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クリスマス特別短編 聖夜の奇跡

どうもトリカブトです。

今回のお話はクリスマス特別編です。

この話は本編とは関係なく、お話の主人公は読んで頂いている貴方自身です。

私とリリィからのちょっとしたクリスマスプレゼント・・・気に入ってくれたら幸いです。

 十二月二十五日、クリスマス……


「お疲れ様でした〜」


 俺は未だ仕事をしてる同僚等に挨拶をして帰路につく。

 今日はクリスマス。

 殆どの同僚は家族と過ごす為に今日は休みをとっているからか、いつも以上に忙しかった。

 とは言ってもこの時期独り身である俺からすれば毎年の事であり、特に驚く事ではなかったし、仕事も特にトラブルもなく順調だった。


「うぅ〜さ、寒ぃー!」


 しかし、この寒さだけは慣れない。雨は降っていないがこの寒さなら雪でも降って来そうな寒さだった。

 そして、周りを見渡せばイルミネーションを見ながら楽しそうにしているカップルや、家族連れの人達が楽しそうにしていた。


「……………………」


 俺はそんな中を早足で歩く。すると、そんな俺の視界に白いものが飛び込んできた。


「わぁ!雪だ!」


 誰かがそう言うのと同時に彼等は空を見上げて楽しそうにしている。


「…………雪か、道理で寒い訳だ」


 そんな事を思いながら俺は歩き続ける。

 ……別にカップルや家族連れを見て羨ましいとかそう言う感情は無い。一人暮らしは大変だが、その分自分の時間が多く持てる。明日も仕事だし、彼等を見ていて風邪を引いたりしたら馬鹿みたいだ。

 さっさと家に帰って飯食べて風呂入って寝よう……俺はそんな事を考えながら歩き出そうとする。


「痩せ我慢するなよ。兄弟」


「えっ?」


 ふと、自分に向けてかけられたような言葉に、俺は足を止めて振り返る。しかし振り返った先には誰もいなく、相変わらず人々が楽しそうにしていた。


「気のせいか…………」


 ここ数日、仕事ばっかで疲れているのかもしれない。そう思って再び歩き出そうとする俺。

 すると…………


「ッ!うわぁ!」


 振り返った先に()()()()()()()()()()()()()()。光は人の頭ほどの大きさで、そのまま空中に揺らめく事なく浮かんでいた。


「本当はアイツ等がウザったいんだろう?クリスマスだからってはしゃいでよ!って……」


 すると先程と同じ声が聞こえてきた。俺は直感的に目の前の球体が言葉を発していると自覚した。

 何故かと聞かれると分からないが……なんとなくそんな気がしたのだ。


「別に………俺はそんな事」


 しかも、見るからに怪しい球体の言葉など無視してしまえばいいのに俺は思わず返事をしてしまった。


「おいおい!ここには俺達しか居ないんだ!遠慮する必要はないぜ!」


 その言葉に俺は周りを見渡す。すると、先程まであれだけ騒がしかった周りの声が一切聞こえなかった。それどころか辺りには俺と目の前の球体以外誰も居なかった。


「お前は……一体?」


「言ったろ!俺はクリスマスだからってはしゃいでいる奴らがウザったいんだ!たがら……俺達でブッ壊してやろうぜ!」


 そう言って光はゆっくりと俺に近づいてくる。


「は?ふざけるな!俺には関係ないし……お前みたいな得体の知れない化け物なんかに協力するか!」


 俺はその場から立ち去ろうとするが、足が金縛りにあったように動かない。


「……言ったろ。()()でって。お前の意見は聞いてねぇよ!大人しく俺と一つに……」


「そこまでです!」


 すると、何処から掛け声が聞こえたかと思うと肌に一迅の風を感じた。すると、先程まで誰も居なかった俺の目の前に銀髪の女の子が立っていて、球体は少し離れた位置に移動していた。


