直接対決!フラワーナイト・リリィVSブラックリリィ ②
――――――――――キーンコーンーカーンコーン――――――――――
「ん~~!お、終わったぁ〜」
チャイムと共に教室に漂っていた緊張した雰囲気が一気に和らいだ。今日は二学期の期末テスト最終日。テストという学生にとってのある種の戦いを終えた生徒達は、各々クラスメイトとおしゃべりを楽しんでいた。
「お疲れ千晶。どうだった?テスト」
そんな中、白石優里香は幼馴染である男の子、天風千晶に声をかける。
「別に……まあまあってところかな」
そんな彼女の言葉に千晶は事もなげに答える。
(今回は勉強していたところが当たったし、悪くはないかな)
「ねぇ。せっかくだしこの後遊びに行かない?」
千晶が内心でそう考えていると、優里香が千晶にそう提案して来た。
「うーん…………そうだな…………」
「えっ何々!二人して何の相談?」
千晶が悩んでいると一人の男子生徒が声をかけて来た。
「あ!金山くん」
「おう」
二人は話かけて来た男子生徒……金山に挨拶をする。
「おーっす!て言うか、二人はテストどうだった?まあ俺はいつも通りだったけど」
「私もいつも通りだったよ」
「俺も……まあまあ」
金山の問いに二人はそれぞれに返事をする。その後、優里香は金山にテストも終わったから、この後遊びに行こうって話をしていた事を告げる。
「おっ、良いね!俺も一緒に行って良いか!」
その話を聞いた金山は自分も参加したいと言う。
「うん!ねぇ千晶。金山くんも行くって言ってるし、千晶も行こうよ」
「…………まあ、この後用事も無いし……良いよ」
千晶の返事に二人は大喜びをする。
「と言っても何処行くんだ?まだ場所も決めて無いし……」
と、大盛り上がりを見せる二人を他所に、千晶は二人に問いかける。
「なら、映画なんてどうだ?」
すると、そんな三人に新たな男子生徒が話しかける。彼の名は中山。金山とは幼馴染であり千晶達とも顔見知りである。
「映画か……良いな」
そんな中山の提案に三人は頷く。すると中山はホッとしたような表情になる。
「良かった。…………実は見たい映画があったから皆で行きたいと思っていたんだ」
「どんな映画なんだ?」
そんな中山に千晶が問いかける。中山は得意げな顔をして答える。
「行ってみてのお楽しみだ」
そう言って四人は教室を後にするのだった。
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(まさか、あの時見た映画がこんな形で役に立つなんて……)
あの時千晶達が見た映画は、某SFロボットアニメの劇場版であった。中山は、そのアニメの相当なオタクであり、金山、優里香も一部シリーズは見ており、ある程度の内容は理解していたのだが、千晶は全くの未知であった。しかし、映画に行く途中や上映終了後に三人に話を聞きながら何とか話を理解したのである。
その中で主人公のロボットが使っていた技に千晶は感心を覚えた。その主人公も近接戦メインの為、リリィで戦っている自分と親近感を覚えたのである。その後、中山に相談して似たような技がある作品をリストアップしてもらい、家で何度も視聴してイメージは出来ていたのだが中々使う機会が無く、半ばぶつけ本番だったのである。
(何とか上手く出来て良かったです。これで……)
リリィは落下したブラックリリィを追って地面に降り立つ。
「……んっ!くっ!……まさか…………ここまでやるとはね」
リリィが地面に降り立つと、ブラックリリィは既に立ち上がっていた。しかし、彼女の服の一部は先の斬撃で斜めに避けていた。
「私の勝ちです。さあ大人しく…………ッ!」
リリィが勝利宣言をしようとすると、ブラックリリィは自らの手を傷口にあてがう。すると、傷口が見る見る内に塞がっていく。
「あらあらリリィちゃん。まだまだ私は戦えるよ。それに……そろそろ身体も温まって来た頃だし、ここからは本気でいかせてもらうわ!」
言うや否や、ブラックリリィの姿が目の前から消える。すると次の瞬間にはリリィの目の前に現れる。
「ッ!……ヤァ!」
リリィは咄嗟に剣を振るうが、ブラックリリィは横に身体をずらして回避し、そのままリリィのお腹に膝蹴りを入れる。
「……!ガハァ!」
リリィが腹を抱えて踞ろうとすると、ブラックリリィはそのままリリィの頭を掴み、そのまま投げ飛ばす。
「……キャアアアアアッ!」
リリィは二、三回地面をバウンドし、そのまま地面に倒れ伏す。
「どうしたのリリィちゃん?もうお終い?」
そんなリリィに追撃をかけるでも無くブラックリリィはその場に立ちリリィに問いかける。
「ん……くっ……あつッ!」
(何、今のスピード?全然追えなかった。……でも!)
