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バレンタイン特別編⑤

「ここからは私も、本気でいかせてもらうわ!」


 ブラックリリィの言葉にバレンは眉を顰める。


「本気でだと………その言い方だと、お前は今まで本気ではなかったという事か?」


「まぁね………こっちにも事情があるのよ。それより、こっちの準備はいいからとっととかかってらっしゃい」


 ブラックリリィはあからさまにバレンを挑発する。バレンは挑発に乗るように笑みを浮かべる。


「…………いい気になるなよ、ネズミが!」


 言うや否や、バレンは全身に力を入れて一気に駆け出し、ブラックリリィの背後に回る。ブラックリリィはバレンの姿を捉えてはいないのか、そのまま立ったままである。


(フッ、所詮口だけか………捻り潰してくれるわ!)


 バレンはブラックリリィの顔面を潰す勢いで拳を見舞う。ブラックリリィが迫る拳に反応出来ていない事に、バレンは内心ほくそ笑む。すると…………


 ――――――――ブォーーーーーーー


「何!?」


 物凄い風がバレンを包み込み、バレンはそのまま吹き飛ばされてしまった。

 ブラックリリィはその時初めてバレンの存在に気づいたかのように、彼の方を向く。


「どうしたの?……かかって来ないなら、此方からやらせて貰うわ」


 ブラックリリィは風の刃を形成し、バレンに向けて放つ。バレンは刃を避けつつ再び加速。攻撃の機会を伺う。


(さっきのは一体?…………いや、きっとまぐれだ。今度はそうはいかんぞ)


 今度はブラックリリィの真上から攻撃を仕掛けようと、バレンは彼女の頭上にジャンプしブラックリリィに肉薄する。

 しかし…………


 ――――――ブォー――――――


(何だと!?……!)


 再びバレンは強烈な突風によって吹き飛ばされてしまった。


「ちぃ!………………!?」


 何とか空中で姿勢を安定させ、地面に降り立つバレン。しかし二回も立て続けに吹き飛ばされた事。しかもブラックリリィが自分に気づいていなかった事に疑問を覚える。


(一体どう言う事だ?……儂はなぜ吹き飛ばされた?)


「うふ、ウフフフフフフフっ!」


 すると突然、ブラックリリィが声を出して笑い始める。突然の事に、バレンはブラックリリィから少し距離を取る。


「なっ、何が可笑しい!」


 バレンはその笑い声に不気味さを覚える。すると笑い疲れたのかリリィは笑うのをやめ、バレンを見つめる。


「あらあらごめんなさい。貴方の顔があまりにも滑稽だったもので……つい」


 ブラックリリィはそう言ってじっとバレンを見つめる。


「………何故私が貴方に気付いていないに吹き飛ばされた、って思っているんでしょ」


「ッ!」


 ブラックリリィに図星を突かれバレンはそのまま押し黙る。


「答えは……これよ」


 そう言うとブラックリリィは懐から砂のような物を取り出し宙に投げる。するとそれらはブラックリリィを取り巻くように彼女の周りを飛び回る。そして、彼女は懐から小さな礫を取り出し宙に投げると、礫は粉々になってしまった。


「風の膜か……」


「そう、この風の中に入ったものは容赦なく攻撃される。たとえそれが、私が認知していなくても自動的にね」


 ブラックリリィの言葉にバレンは納得がいった顔をする。


「なるほど……それで儂がその中に入った瞬間、風によって吹き飛ばされたというわけじゃな」


「そう言う事。名付けて制風圏。武術か何かの応用で、半径は約三メートルくらいかな。しかもこの技を使っている時は、私は他の力は使えないのよ」


 そう言ってブラックリリィは言葉を締め括る。するとバレンは笑い始める。


「くくくッ。確かにその技は脅威じゃな。だが、そんなに自慢げに教えてしまっていいのかの?」


 そう言うと、バレンは呪文を唱え、魔法陣から人型を多数呼び出しブラックリリィにけしかける。人型は制風圏の中に入ると一体残らず吹き飛ばされ粉々になってしまった。しかし、バレンは再び魔法陣から人型を呼び出し、ブラックリリィにけしかける。


「ハハハッ、どうだ!こやつらは何体でも増やすことが出来るぞ!お前が力尽きるまで何体でもな!」


 バレンは勝利を確信したように高笑いを浮かべる。実際、彼が人型を召喚する際に使う力は微々たるもので、このまま何時間でも召喚する事が可能だからだ。


(もし奴が、制風圏とやらを解いた際は…………儂の拳で殺してくれるわ!)


