超常現象研究部③
その教室は一見すると他の教室と何の変哲もない教室だった。
ただドアのガラスの部分に手作りなのか手書きで超常現象研究部と書かれた表札がぶら下がっていた。
「結構うちの学校では有名な部活なのに、こう言う所は手書きなんだ」
表札を見た優里香が感心したように呟く。
「あくまで超常現象の調査がメインなので、あまりそう言う所を気にしなかったんですよ。この表札も僕が書いたものです」
そう言って直輝は鞄から鍵を取り出して教室の鍵を開ける。
――――ガラ――――ガラ――――ガラ――――
「………凄いな」
教室を見た千晶はボソッと呟く。
教室の中は資料室と見間違う程棚が存在し、その棚の中に大量のファイルが所狭しと並んでいた。
また設備も充実しているのか、小型の冷蔵庫やテレビ。ブルーレイレコーダーも置いてあり、教室の中心には会議机と数人分の椅子が置いてあった。
「うわぁー凄い!ねぇ、これって見てもいいの!」
「ええ、構いませんよ。資料と先輩達が調べたレポートですので教室の外に持ち出しはしないで下さい」
優里香の問いに直輝はそう答える。すると優里香は意気揚々とファイルを取り出しパラパラとページを捲っていく。
「おお!すげぇ!部室にテレビとか冷蔵庫とか最高の環境じゃん!」
「あんまり人様の部室の物にベタベタ触るなよ」
一方で金山と中山は、資料に興味がないのか冷蔵庫やブルーレイレコーダーを見て興奮している。
(優里香ばかりに調べさせる訳にはいかないな)
そう考えた千晶は優里香とは別の棚に近づきファイルを一冊手に取りペラペラとページを捲る。
「…………………………」
(結構………本格的に調べているんだな)
ファイルには数年前に起きた怪現象を取り上げた新聞の切り抜きを左のページに。右のページには何人かが調べて分かった事がボールペンで所狭しと書かれていた。
さらにページを捲っていくと、千晶にはとって切っても切り離せない内容がファイルに書かれていた。
「………フラワーナイト・リリィ」
そのページにはフラワーナイト・リリィについて書かれていた。ただ資料が少ないのか新聞の切り抜き等がなく、両ページに様々な考察が書かれていた。
――化け物と戦う女の子!正体は不明。ただ、自らを花の騎士フラワーナイト・リリィと名乗っていた。
今後も、引き続き調査をしていく予定――
――リリィが現れる少し前より、謎の化け物の目撃情報がチラホラ噂される。彼女と化け物の関連は如何に?――
――化け物と行動を共にする別の女の子を発見!彼女は何者なのか?引き続き調査を続行する。――
(凄く調べられている。少しは期待出来そうか?)
―――ガラ―――ガラ―――ガラ―――――――
千晶がファイルを読んでいると教室のドアが開き、順子が教室に入ってきた。
「おっ!皆集まっているな。じゃあ、早速始めるぞ」
順子は教室を見回し全員が揃っているのを確認すると、早速話を始める。
「まずは……私がこの超常現象研究部の顧問を務める杉山だ。よろしく頼む」
「「よろしくお願いします」」
順子の言葉に全員が挨拶をする。その様子に順子は頷き、話を続ける。
「まず今日の部活動だが、朝霧は理解しているとして………他のメンツには移動しながら説明するから、早速行動開始だ」
そう言うと順子は皆を促し、教室を出るように言う。その言葉に中山が疑問を口にする。
「えっと、先生。俺達助っ人で何をしたらいいか分からないんですが……」
「それに関してはさっき言った通り移動しながら説明する。大丈夫だ、そんな難しい事はしないし……そこの馬鹿でも十分務まる程度の事だ」
そう言って順子は金山の方を見る。それを見た中山は納得したように頷く。
「おい!馬鹿って何だ馬鹿って…………」
そんな会話をしながら千晶達は教室を後にするのだった。
教室を出た千晶達は車を取りに行くという順子と別れ、校門前で順子を待っていた。
「そう言えば、天風君と白石さんは熱心にファイルを読んでいたみたいですが、超常現象に興味がおありですか?」
すると不意に直輝が千晶と優里香に話題を振ってきた。
「うーーーん。どうだろう?私には難しくて良く分からなかったな」
直輝の問いに優里香は苦笑を浮かべながら答える。
「…………フラワーナイト・リリィ」
それに対して千晶はボソッと呟く。
「フラワーナイト・リリィって今結構噂になっているよな。他のページには新聞の切り抜きに手書きで色々書いてあったけど、あのページだけ手書きだったなって」
千晶はふと疑問に思った事を口にする。それに対して直輝は少し苦い顔をする。
「ああ、お恥ずかしながら、彼女……フラワーナイト・リリィに関してはまだ良く分かってないんですよ。一応彼女が活動し始めたとされる時期から、僕と先輩達で色々調べた事があるんですが未だに分からない事の方が多くて」
「「………………………………………………」」
直輝の言葉に千晶と優里香は押し黙る。すると話題を変えようと直輝が明るい声を出す。
「天風君がフラワーナイト・リリィに興味があるなら是非研究部に入部して欲しいのですが、流石に無理強いは出来ないですね」
「…………俺は」
――ビッービーーーーー!
千晶が何か言おうとすると不意に遠くから一台の車が近づいてきた。車は千晶達に近づくとそのまま止まり運転席から順子が降りてきた。
「すまん、待たせたな。直ぐに出発するから乗ってくれ。ああ、白石は女だから助手席に乗ってくれ。一応野郎共のむさ苦しい後ろの席に乗せる訳にはいかないからな」
順子が用意したのは白いワゴン車だった。すると千晶達は順子の指示に従い車に乗り込む。
そして、全員が乗ったのを確認した順子は車を発車させるのだった。
「それで先生。私達は何処で何をするんですか?」
車を走らせ暫くした後、優里香は順子に問いかける。
「あぁ、そういえばまだ言ってなかったな」
と、順子は思い出したかのように言うと、後ろの席の三人に聞こえるように言う。
「今回は超常現象の調査ではなく、ちょっとしたボランティアだ」
「ボランティア?」
順子の言葉に千晶は疑問を口にする。
「超常現象研究部は、常に何かを調査している訳では無いんです。それによく分からない活動をしているだけじゃ、学校側の印象も悪いですし」
「と言う訳で、月に何回かこうしてボランティア活動をしているんだ。その活動を私がまとめて学校に提出している。お前達にはその手伝いをしてもらいたいんだ」
そう言うと話は終わりとばかりに順子は運転に集中する。
「何だよボランティアかよ。てっきり凄いもんでも捕まえるかと思ったのに」
順子の言葉に金山が不満を口にする。
「まぁ、今回はボランティアの回なので……ですが調査をする時は本格的にしますよ。興味があれば入部してみてはどうですか?」
すると、そんな金山に直輝が入部を勧める。すると金山は一人と悩み始める。
「まぁ、今は朝霧一人だし入部してくれると私としても助かるが………着いたぞ」
すると、順子の運転している車が、とある建物の駐車場に入っていく。
そして駐車場に車が止まり千晶達が車を降りる。
そこは建物の他に広い庭のような場所があり、様々な遊具が建ち並んでいた。
「取り敢えず色々あると思うが、今やるべき事に集中してくれ」
そう言う順子を先頭に千晶達は建物に向かっていく。
その建物は地元の幼稚園だった。




