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特別編 バレンタイン特別編

どうもトリカブトです。

この話は約一年前にpixivにて投稿した特別編です。

時系列は第3話の後になるので大分前になります。

初期の頃に執筆したものなので読みづらい所あると思いますが楽しんで頂けると幸いです。

「……はぁ……本当にあるのかな?」


 深夜、薄暗いマンションの一室で男が一人、スマホで調べ物をしていた。男はお世話にも健康的とは思えない肥満体型であり、彼の側には食べ終えたコンビニの弁当やカップ麺の容器が散乱していた。


 (あくまでネットの噂だけど……毎年バレンタインチョコをもらえない僕にとって、この噂は千載一遇のチャンスだ!)


 氷川亮二。三十二歳。現在無職。彼は一度も女性からバレンタインチョコを貰った事が無かった。しかしここ数年、S〇Sや掲示板で、まことしやかに囁かれている噂があった。




 ――――――チョコ神様――――



 当初は都市伝説か何かだと思われていたが、ここ数年、この時期になるとチョコ神様にお願いすると、女の子からチョコを貰ったと言う投稿がS〇Sにアップされ始めたのだ。


「う〜ん。ないな〜」


 彼はそんな一途の望みをかけてチョコ神様に関する情報を集めているのだが、あるのは女の子からチョコを貰ったと言う投稿等だけである。


「……はぁ〜やっぱ噂は噂か〜」


 彼は諦めてスマホを放り投げようとする。すると誤って、とあるサイトを開いてしまう。


「わっ!ヤベ……」


 亮二は慌ててブラウザバックをしようとする。しかし画面を見て、彼は固まってしまう。


「…………見つけた!」


 彼のスマホの画面にはこう書かれていた。





 チョコ神様降臨の為、仲間を募集中です。


 