リリィは剣を支えにして何とか立ち上がる。
「まだです!まだまだこんなものではありません!」
言うや否や今度はリリィの方から仕掛ける。しかも、動きは直線的では無く、空中に飛んで先程使った足場を利用した変則的な動きをして、ブラックリリィを翻弄しようとする。
「…………またそれね。もう見飽きたわ」
そう言うや否やブラックリリィの姿が再び消える。そして次の瞬間にはリリィの目の前に再び現れたのである。
「な!そんな……」
リリィは咄嗟に剣を振るうが、またしても、ブラックリリィにあっさりと避けられてしまう。
「……これで、お終いよ!」
ブラックリリィは右手に風を纏わせリリィに拳を繰り出す。リリィは咄嗟にフラワービットで防御しようとするも、防御は貫通され、そのまま直撃を受けてしまう。
「うわぁああああああ!」
――――――ズドーーーーーーーーーーン――――
またしてもリリィは地面に直撃し、今度は地面にクレーターを作ってしまう。しかも、今回はダメージが大きいのか、なかなか立ち上がることが出来ない。
「………これが今のリリィちゃんと私の力の差。理解できたかしら?」
そんなリリィを見下ろしながらブラックリリィはゆっくりとクレーターの近くに降り立つ。そして、リリィに思い知らせるように言い放つ。
「…………どう言う事ですか?」
リリィは寝転がったまま、何とか顔を上げてブラックリリィに問い返す。
「今のリリィちゃんでは、どうあがいても私には勝てない。どう、少しは現実を理解できたかしら?」
ブラックリリィの口調はそれまでの妖艶な口調では無く、物覚えの悪い生徒に教える教師のような口調だった。
「……勝手に決めつけないで下さい。私はまだ……」
「私の事を捉えきれていないのに、まだ勝てると思っているの?」
リリィの言葉をブラックリリィが遮る。そして次の瞬間、リリィの首を掴んでそのまま持ち上げてしまう。
「う……ぐっ……あああっ!」
「リリィちゃん。貴女が勝てる確率なんてゼロに等しいわ。何故なら、私は貴女を殺そうと思えばいつでも出来るもの。こんなふうにね」
そう言ってブラックリリィはリリィの首を絞める力を強める。リリィはブラックリリィの腕を掴んで、首から引き剥がそうとするも、ブラックリリィの力は強くビクともしない。
「あっ……あああっ……んっ……あああっ」
(ダメ!……このままじゃ……息が……)
「……ふん」
すると、ブラックリリィはリリィの首から手を離す。
――――――ドサァ――――――
「んくぅ……ゲホ……ゲホ……」
リリィは地面に座り込み、咳き込んでしまう。
「これで分かったでしょ。諦めなければ絶対勝てる。最後は絶対正義が勝つみたいな事は現実には起こらないのよ」
ブラックリリィはリリィを見下ろしながら言い放つ。その言葉は、何処か侮蔑の感情が込められていた。
「……たとえそうだとしても、私は……」
そんなブラックリリィの言葉を跳ね返すようにリリィは立ち上がろうとする。
「……もう良いのよ。リリィちゃん」
そんなリリィに、ブラックリリィは優しく問いかける。
「もう良いって…………どう言う意味ですか?」
リリィはブラックリリィの言葉に意味が分からず憤慨する。
「リリィちゃん、本当は貴女だって気付いているはずよ。私には絶対勝てないって……」
「そ、そんな訳!」
「ならどうしてリリィちゃんの手は、さっきから震えているの?」
ブラックリリィはそう言ってリリィの左手を指差す。
「ッ!どうして?」
リリィその時、自分の左手が無意識に震えている事に気付く。
(何で私?こんなに震えているの?)
「リリィちゃん。貴女は最初に私に会った時から、私には勝てないって思っていた。けどリリィちゃんはヒロインとしてそれを心に隠して戦っていた。………本当は怖いんでしょ?私と戦うのが」
「違う!……私は……貴女を恐れてなんか」
「そうね……リリィちゃんが本当に恐れているのは恐れを抱いてる事を認める事。それを受け入れる事だもんね」
「違う!……そんな事……私は……」
やがてリリィは剣を放り出し、頭を抱えて蹲ってしまう。そんなリリィをブラックリリィは優しく抱きしめる。
「良いのよ。今はそれでも……で、そんなリリィちゃんに私から提案があるの」
そしてリリィに優しく囁きかける。
「提案?」
「そう。最初に言った通り、私達の目的は人間の生命エネルギーを集める事なんだけど、リリィちゃんが協力してくれればもう他の人は襲わないわ」
ブラックリリィの提案にリリィは驚きの表情を浮かべる。
「えっ?それってどういう……」
「詳しい事は教えてあげられないけど、リリィちゃんがいれば他の人間を襲う必要はないって事。どう?悪くない提案だと思うけど」
ブラックリリィの突然の提案にリリィの心は揺れ動く。
(どうしよう。けど今の私じゃどうやったってブラックリリィに勝てない………それに私が犠牲になって他の人達が助かるのなら)
ブラックリリィの提案にリリィが頷こうとしたその時。
……………………………………本当にそれで良いの?…………………………………………
何処からとも無く声が聞こえたかと思うと、リリィは意識が急激に遠のくのを感じた。




