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間章 戦う理由 ②


 俺が初めてリリィに変身した日。あの後俺は優里香を家に送り届けた後自宅に戻った。そして自分の部屋に入ると、ポケットに何か入っている事に気付いた。


「…………何だこれ?」


 それはペンのような形状をしたものだった。よくアニメのヒロインが変身する時に用いるアイテムに似ている気がした。


「千晶――――ご飯できたよ――」


 すると一階から母ちゃんの叫び声が聞こえた。時計を見るとそろそろ夕飯の時間だった。


「……考えるのは明日にしよう」


 何で俺が変身出来たのか?あの化け物は何なのか……分からない事だらけど、とりあえずまずは腹ごしらえだ。

 俺は夕飯を食べる為に一階に降りるのだった。






 


「おはよう」


「……おう」


 翌日、教室に入って来た俺にクラスメイトが挨拶をして来た。俺は素っ気ないながらも挨拶をして自分の席に着席する。


「オース!天風」


 するといつものように金山が俺に話しかけて来た。……なんて言うかコイツほぼ毎日俺に話しかけて来ているよな……


「おう金山。おはよう」


 俺は金山に挨拶を返す。すると金山はスススっと俺に近づいて来た。


「なあなあ、昨日は白石とどうだったんだよ?」


 そして小声で俺に問いかける。


「どうって言われても……」


 俺は返答に困った。優里香は普通に家に来て詩織に焼香を上げただけだし、その後いきなり化け物に襲われて危ない目に遭うし、優里香を守ろうとして俺は戦う力を得たかと思うと突然女の子になっちゃったりで訳がわからなかった。


「隠すなよ。もうキスぐらいはしたんだろう」


「なッ!」


 いきなり何言い出すんだこいつは!確かに昨日は優里香は俺の家には来た。けどそれは詩織に焼香をあげる為のものでそれ以外は何も無い。


「照れるなって……俺は分かってるし、お前らのことを応……アタッ!」


 と、金山が何か言おうとしていると、彼の頭に何かが直撃するのが見えた。


「ッたく……お前はそうやって変な絡み方をするなって何回言わせるんだ!」


 すると教室の入り口から彼の幼馴染である中山が、怒りながらこちらに向かって来るのが見えた。


「ッ痛えな……別に変な絡み方はしてないだろう!て言うか流石に今回のは洒落になんねえくらい痛かったぞ」


 そう言って金山は近くにあった鞄を拾い上げる。なるほど、さっき頭に直撃してたのはこれだったのか。


「大丈夫だ。中身は入って無いからそんなに痛く無い」


 そう言う問題だろうか?結構いい音していた気がするんだが……


「おはよう……皆して集まってどうしたの?」


 すると、教室に優里香が入ってきた。優里香は俺達を見ると不思議そうな顔をしながら近づいて来た。


「おっ!噂をすれば……白石、昨日は天風とはどうだったんだ?」


 すると金山は優里香に近づいて問いかける。と言うかさっき鞄が直撃してたのに切り替え早いな。


「どうって……普通に千晶の家に遊びに行って、叔母様に挨拶しただけだけど」


「叔母様って事は千晶のお母さんだよな……お前ら、もうそんな関係……ブホォ」


 するとすかさず中山が金山にボディーブローをかます。と言うか早えぇ……全然見えなかった。


「ッたく。悪いな、いつもいつも」


「ううん。別に気にしてないよ」


「んん……まあ」


 優里香は普通に、俺は曖昧に答える。正直中山のツッコミの速さに付いていけない所かあった。


 ピーンーーポーンーーパーンーーポーン


 ――――――ガラガラガラ――――――


「お前ら、席に付け……って、どうした金山?調子悪いのか?」


 すると、ホームルームの鐘が鳴り担任の先生が教室に入ってきた。先生は蹲っている金山を見ると声をかける。


「あぁ、コイツちょっと腹痛いみたいなんで、俺が保健室まで連れて行きますね」


 中山はそう言うと、金山を連れて教室を出ていくのだった。




 



 学校の屋上というのは、学校によっては最も一人になるのに適している場所だと言える。

 特に俺のような他人とあまり関わり合いたくない人種にとっては最高の場所だ。


 ――――ガチャリ――――――


 まあ今日に限ってはそうではないのだが…………


「お待たせ。千晶」


 そう言って、優里香は手に持っていた弁当を見せながらこちらに近づいて来た。と言うのも金山の一件があった後、俺は優里香に昨日の事で話がしたかったからこうして屋上に呼んでいたのだ。


「悪いな。呼び出しちまって」


 先に屋上に来ていた俺は二人分の座れる場所を確保しておいた場所を空ける。


「ううん。こうやって千晶と一緒にご飯食べたかったから」


 そう言って優里香は俺の隣に座る。そして俺たちは無言で飯を食べ始める。


「それで……話って?」


 飯を食べ終わった後、優里香は俺に聞いてきた。俺は持ってきていた鞄の中から一冊のノートとペンのような物を取り出す。


「昨日優里香と別れた後、ポケットの中にこれが入っていたんだ。恐らく俺があの姿になったのと関係しているんだと思う」


 優里香はしげしげとペンのような物を見つめた後、それを手に取る。


「ふ~ん。ねぇ千晶、ちょっとやってみたい事があるんだけど試してみてもいい?」


「試したい事?……まぁいいけど危ない事はするなよ」


 俺の言葉に優里香は大丈夫と答え、ペンを持ったまま立ち上がるとペンを空に掲げる。


「〇〇〇〇スター・パワー!メイク・アップ!」


 ・・・・・・・・え?

