兆しと陰謀 ②
投稿遅くなり申し訳ありません。
「ん~~!ふぅ、勉強した〜」
放課後、図書室でテスト勉強を終えた千晶達は帰宅の途に着こうとしていた。一番に図書室から出てきた金山は開口一番伸びをする。
「勉強したってお前、殆んど寝ていたじゃないか」
そんな金山に中山が苦言を呈する。
「まぁまぁ、最後の方は金山君ちゃんと勉強していたよ」
そんな中山に優里香がフォローを入れる。
「と言うかほんと最後の方だけな。大丈夫か金山?赤点だったら進級もヤバいんじゃないか?」
と、最後に図書室から出てきた千晶が話に加わる。実際、千晶は勉強はできる方ではあるが、優里香や中山と比べるとどうしても見劣りしてしまう。一方の金山の成績は、クラスで下から数えた方が早く、いつも赤点ギリギリである。
「大丈夫大丈夫!後は自分でヤマ張って勉強するし、赤点でも追試をちゃんと受ければ進級出来るし」
「いや、赤点取らないように勉強すれば……」
良いのではと言おうした所、千晶の肩に中山の腕が乗る。
千晶がそちらを向くと、中山は無言で首を横に振る。千晶はそれで何がを察したのかそれ以上何も言わなかった。
「それより勉強したら腹減ってきたな。帰りにどっか寄っていかね?」
そして等の本人は、気にする素振りもなく寄り道の提案をする。
「……ごめん。私そろそろ帰らないとお母さんが心配しちゃう。じゃあね、また明日」
すると、スマホを見ていた優里香が申し訳なさそうに言ってスマホを鞄にしまい、そのままその場を後にする。
「おう!また明日……で、二人はどうする?」
優里香に挨拶をした金山は、振り返り残った二人に問いかける。
「……どうせ付き合えって言うんだろ。良いよ」
中山は半ば諦めたように了承する。
「今日はバイトも無いし付き合うよ」
千晶も了承の返事をする。すると二人は驚いた表情を浮かべる。
「…………何だよ?何かおかしな事言ったか?」
二人の表情に千晶は疑問を浮かべる。
「いや、天風が付き合ってくれるとは思ってなくて」
「良いじゃねえか。たまには男同士で親睦を深めるのも」
未だ困惑する中山と千晶を金山が引っ張り、三人は連れ添って学校を出て行くのであった。
先に学校を出た優里香は一人道路を歩いていた。しかし、彼女の瞳はしきりに周りを伺い、周囲に人がいないかどうかを確認しているようだった。
「……何か成果はあったの?クロウ」
周囲に誰もいない事を確認すると、優里香は声をかける。
すると、彼女の前に一匹のカラスが降りて来た。
「お久しぶりです。ブラックリリィ様」
すると、優里香の脳内に直接声が響く。
このカラスは普通のカラスではなく、優里香……ブラックリリィの手によって生み出された魔物なのである。
名をクロウ。
クロウは数カ月前、ブラックリリィの命令で別行動をとっており、それ以降彼女とは一度も会っていないのであった。
「挨拶は良いわ。要件は何?」
そんなクロウの言葉を無視して、優里香は先を促す。そんな主人の態度を気にする事なくクロウは言葉を発する。
「例の物を一つ、見つけて参りました。ご確認お願いします」
そう言うとブラックリリィとクロウの間の空間に穴が空き、そこから球のような物が出てきた。
球は手のひらサイズの大きさで、漆黒に塗られていた。
「……お手柄よクロウ。よく見つけてくれたわ」
しばらく見つめた後クロウに労いの言葉をかける。そして優里香はクロウと同じようにに空間に穴を開け、その中に手を入れる。やがて手を引き抜くと彼女の手に同じような球が乗っていた。すると二つの球は共鳴するように仄かに光はじめた。
「ありがとうございます。ですが、申し訳ございません。これだけ時間をかけて探してもこれ一つしか見つけられませんでした」
ブラックリリィの労いの言葉にクロウは謝罪の言葉を述べる。
「仕方ないわよ。あの方が封印されている鍵が、そう簡単に見つかるとは思ってないもの」
ブラックリリィは特に気にする様子も無く答える。
「これであとは……」
「三つね。あの方の封印を解く鍵は全部で五つだから」
クロウの言葉を引き継いでブラックリリィは呟く。
「それじゃ、この鍵は私が持っているからクロウはまた残りの鍵の探索をお願いね」
そう言って手に持った球を再び穴の中に入れ、穴を閉じる
「は!貴女様の仰せのままに」
そう言ってクロウは残った球……鍵を先程開けた穴の中に戻し、そのまま飛び去っていった。
その様子をブラックリリィ……優里香は黙って見送っていた。
「ウフフ、これで私の計画をもう一歩進めることが出来るわ」
そう言いながら優里香は一人家に向けて歩き出す。すると後ろから一台の車が優里香を追い越し、少し先で止まる。