 ガラガラガラ………………………………………………


「おーす…………ん?」


 教室のドアを開けて天風千晶は教室の中に入る。すると、教室の様子が普段と違っていた。


「ねえねえ……どんなのがいいかな?」


「俺は別に……」


「私はこのお店のがいいと思うんだけど……」


 教室内では男子と女子で分かれて談笑していたり、男女ペアでスマホを眺めながら何やら相談事をしていたりと様々だ。


「何だ?一体どうなって……」


「もうすぐバレンタインだからでしょ」


 千晶が教室の入り口で呆けていると、彼の背後から一人の女子高生が声をかける。


「おはよう白石。そっか……もうそんな時期か」


 千晶は声かけてきた女子高生……白石優里香に返事をかえしながら一人感慨に耽る。


「おはよう……てか、教室の入り口で突っ立てられると凄く邪魔なんだけど……」


 千晶は優里香の言葉に我に帰り、謝りながら自分の机に座る。そして優里香もそれに続き、千晶の隣の自らの席に座る。


「……なるほどな。それでなんか教室内が変にざわついているのか……じゃあ、あいつらは何やってるんだ?」


 千晶はそう言って教室の一角を見つめる。そこでは数人の男子生徒が、スマホを片手に輪になって何やら調べ物をしているようだ。


「あぁ……多分チョコ神様の事を調べているんだと思うわ」


 千晶の目線の先を見た優里香は、自分のスマホを取り出しながら答える。


「チョコ神様?」


 千晶は聞いたことがないと、疑問符を浮かべる。


「そう。ここ数年話題になっていて……そう、これ」


 優里香はスマホを操作し、目的の画面を見つけると、そのまま千晶に見せる。


「えっと……何々……『チョコ神様のお陰で女の子からチョコが貰えました』……『ありがとうチョコ神様!』……なんだこりゃ!」


 千晶はスマホの画面に書かれている投稿の文字を読み、ますます混乱していた。


「ここ数年、チョコ神様っていう神様にお願いしたら、本当にチョコを貰ったっていう投稿が増えているの。だからあの男子達も……」


「チョコ神様にお願いしてるってか……アホらし」


 千晶は視線を戻してそのまま机に突っ伏し、寝の態勢に入る。

「……そんな事言うなら、千晶は私からのチョコ。今年は要らないんだね」


 優里香はスマホをしまいながら、わざとらしく千晶に問いかける。


「……別に……くれなんて頼んでねぇけど……」


「けど?」


 優里香のいやらしい問いかけに、千晶は顔を上げる。


「……あ~も〜!悪かった!今年もお願いします!優里香様!」


 千晶は半ばやけくそ気味に優里香に謝罪する。優里香は満足したように頷く。


「うん。分かればよろしい!けど千晶、そう言う態度はあまりしない方がいいよ」


「………………?」


 優里香の急な真剣な言葉に千晶は頭に疑問符を浮かべる。


「千晶には私がチョコをあげているけど、中には女の子から一度もチョコを貰った事がない人だっているんだから」


 そう言って優里香は先程の男子生徒達に視線を向ける。千晶もそれに釣られるように再び視線を向ける。


「………………」


 彼らは皆、鬼気迫る表情で、スマホの画面を見つめていた。


「んで、これはまだ秘密なんだけど……」


 と、急に優里香は千晶に小声で話しかける。


「今年のバレンタインデーって日曜日でしょ。そこで、クラスの女子達何人かで集まってチョコを作って、クラスの男子生徒にあげようって事を計画してるの」


 優里香は秘密を打ち明かし、満足したようにはにかむ。


「へぇ〜いいじゃん。でも……いいのか?そんな事俺に話して」


「別に。だって千晶には私からチョコあげるから問題ないでしょ」


 優里香が答えると同時にチャイムが鳴り、先生が入ってくる。ふと千晶は、先程の男子生徒達に視線を向ける。彼らはチャイムと同時に解散して各々の席に座っていた。


(そっか……優里香はああいう奴らの為に……)


 千晶は一人納得し、前を向くのだった。


 




 


 それから数日経った、二月十三日の午後十一時三十分。


「………本当にここで合っているのかな?」


 氷川亮二は、スマホ片手に右往左往していた。

 彼は数日前、チョコ神様のサイトを発見。仲間を募集しているという事で、早速メッセージを送った所、今日指定の場所に来て欲しいとのことで、その場所に来たのだが……


「誰も……どころか何もない……」


 そこは、一面畑が広がる場所で、人どころか建物一つもない開けた場所だった。


(場所間違えたかな……でも)


 亮二は改めてスマホの画面を見つめる。そこにはこの場所の住所が載っていて、地図アプリもこの場所を示していた。

 すると、何処からか車が近づいてきてきた。車は何処にでもあるワゴン車で、そのまま彼の前に止まる。


「お待たせしました。乗って下さい。儀式の場所まで案内します」


 車の後部座席のスライドドアが開き、中にいる男が声をかける。


「………………」


 言われるがままに亮二は車に乗り込む。すると車のドアが閉まり、そのまま発進する。


「……えっと、人数ってこれだけですか?」


 亮二は車内を見回して疑問を口にする。車内には運転手を除いて男の他に二人しか乗っていなかった。


「他の方は先に儀式の場所にいます。私達が揃えば全員集合です」


 亮二の疑問に、最初に車内から声をかけてきた男が答える。彼はこのグループのリーダーらしく、儀式の際の細かい注意点などを教えてくれた。


「着きましたよ」


 しばらくすると車が止まり、リーダー達が車を降りていく。亮二も車を降ると、目の前に大きなビルが建っていた。リーダー達はそのままビルの中に入っていく。亮二は慌ててリーダー達の後をついていく。

 一行はそのままビルの屋上に到達する。すると儀式の為か、屋上の床に魔法陣の様なものが描かれていて、幾人の男達が等間隔に魔法陣を囲んでいる。


「さあ……貴方も」


 リーダーの男に言われ、亮二は指定の場所に立つ。亮二が立ち終わると、リーダーの男はあらかじめ別の場所に置いてあった台の上に立つ。


「皆さん、本日はお集まり頂きありがとうございます。これより、チョコ神様降臨の儀式を開始します」


 リーダーの男の言葉に、全員黙って意識を集中する。亮二もそれに倣う。


(これで僕も女の子からチョコを貰えるように……)


 亮二は来るべき未来に想いを馳せつつ、儀式に集中する。すると魔法陣が光り輝き、そして……






 ――――――――魔法陣から大量のチョコレートが溢れ出てきた。―――――――――――――――――


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