でもなく問いかける。


「気になる事ですか……えと、気のせいかもしれませんが……」


「…………何でもいいわ。何かあるなら言って」


 クロウの歯切れの悪い言葉にブラックリリィは若干怒気を強めて問いかける。


「……ここ数日、微弱ながら()()()()()()()()()()()()の気配を感じたのです」


「私に似た?……それは大体、今くらいの時間?」


「はい。ですが本当に僅かだったので、気のせいかブラックリリィ様が何かしら行っているのかと思いまして……」


 自信無さげにクロウは答える。すると、ブラックリリィは口元に笑みを浮かべる。


「………やっぱりね、ありがとうクロウ。貴方のお陰で確信が持てたわ」


「ええと……良く分かりませんがお役に立てて何よりです」


 ブラックリリィの言葉にクロウは頭を下げる。すると、ブラックリリィは椅子から立ち上がりクロウの前にしゃがみ込む。


「それで……クロウ。お前にやって欲しい事があるの」


 そう言うブラックリリィの表情は、宝物を発見した子供のような表情だった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 そして迎えた、街での聞き込み調査当日。


「遅いぞお前ら!」


「いや、まだ集合時間前だと思うんだけど……」


 街のとあるファーストフード店に超常現象研究部のメンバーが集まっていた。


 ――制服を着たままだと、万が一警察に何か言われた時に学校の印象が悪くなるから――


 と言う現部長(直輝)の言い分に従い、彼らは一度家に帰り荷物を置いて私服に着替えて店に集まっていたのだ。


「それに、朝霧君もまだ来てないし」


 千晶達が店内を見た所、直輝の姿が見えなかった。


「あぁ、朝霧は今電話中だ」


「と言う訳で、朝霧が戻って来たら早速行動開始だな!」


 朝霧が向かっただろう方向を指差す中山と、早く調査したくてウズウズしている金山。そんな対照的な二人を見ながら千晶は呟く。


「そういえば二人は同じ中学なんだよな?」


「……まぁ、不本意ながらな」


 千晶の言葉に中山が頷く。一方の金山は優里香と何やら話しているようで千晶達の会話は聞いていないようだった。


「二人って中学の時は部活とかはしていなかったのか?」


 千晶の問いかけに中山は、少し翳りのある顔をしながら答える。


「一応…………俺と金山はバスケ部に所属していた」


「一応?」


 千晶が問い返そうとした時、電話を終えた朝霧がこちらに戻って来た。


「すいません。お待たせして……では全員揃った事ですし、早速聞き込み調査を開始しましょう」


 直輝は皆を見回すと音頭を取るように口を開く。


「……あれ?杉山先生は?」


 千晶は順子の不在を直輝に問いかける。


「えっと、先生は今日急用が出来て来れないって、さっき電話が来ました。っ…えと」


 すると直輝のスマホに着信を告げる音が鳴る。直輝はスマホのメッセージアプリを確認すると皆に画面を見せる。


 ――今日私は行けないが、基本的な事は、朝霧が知っているから何かあれば朝霧を頼ってくれ。くれぐれも危ない事、人に迷惑をかけるような事はするなよ。特に金山と天風――


 全員がメッセージを読み終わった事を確認した朝霧は、スマホをしまう。


「……金山はともかく俺!?」


「……前科があるからね」


 千晶の言葉に優里香がツッコミを入れながら、千晶達は店を後にするのだった。






 街に出た千晶達は、直輝の指示に従い、一先ず全員で街の人達に聞き込みを開始する。


「まずは、雰囲気に慣れてもらってから」


 直輝の言葉に従い、聞き込みを開始する千晶達。

 そして、ある程度慣れた所で千晶達は各々に別れて聞き込みを開始する。


「一時間程度で先の店に集合で」


 そう言う直輝の言葉に皆は頷き、行動を開始するのだった。





「……やっぱり、そうそう目新しい情報はないか」