「あれ、あの車……お父さん?」
優里香が考えていると運転席の窓が降り、中年の男性が顔を出す。
「あれ?優里香じゃないか。どうしたんだ、こんな時間に?」
男性は優里香を見るなり笑顔で声をかける。
「お父さん。あのね今日、同級生と図書室で勉強してたからちょっと遅くなったんだ」
優里香は、その男性が父だと分かると車に近づく。
「そうか、もう暗くなるし乗ってくか?」
「うん」
優里香はそう言うと、反対側に周り車の助手席のドアを開けそのまま乗り込む。優里香が乗ったのを確認すると車はそのまま走り出した。
「この時間まで勉強してるなんて優里香は偉いな」
運転をしながら優里香の父親は優里香に話しかける。
「そんな事ないよ。もうすぐ期末テストだからその勉強をしていたの」
「そうか。優里香の事だ、今回の期末テストも余裕で学年トップを取れるだろう」
「どうだろう?頑張ってる子も多いし、そんな簡単にはいかないかな?」
父親の問いに優里香は自身なさげに答える。すると父親は空いている腕を優里香の頭の上に乗せる。
「…………そんな事言うなよ。優里香は頑張ってるんだし、俺も母さんも優里香に期待しているんだから」
「…………うん。そうだね」
父親の言葉を優里香は何処か気怠げに答える。しばらくすると父親は優里香の頭から手を離す。優里香も話が終わったのを幸いに窓の外の景色を眺める。
その顔はいつも浮かべる人懐っこい表情ではなく、何処か疲れ切ったサラリーマンのような表情だった。
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一方、千晶達三人は学校を出た後、街にあるファストフード店でバーガーやポテトを食べていた。
「いや〜勉強した後の飯は格別だな」
道路に面したカウンター席に座っている金山は両隣の二人に問いかける。
ちなみに、席は何処でもいいと言う千晶に対し、駄弁るなら窓際のカウンター席当然俺が真ん中な!と言う金山のゴリ押しの結果決まった席である。
――――以上閑話休題――――
「バーガーなんて店ごとに多少違いがあってもそこまで味に差はないだろ」
と、そんな金山の言葉を中山が否定する。
金山がバーガーにポテト、ナゲットを自分のトレーに置いているのに対し、中山はバーガーのみである。
「ばーか。勉強した後にダチとバーガー食べるから格別なんだろうが!なぁ天風」
金山は中山に反論しながら、一人黙々とポテトを食べる千晶に話を振る。
「…………まぁ、友達かはどうかはおいて置いて…………こう言うのも悪くないかな」
千晶の言葉に、二人は千晶を見やり嬉しそうに微笑む。
「……な、何だよ気持ち悪いな」
千晶はそんな二人の反応に戸惑いを覚える。
「いや、なんつーか……」
「変わったな。天風」
言葉に迷う金山の言葉を中山が引き継ぐ。
「そう!それ!なんつーか、入学当初は人と関わるのが面倒って言うか……」
「人と関わるのを避けていたような感じがしたな」
「そう!そう!」
二人は千晶を他所に千晶の話で盛り上がる。千晶はそんな二人の盛り上がりに、ついていけないのか微妙な表情を浮かべる。
「……まあ、あの時は色々あってそう言う感じになってたな」
入学当時を振り返り千晶は感慨に耽る。千晶はあの当時、妹を亡くしたショックで他人と関わるのを避けようとしていたのだ。しかし、優里香のお陰で少しずつクラスの皆と関わるようになっていた。
その時から千晶に絡んでいたのが金山で、中山はそんな金山を度々諫めていたのだった。
「昔の天風なら誘っても白石がいないならまず来なかったのに、今ではこうして普通に誘えば来てくれるようになってよ」
「……良い傾向だと思うぞ」
「…………そうかな」
二人の賞賛の言葉に千晶は照れる。
「でもよ、期末が終わって春休みが終わればもう新学期。その時、また一緒のクラスになれれば良いな」
「…………!」
(そうだよな……来年も同じクラスになるとは限らないんだよな)
何気ない金山のセリフに千晶の表情が曇る。
「ん?どうした千晶。なんかあったか?」
そんな千晶の様子を見た金山が千晶に問いかける。
「……いや、こうして三人で一緒にいれるのも、これで最後かと思ったらちょっと寂しくなって。二年になってもしクラスが変わったら、こうして帰りに一緒に寄り道したりする事も無いのかなって」
千晶は素直に思った事を二人に伝える。これも入学当時の千晶を見ている者からすればかなりの変化だ。
「…………………………」
そしてそんな千晶の言葉に二人は神妙な顔をする。
「おい、何だよ二人とも。今日は俺が何か言う度に変な顔してさ」