 優里香はペンを頭上に掲げたまま、一昔前の美少女アニメの変身呪文を唱える。しかし、何も起こらず俺は幼馴染をなんとも言えない表情で見つめていた。


「・・・・・・・。う、うぅん!」


 優里香はわざとらしく咳払いをした後で何事もなかったかのように俺にペンを返す。

 その顔は恥ずかしかったのか頬が赤くなっていた。……てか、恥ずかしがるなら最初からやるなよ。


「……やっぱり千晶じゃないと使えないんじゃないかな?」


 そう言って優里香は俺を見つめる。て言うかそもそも何で俺が使える前提で話しているんだ?


「てか変身の呪文が違うぞ優里香」


「え?」


 俺は持ってきたノートのページを開くとそのまま優里香に手渡す。


「えっと何々?花の精霊よ……私に力を貸して……フラワーメタモル……フォーゼ?」


 優里香はたどたどしながら呪文を口にする。


「そうそう。じゃあもう一回やってみろよ」


 そう言って俺はペンを再び優里香に手渡す。優里香は少し考える素振りをした後、意を決して再びペンを頭上に掲げる。


「花の精霊よ……私に力を貸して!フラワーメタモルフォーゼ!」

 

 ・・・・・・・

 

 優里香は呪文を唱えたけど結局何も起こらなかった。


「……やっぱり千晶が使わないとダメなんだよ。そうだ、せっかくだからこの場で変身してみて」


 そう言って優里香はペンを俺に返し、俺に変身するように促す。


「おいおい、ちょっと待てよ!何で俺が……」


「私ばっかり恥ずかしい思いをさせておいて、それは無いんじゃない」


 俺の言葉に優里香はそう答える。と言うかあれは、優里香が勝手にやっただけじゃないのか。

 と、思ったけどそんな事を言っても優里香が聞き入れる訳ないよな。あの姿……恥ずかしいから本当はあんまりなりたくないし、それに本当に俺が変身できるのか分からないし。


「ほらほら早く!早くしないと昼休み終わっちゃうよ」


 はぁ……まあいいか。本当に変身出来るかどうかなんて分からないし。

 仕方ない。さっさと終わらせるか。


「花の精霊よ……私に力を貸して!フラワーメタモルフォーゼ!」


 俺が呪文を唱えると光に包まれ、俺の姿が光の中で変わっていく。やがて光が晴れると俺の姿は騎士風の格好をした女の子に変わっていた。


「花の騎士!フラワーナイト・リリィ見参!」


 私は思わず決めポーズを決める。て言うか本当に変身出来ちゃった。


「やっぱり!これは千晶じゃないと使えないんだよ」


 そう言って優里香は私に近づいて来る。な、なんか嫌な予感がする。

 …………ムニュ…………


「ッ……な、何するんですか!」


 優里香は私に近づくと唐突に胸を触って来た。


「何って……別に女の子同士なんだから良いじゃない。それに……」


 …………サワサワサワ…………


 優里香は胸だけじゃなく剥き出しの二の腕や太腿を触り始める。

 ちょ……やめて!なんか……こう……変な気持ちになっちゃいそう。


「本当に女の子なのか確かめないとね」


 ちょ……そ、そこはダメ……変なとこ触らないで!

 何とか優里香を止めようと声を上げようと思ったが、そんな事をしたら、こんな格好で屋上にいるのが知られてしまう。そんな私の気持ちなどお構い無しに優里香は私の身体を隅々まで調べるのだった。


 



 

 

「……うん。隅々まで女の子だわ」

  

 それからしばらくして、優里香から解放された俺は速攻で変身を解いた。

 何と言うか……一刻も早く元に戻らないと色々と超えてはいけない一線を超えてしまいそうな気がしたのだ。

 正直、言葉にする事のを躊躇われるような……

 まぁとにかく、今後優里香と二人きりの時に変身したままでいるのは止めようと思った今日この頃である。


「そういえば、さっき何気なく渡されたけどこれ何?」


 そう言って優里香はリリィの事が書かれているノートを俺に手渡す。


「……あぁ、それな。実は……」


 俺はノートを受け取ると、昨日リリィに変身する時に起こった出来事を優里香に説明した。

 頭の中に謎の女の子の声が聞こえた事。

 その声に従ってイメージしたのが、ノートに書いてあるリリィである事。

 そして気がついたらその姿に変身して化け物を倒してしまった事をだ。

 