「罪なき人を脅かすモノは、このフラワーナイト・リリィが成敗します!」


 そう言うと女の子は球体に右手に持った剣の切っ先を向ける。

 俺はその時、初めて女の子……フラワーナイト・リリィが目の前の球体を斬りつけたと理解し、最近噂になっている魔物と戦う正義の騎士風の女の子がいる事を思い出した。

 しかし…………


「成敗?………ハッ!そんな()()()()()()()()()()で、俺様をどうこうしようってか!?」


 球体の言う通りだった。カッコよく登場したリリィだったが、その服装はとても正義のヒロインとはかけ離れていた。

 赤を基調としたワンピース……俗に言うミニスカサンタの格好なのだ。

 ……右手に剣を持っていなかったら、街のイベント等で売り子をしていると言った方がしっくりくるな……俺は一瞬そう考えてしまった。


「ッ!し、仕方ないんです!………私達に頼んだ人がこの格好じゃないと貴方に対抗出来ないって言うから仕方なく……」


 最後の方は尻すぼみになりながら何かを呟く目の前の女の子(リリィ)。すると、球体はその隙を逃さないと言わんばかりに全身から細長い管を俺達に向けて発射する。


「なっ……うわぁ!」


「ッ!させない!」


 飛んでくる管に俺は腰を抜かして地面に倒れ込む中、リリィは俺に飛んでくる管を手に持った剣で斬り裂く。しかし、管の数が多く何本かは彼女の身体に突き刺さってしまった。


「ヒャッハー!ザマァねぇな!」


「ッ!……お、おい君!大丈……」


 俺は心配の余り、リリィの前に周り込む。すると、管は彼女の着ているサンタ服を貫く事が出来ずに止まっていた。


「………心配無用です!ハァ!」


 ――ザシュ!――


 リリィは剣を振り下ろし管を叩き斬ると、そのまま球体に接近して剣を振り下ろす。


「うぉっと!……危ねえ」


 しかし、球体は迫りくる剣を回避しそのまま空高く飛び上がってしまう。


「ッ!待ちなさい!」


 リリィは空を見上げ、球体を怒鳴りつける。

 …………と言うか、待てと言われて待つ奴はいないと思うな〜普通は……


「へッ!待てと言われて待つ奴がいるか!()()()の力を宿しているなら分が悪い。ここはトンズラさせてもらうぜ!」


 そう言うと球体はそのまま空の彼方に飛び去ってしまった。


「あの?大丈夫ですか?」


 リリィは空を見上げた後、俺の方を向いて心配そうな顔をする。


「あっ……ああ!大丈夫。それより君は…………」


 俺はその表情に思わずドキッとしたが何とか表に出さずにリリィに問いかける。


「私は花の騎士フラワーナイト・リリィ。今は故あってこんな格好ですが、罪なき人を守る正義のヒロインです」


 そう言って俺を真っ直ぐに見つめるリリィ。格好はアレだけどその佇まいは噂通りの正義のヒロインのようだった。


「と言うかアイツを追わなくても良いのか!?このままじゃ……」


 そんな彼女が俺の事を心配してくれるのは良いが、さっきのアイツは何処かに行ってしまった。

 もしかしたらさっきの俺みたいな人にまたちょっかいを出すのだとしたら……


「それは大丈夫です。今日は私一人だけではありませんから」


 そんな俺の杞憂を振り払うように彼女は俺に微笑むのだった。











「ふう。ここまで来ればもう追って来れない」


 先程、リリィから逃れた球体は上空数千メートルの地点から眼下の街を見下ろしていた。(と言っても球体に目は無く単なる比喩表現なのだが……)

 球体は元々クリスマスの怨念が集合したもので、楽しいクリスマスの裏で……何で俺は、私は……という悲しみ、憎しみが固まって出来た思念体である。

 そんな経緯で出来た球体はそんな楽しいクリスマスを破壊する事を行動理念に活動しているのだ。


「あのリリィって女………()()()と同じ力を持っていやがった。けど、ここなら邪魔が入られねぇ……ここからゆっくり獲物を吟味して」


「やっと来たわ〜。待ちくたびれたわよ」


「ッ!」


 すると、辺りに間伸びした女の声が聞こえた。球体は見えない目で辺りを見渡すと、誰もいなかった空間に()()()()()()()()()()()

 女は黒い髪を腰まで伸ばしていた美少女で、顔には妖艶な笑みを浮かべていた。


「なッ!お前は……」


 球体はその女を見て驚愕の声を上げる。何故なら女……ブラックリリィは先程会ったリリィと同じくサンタクロースのコスチュームを着ていたのだ。


「アイツとリリィちゃんに頼まれてここで待っていたけど……流石に寒いわね。ちゃっちゃと終わらせてあったかいホットミルクでも飲みたいわ」


 突如現れたブラックリリィに球体は警戒を高める。


 (この女もさっきも女と同じ?なら……)


 戦っても分が悪い。

 そう思った球体はそのままブラックリリィの側から離れようとする。

 しかし…………


「なッ!う,動かん!何故!?」


 その場を離れようとした球体だったが、何かに阻まれているのかその場から一切動けずにいた。よく見ると球体の周りには風が逆巻いていて、それが球体の行動を阻んでいた。


「あらあら?レディを待たしておいてさっさと立ち去るなんて、礼儀がなってないんじゃない?まぁ……さっさと済ませたいから別に良いけど」


 そして、それを作り出しているであろうブラックリリィは突き出していた右手をそのまま上に持ち上げる。その姿は、さながら野球選手のピッチャーが大きく振りかぶっているように見えた。

 すると、それに合わせるように球体も少し上に上がっていく。


「なッ!何を!?」


「そ〜れ!飛んでけ!」


 そして、ブラックリリィが腕を振り下ろすと、それに釣られるように球体も物凄い勢いで地上に向かって落下していくのだった。










 