 もしブラックリリィが技を解いたら自らの手で殺せると自負するバレン。ふとブラックリリィを見ると彼女は下を向いて俯いていた。


「どうした?勝てないと分かって絶望したか?命乞いなら聞いてやらんでもないぞ」


 そう言ってブラックリリィに近づくバレン。(勿論、制風圏の範囲外までだが)すると、ブラックリリィの肩が僅かに震えていた。


「んふふふ……あっハハハハハっ!」


 彼女は腹を抱えて笑っていたのだ。その態度にバレンは眉を顰める。


「……何が可笑しい?」


「…………ああ、ごめんなさいね。貴方が余りにも愚かなものだから……。確かに私の制風圏の半径は三メートルぐらいだけど……」


 すると、彼女を取り巻く風が徐々に大きくなっていく。やがて風はバレンのいる位置まで達しようとしていた。


「それは普通に使った場合。伸ばそうと思えば…………最大十倍ぐらいまで範囲を伸ばせるのよ」


「なッ!……ッ!」


 慌ててバレンは制風圏の範囲から逃れるため下がろうとする。しかし、制風圏の範囲の広がりが速くバレンはそのまま風に呑まれてしまった。









 ここで補足させてもらうが、元々制風圏は技ではなく、彼女が空を飛ぶ際に用いる簡易的な技の応用である。ブラックリリィが飛行する時に、飛んでくる飛来物を除去する際に用いられる為、実際彼女が言うようにこの技を使っている際に他の技が使えないと言うのはバレンを騙す為のフェイクであり、実際は他の技は使えると言う事をここに示しておく。


 ――――以上閑話休題――――







 風に呑み込まれ空中に浮いたバレンが、地面に落下するのをブラックリリィは黙って見つめていた。


(うーん。やっぱり思ったより効果がないわね。やっぱこれは使えないね)


 彼女は自らの技を自己評価しながら、バレンに近づいていく。


「くっ…………くそ!こんな事が!」


 バレンは悪態を吐きながら立ちあがろうとする。

 しかし、見えない力で地面に抑えつけられているのか身動きが取れない。


「もう貴方はお終いよ。あの世で私を怒らせた事、後悔するのね」


 ブラックリリィは風の刃を生成し、バレンに向けて飛ばす。

 バレンは何とか防ごうとするも風の力が強力で身動きが取れない。


「やれやれ……もう少しやれると思ったのですが、とんだ誤算ですね」


 すると、上空から何者かが降ってきてバレンの前に立ちはだかる。

 風の刃はバレンとの間に突如出現した何者かによって防がれてしまった。


「……へぇ、貴方、まだ生きてたんだ」


 ブラックリリィは突如現れた人物……イロに感心の言葉を漏らす。


「い、イロよ!よく来てくれた。さぁ儂と共にこのネ…………ぐっ、グアああああああ!」


 イロに共闘を持ちかけようとしたバレンは突如、身体を抱えて苦しそうに悶え始めた。


「何を言ってもるんですか?貴方の、いや……お前の役目はもう終わったんだよ」


 そう言ってイロはバレンの頭を掴み、強引に持ち上げる。その姿はさっきまで忠義を尽くしていた彼とは、まるで別人のようだった。


「ど、どういうことだ!一体お前は……」


「お前は俺が作った意志のある人形。お前はそこらへんにある彼奴らと、元は同じなんだよ」


 そう言うとイロは頭を掴んでいる手に力を込める。するとバレンの身体が徐々に溶け始める。


「ば、馬鹿な……わ、儂は……神であり……お……う……」


 バレンは、言葉の途中でドロドロの茶色い液体になってしまった。そして、液体はイロの身体に吸い込まれていく。


「そりゃ、俺がそういうふうにお前を作ったからな。……さて、待たせたな」


 そう言ってイロは今まで黙って成り行きを見守っていたブラックリリィに向き合う。


「別に……それよりも随分と酷い事するじゃない」


「酷い事?」


 ブラックリリィの言葉にイロは疑問を浮かべる。


「そんなふうに味方を騙す事よ。正直言って……不愉快だわ」


「不愉快ね………正直、俺にとっては騙される方が悪い。欲しい物を手に入れる為なら何だってするさ」


 イロは悪びれる様子も無く飄々としている。


「いいわ。こんな議論不毛だし、決着をつけましょう」


 そんなイロの態度を見て、ブラックリリィは再び戦闘体制に入る。 


「いいや、決着はもうついている」


 イロがそう言うと気絶しているはずのリリィが一人でに立ち上がり、虚ろな目をしながらフラフラとイロに向かって歩き始める。


「……ッ!リリィちゃん!」


 慌ててリリィが声を掛けるも、リリィは聞こえていないのか歩む足を止めない。


「元々この能力は俺の力。こんな事朝飯前だ」


 リリィはそのままイロの隣に立つ。

 するとイロはどこからか取り出した刃物をリリィに渡し、受け取ったリリィはそのまま自らの喉元に突き立てる。


「俺を攻撃したけりゃすればいい。しかし、攻撃した場合……この女の命はない」


「くっ!」


(どうする?……リリィちゃんなら、自分を犠牲にしてでも戦えって言うだろうな〜〜〜でも)


 ブラックリリィは歯噛みしながらイロを見つめる。


(手を組んだリリィちゃんを……千晶を見殺しになんて出来ない)


「分かったわ。私の負け……降伏するわ」


 そう言ってブラックリリィは両手を頭の上で組み、戦闘体制を解除するのだった。


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