二人の反応に千晶はちょっと不貞腐れる。
「…………千晶。色々考えすぎだ」
中山は少し考えた後千晶にそう告げる。
「ん?どう言う事だ」
「そもそも進級してクラスが別々になるかもしれないし、そうはならないかもしれないだろ?」
中山の呟きを金山が引き継ぐ。
「それはそうだけど……」
「それに、もしクラスが別々になったって俺達の繋がりが消える訳じゃない。クラスが違ったって会おうと思えばいつでも会えるし」
金山の言葉に、今度は千晶が黙り込む。千晶の中でまだ今一つピンと来ていないようだ。
「天風。俺はこの馬鹿と付き合って良かったと思うことがある」
と、今度は中山が金山を一瞬見ながら千晶に問いかける。隣で馬鹿とは何だと文句を言っている金山をあえて二人は無視する。
「お前と知り合えた事だ。俺はお前の事を友達だと思っている」
「そうそう。俺達はもうダチだぜ。そんなに深く悩む事じゃないと思うぜ」
さっきまでの馬鹿呼ばわりの事など忘れて金山も同意する。
「…………友達」
その言葉を千晶は自分の中で反芻する。
「も、もしかして友達だと思っていたのって俺達だけか?」
そんな千晶の様子に金山は焦った声を出す。
「いや、そうじゃなくて……」
(妹が死んで、誰かと友達になろうなんて思いもしなかった。けど……)
「そうだな。俺達、もう友達なんだよな」
何処か自信無さげに千晶は答える。
「当たり前だろ!そうだ!ついでにさ、TINE交換しね」
千晶の問いを自信満々に肯定し、金山は自身のポケットからスマホを取り出す。TINEとは所謂メッセージアプリである。
「友達記念、って訳じゃないけど、何だかんだで天風とTINE交換してなかったし、交換しとけばもしクラスが別になっても連絡取り合えるし」
「…………金山にしては珍しくいい事言うな。天風、俺とも良ければ交換してくれないか?」
中山もそう言って自身のスマホを取り出す。
「おい!珍しくって何だよ!」
「ふふっ」
そんな二人のやり取りが面白かったのか、千晶はクスっと笑いながら自身のスマホを取り出す。
「おい。今のは笑う所じゃねえぞ天風。……と言うかお前のTINE、全然登録している奴いねぇじゃねえか」
金山は千晶のスマホの画面を見ながらそう言う。実際千晶のTINEの登録者は家族と優里香ぐらいしかいなかった。
「…………と言う事は俺達が初だな」
「だな、ついでにグループも作るか」
こうして三人はTINEの登録をしたりしながら、しばらく居座るのだった。
「じゃあな天風。また明日」
「また明日」
しばらく居座った後、三人は店を後にする。千晶は金山中山と家の方角が反対方向の為、店を出た後そのまま別れることになった。しばらく歩いた後、不意に千晶はスマホを起動しTINEを起動しグループのアイコンをタッチする。
「……………ふふ」
そこにはさっき店内で撮った三人の自撮り写真がアイコンになっていた。
(こう言うのもいいものだな)
千晶がふと感傷に耽っていると、何人かが前方から大慌てでこちらに走ってくるのが見えた。
「ば、化け物だ!」
「警察!警察に連絡を!」
彼らは一様に化け物と連呼しながら、千晶の前を通りすぎる。
「化け物………まさか!」
千晶は、彼らが走ってきた方向に向けて全力でダッシュする。すると、しばらく行った先に先日戦った化け物とその中心に佇むブラックリリィを見つけた。
「あいつら………また!ッ!」
ブラックリリィ達を見つけた千晶は、素早く近くの建物の物陰に隠れる。そして鞄から変身アイテムを取り出す。
「花の精霊よ……私に力を貸して!フラワーメタモルフォーゼ!」
そして呪文を唱えると千晶の身体が光に包まれる。そして、光が晴れるとそこにはフラワーナイト・リリィが佇んでいた。
彼女は物陰から飛び出し、ブラックリリィ達の前に躍り出る。
「花の騎士フラワーナイト・リリィ見参!ブラックリリィ、貴女達の悪事もここまでです!」
リリィはブラックリリィを睨みつけながら決め台詞を言う。するとブラックリリィは、リリィを見つけると妖艶な笑みを浮かべる。
「あらあら仕事熱心ねリリィちゃん。こんな早く来るとは思ってもいなかったわ」
そしていつもと変わらない口調でリリィに言葉を発する。その態度にリリィの表情は一層険しくなる。
「ブラックリリィ!今日こそ貴女との決着を…………」
「良いわよ」
リリィが最後まで言い終わる前にブラックリリィがリリィの言葉を遮る。
「えっ?今なんて?」
思わず自らの耳を疑いリリィは問い返す。
「今日は気分が良いから私が直接相手をしてあげるわ」
そう言ってブラックリリィは戦う構えを取るのだった。