 ある程度、聞き込みを終えた千晶は、そう言いなが先の店を目指す。彼は肩から下げていた手提げバックの中から、ペンのような物と漆黒の丸い球を取り出す。

 ペンはリリィに変身する為のアイテムで、漆黒の球はリリィが敵対している者達の、(魔王)が封印されている。


「……ま、そんな簡単に見つかる訳ないか」


 そう言うと千晶はペンと球をバックにしまい店に急ぐのだった。






「皆さん成果は……あまり無いみたいですね」


 最後に店に入ってきた直輝は皆の顔を見てそう言いながら席に着く。


「まあ……強いていえば天風達が会ったリリィと最近出没しているリリィは違う人物ってくらいだな」


「えっ?どうしてですか?」


 中山の言葉に直輝が疑問を口にする。


「聞いた話だと、今出没しているリリィは小柄でそんなに身長が大きくないそうだ。確か天風達が会ったっていうリリィは……」


「大体、私と同じぐらいだったかな」


 優里香の身長は大体一六四センチメートル。とても小柄とは言えない。


「ではやっぱり今現れているリリィは偽物……」


 ――――ドンッ!――――――


 ――――グガァァァァァァァ!――――


 直輝が何かを言おうとしたタイミングで、外から大きな物音と共に大きな唸り声が聞こえてきた。


「い、今のは一体!?」


「行ってみようせ!」


 驚く直輝を他所に、金山は一人外に出てしまう。他のメンバーも慌てて金山の後を追うように外に出る。

 音の震源地は千晶達の店からさほど遠い街の中央で、その中心に人ならざる魔物が仁王立ちしていた。


「うひょー!あれ本物か!?」


 金山は興奮のあまり魔物に近づいていく。


「待て!不用意に近づいたら……」


 ――――ブオン!――


 すると、魔物が鬱陶しそうに腕を振り払う。幸い、金山には当たらなかったが、その風圧と衝撃に金山は腰を抜かす。


「ハハっ……やっべ。本物だわ!……」


「金山!しっかりしろ!」


 千晶は金山の隣に立ち、金山を立ち上がらせようとする。


「あっ!腰が……抜けて」


「ッ!」


 何とか金山を立ち上がらせようとする千晶。しかし、金山は腰が抜けたのか上手く立ち上がる事が出来ない。そんな彼らに、魔物はゆっくりと近づいていく。


(マズイ!流石に金山の目の前でリリィに変身する訳には……どうすりゃいいんだ!?)


「そこまでです!」


 千晶が悩んでいると、何処からともなく声が聞こえ千晶と魔物の間に女の子が降り立てきた。その女の子は髪を肩まで伸ばし、白色のワンピースに同色のグローブ、ブーツを履いていた。


「罪なき人々を襲う悪しき化け物!このフラワーナイトリリィが成敗します!」


 そういうと()()()()は右手の人差し指を魔物に突き出す。すると、魔物は目の前の偽リリィに狙いを定め、右手を振り下ろす。


「ッ!ハァァ!」


 偽リリィは掛け声と共に魔物の腕を両手で受け止める。そして、そのまま千晶達の方へ振り返る。


「今のうちに、早くここから離れて下さい!」


「ッ……分かった!」


 偽リリィの言葉に、千晶は金山を支えながら後ろに下がる。


 ――――ポワァ――――


「ッ!」


(おい!まさか……)


 すると、千晶のバックの中から光が漏れ出す。そしてそんな二人に残りのメンバーが駆け寄っていく。


「おい金山!大丈夫か!?」


「あっ、ああ……ちょっと腰が抜けて……」


 金山の言葉に一同ホッと息を吐く。すると千晶はバックを開けて中のあるものを確認する。すると、バックの中で漆黒だった球が光り輝いていた。


「千晶……それって」


「ああ……」


マジかよ(やっぱり)


 二人は同時に心の中で同じ事を考える。魔王の封印の鍵が光っている。徐に千晶が偽リリィの方に鞄を向けると、光はより強くなった。


((アイツ(あの子)も封印の鍵を持っている)のね)


 千晶(リリィ)優里香(ブラックリリィ)は偽リリィを見ながら、気を引き締めるのだった。 


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