「クリスマスの……怨念?」


 俺はリリィの話してくれた内容に疑問を返す。


「私も詳しく聞いた訳ではありませんがそう言う(たぐ)いのものが毎年現れるらしく、それを対処している人達がいて、この格好はその正装らしいんです。ですが……」


 そう言って彼女は自分の格好を見る。正直寒くないのかとは思ったがどうやら人ならざる力が働いている為か全然平気そうだ。


「今回、その方達が体調を崩してしまい仕事が出来なくなってしまった為、急遽()()が代理で退治する事になったんです」


「私達?」


 と言っても今いるのは目の前にいるリリィのみ。すると、彼女は上空をじっと見つめる。俺も釣られるように上空を見つめる。

 すると、何かがすごい勢いでこちらに近づいている事に気づいた。


「あ,アレは…………」


「来ましたね」


 それは先程飛び立って行った球体だった。その球体がすごい勢いでこちらに向かって落下してきている。その一方でリリィは手に持っていた剣の剣先を、落下してくる球体に向けて意識を集中する。


「光よ!集え!フラワーナイトスプラッシュ!」


 彼女がそう叫ぶと、剣先から光の奔流が溢れる。あまりの眩しさに俺は思わず目を瞑る。


「グャァァァァァァァ!」


 上空からそんな声が聞こえ、恐る恐る目を開けるとそこには何もおらず、ただ満点の星空が広がっていた。


「……やったのか?」


「ええ……もう心配はいりません」


 俺は思わずそう呟く。すると、リリィは答えながらに剣を鞘に収める。


「リリィちゃん。終わった〜?」


 すると、上空からそんな声が聞こえたかと思うと、リリィと同じようなサンタクロースの格好をした女の子が空からゆっくりと降りてきた。


「ええ、今回は助かりました。ブラックリリィ」


 リリィは降りてき女の子(ブラックリリィ)に声をかける。するとブラックリリィはとてとてとリリィに近づくと、ガバッと彼女を抱きしめる。


「ちょッ!ブラックリリィ!?」


「空の上ね、ものすごく寒かったのよ。だからリリィちゃんの温もりで私を暖めて」


 そう言うとブラックリリィはギュッとリリィを抱きしめる。


「やっ!やめてください!こんな人前で……」


 リリィは恥ずかしいのか身体を捩っている。

 と言うか、この人(ブラックリリィ)……俺がいる事に気づいていないのか?


「って、冗談よ。私は先に帰ってるから」


 そう言うと、ブラックリリィはリリィから離れてそのまま宙に浮かんで飛んで行ってしまう。

 そんなブラックリリィにリリィは悪態をつく。


「全く。では私も………あっそうだ!」


 そう言うと、リリィは何処からか出した大きめな袋を取り出し中身を漁る。袋は正にサンタクロースが持っていそうな大きめの袋だった。


「はい!どうぞ!」


 そう言うとリリィは俺に手に持った何かを差し出す。それは包装紙に包まれた小さい包みだった。


「えっと……これは?」


 俺は思わずリリィと包みを交互に見回す。


「今日はクリスマスなので……メリークリスマスです!」


 そう言ってリリィは俺の手にプレゼントを乗せてると、そのまま踵を返して立ち去ろうとする。


「えっ!?ちょっと待って!」


 俺は慌てて、彼女の手を掴もうとして……

 そして……………………









「…………み。おい君!大丈夫か?そんな所で寝ていると風邪引くぞ」


 呼ばれた声に目を覚ますと俺はショーウィンドウにもたれ掛かって眠っていた。

 あれ?さっきまで女の子(リリィ)と一緒にいたような気が…………


「本当に大丈夫か?立てる?あれなら交番で休んでく?」


 声をかけていたのはお巡りさんだった。今日はクリスマス。俺が酒を飲んで酔っぱらって寝ているのだろうと判断し声をかけてきたのだ。ご苦労なこったと思う。


「いえ。大丈夫です」


 俺はそう言うと立ち上がり、そのまま歩いていく。そして、歩きながらさっきまでの事を考えていた。

 球体の化け物に、それを退治したサンタの格好をした女の子。そして最後に彼女がくれた包み(クリスマスプレゼント)………


「まぁ……夢だよな。あんな事、現実に起きる訳」


 そう思い俺はポケットの中に手を入れる。するとポケットの中に何かが入っているのに気付いた。

 ポケットから取り出してみると、それはリリィが去り際にくれた包みに似ていた。


「…………メリークリスマス………か」


 俺はそう呟くと、コンビニに寄って小さいケーキを買って家に帰る。

 そして家に帰って包みを上ける。

 包みの中身は小さいサンタの格好をした女の子の置物が入っていた。


「…………たまにはこう言うのも良いものだな」


 俺は誰もいない部屋で一人呟くのだった。

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