「うーん、成る程ね。で、その後に何か聞いてないの?」


「何って……何だよ」


 俺は優里香の抽象的な質問に疑問符をうかべる。


「ほら、こう言うアニメとかで良くあるじゃん。悪い奴らが地球を狙っていて、それに対抗する為に伝説の戦士に変身する力を授けるとか……」


 優里香の言葉に俺はハッとする。確かにペンのような物がポケットの中にあって、それを使って変身出来るようになってしまったが、その後あの声もそれに近いような超常的な存在も姿を現さなかった。


「……言われてみれば確かにそうだな」


 俺は心の中で優里香に感謝していた。優里香は昔からこう言う俺が気付きにくい事に気がついつくれる。

 今回、こうして優里香に話して良かったなと、つくづく思う。


「……それでね。私なりに調べてみたんだけど、最近不審者の話を良く聞くじゃない」


 優里香の言葉に俺は頷く。確かに、最近毎日のようにホームルームで不審者に気をつけろって、話をしているな。


「多分だけど、その不審者が昨日あった化け物だと思うのよ。化け物達が何で私達を襲ったかは分からないけど、昨日の私達みたいに襲われる人がいないとも限らないわ!」


 段々と言葉に熱が入っていく優里香。それとは対象的に、優里香の言わんとしている事を察した俺の心は冷えきっていた。


「そこでね千晶。私達であの化け物を退治して、街の人達を……」


「嫌だ」


 俺は優里香が最後まで言い終わる前に遮るように言葉を放つ。

 正直、予想通りだった為、遮るようになってしまったがこればっかりはしょうがない。


「なっ、何でよ!千晶は変身すれば、あの化け物と戦える力を持っているでしょ!」


「だとしても、俺が変身してあの化け物と戦わなきゃならない理由にはならない」


 俺は正義のヒロインになりたかった訳ではない。あの時はあくまで優里香を助ける為に力を欲した結果、あの姿になったに過ぎない。


「そもそも、そう言うのは警察の仕事だろ。俺が変身して戦わなくても警察に話をして……」


「警察に、不審者の正体が化け物だなんて言って信じてくれると思う!?」


 こう言う時に優里香は正論を言う。確かに不審者の正体が正体不明の化け物ですなんて言ったら逆にこっちが不審者だと思われちまう。


「千晶。私はあの時、千晶が変身して戦ってくれたから、今も何事もなく過ごす事が出来る。けど、もしあの化け物が、また関係ない人達を襲ったとしたら?警察が化け物を発見しても、全く刃が立たなかったら?……それでも千晶は自分には関係無いって言うの?」


 優里香はそう言って、俺を真剣に見つめる。実際普通に考えれば、俺は優里香の言葉に考えを改め、罪もない人達の為に戦う正義のヒロインとして固く決意を固める所なんだろうけど……


「…………前にも言ったような気がするげと、俺はもう他人とあまり関わり合いたくないんだ。そんな俺が誰かの為に戦うなんて……冗談はよしてくれよ」


「…………本気で言ってるの。千晶?」


 俺の言葉に、優里香はぽつりと呟く。その声はどこか怒りを含んでいた。俺はそんな優里香に沈黙で答える。


「…………そう。なら私一人で勝手にやる!千晶には頼らないから」


 そう言うと優里香は自分の荷物を持つと一目散に屋上のドアに向かう。


「………………千晶じゃなくて、私が変身できれば良かったのに」


 去り際に優里香がそう呟くのが聞こえた。

 あぁ、全くその通りだな……

 一人屋上に残った俺は一人天を仰いでいた。 


 


 


 

「……と言うことがあったんだ」


 話を一区切り終えた俺は、真横のリリィを見やる。

 今、俺達はリリィが用意してくれた長椅子に腰かけている。何で椅子があるかと言うと、俺の意識の中なので俺が望んでリリィが認めれば大概の物は生み出せるらしい。

 この話は長くなりそうだったから椅子があればと思ったらリリィが用意してくれたのだ。


「そうだったのですか…………」


「そう。だから戦いを強いたってリリィが責任を感じる必要はないんだ」


 リリィは俺の言葉を受けて考えているようだ。 少なくともその顔には先程のような責任を感じている感じは見受けられなかった。

 リリィには妹……詩織の事やあの小説の事は話した。彼女は特に自分の元になった物などには興味を示さなかったが…………


「………でも、今は違うんですよね」


「ん?何がだ」


 リリィは顔上げると先程とは打って変わって優しい表情で俺に問いかけてきた。俺はわざとらしく分かっていないような振りをする。


「今の千晶は誰かの為に戦っている。そうじゃなければ幾ら私が力を授けたとしても、あれほどの力を引き出すことは出来ません」


 まぁその通りだ。昨日のブラックリリィの戦いの最中、リリィのお陰で勝てたような所があるので流石にお見通しか。まぁその話もこれからする所だったんだが、リリィは鋭いのか俺の話し方が下手なのか……


「そうだな。あれは…………」


 そう言って俺は続きを話し始めた。



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